連載「管理職のためのコーチング」第3回/全3回(最終回)

「研修を受けた直後は意気込んでいたのに、数週間たつと元のやり方に戻っている」——コーチングに限らず、スキルの定着でよくある悩みです。連載の最終回では、管理職がコーチングを続けて身につけるための「振り返り」と、職場全体に広げていくための仕組みづくりを解説します。

※人事・研修ご担当の方へ:管理職向けコーチング研修のご案内は、記事の後半(研修のご紹介)にまとめています。

この記事でわかること

  1. なぜコーチングは、定着しにくいのか
  2. 定着の3つの柱——個人・仲間・組織
  3. 【個人】1on1後の「3つの振り返り」
  4. 【仲間】ペア練習と事例共有で磨く
  5. 【組織】人事・研修ご担当者が整えたい仕組み
  6. 3か月の定着プラン
  7. まとめ——連載の振り返り
  8. コーチング研修のご紹介(人事・研修ご担当者様へ)

なぜコーチングは、定着しにくいのか

第1回で学び方を、第2回で会話の型と質問を紹介しました。ところが、知っただけで実践が続く管理職は、多くありません。定着しにくい理由は、主に次の3つです。

1
忙しさの中で、つい「早い」やり方に戻る
答えを教えるほうが、短時間で済みます。急いでいるときほど、元の癖が出ます。
2
うまくいったかどうか、自分では分からない
部下の反応は、すぐには表に出ません。手応えが分からないと、続ける意欲が下がります。
3
個人の頑張りに任されている
職場に練習の場や共有の機会がないと、実践するのは「やる気のある人だけ」になります。

つまり、定着は本人の意志の問題ではなく、仕組みの問題でもあります。


定着の3つの柱——個人・仲間・組織

柱 やること 得られること
個人 1on1のたびに、短く振り返る 自分の癖への気づき
仲間 管理職同士で、練習と事例共有を行う 他者の工夫と、客観的な視点
組織 研修・目標・フォローを仕組みにする 管理職による差の縮小、継続

【個人】1on1後の「3つの振り返り」

振り返りは、長くやる必要はありません。1on1の直後に、1〜2分で十分です。次の3つをメモに残してみてください。

1on1後の3つの振り返り

① 話す割合:部下が話した時間は、全体の何割だったか
② 質問:部下が考えを広げた質問は、どれだったか。答えを誘導した場面はなかったか
③ 次の一手:次回は、何を一つだけ意識するか

ポイントは、「できなかったこと」より「次に一つだけ試すこと」を決めることです。反省会にすると続きません。小さな改善を積み重ねるほうが、定着します。

続かない振り返り 続く振り返り
項目が多く、書くのに時間がかかる 3項目、1〜2分で終わる
「できなかった点」を並べて反省する 「次に一つだけ試すこと」を決める
気が向いたときだけ行う 1on1の予定の直後に、時間をあらかじめ確保する

人事・研修ご担当者様へ:研修後の「定着」について、こんな課題はありませんか

  • 管理職研修を実施しても、現場の行動が変わったか分からない
  • 研修後のフォローが、十分にできていない
  • コーチングを実践する管理職と、しない管理職の差が大きい
  • 管理職同士で学び合う機会が、社内にない

一つでも当てはまる場合は、研修の内容だけでなく、その後の実践やフォローを含めた設計から、ご相談いただけます。内容はこの記事の後半でご紹介しています。

管理職向けコーチング研修について
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【仲間】ペア練習と事例共有で磨く

一人で続けるのは、想像以上に大変です。管理職同士で練習する機会をつくると、気づきが一気に増えます。

ペア練習
(15分)
2人1組で、「聴く役」「話す役」に分かれます。話す側は実際の悩みを、聴く側はGROWの流れで質問します。終わったら、お互いにフィードバックします。
事例共有
(月1回)
「うまくいった質問」「困った場面」を一つずつ持ち寄ります。他の管理職の工夫は、すぐに自分の職場で試せます。
部下への
確認
ときどき部下に、「1on1は話しやすいか」「もっとこうしてほしいことはあるか」と聞いてみます。部下の声は、いちばん確かなフィードバックです。

【組織】人事・研修ご担当者が整えたい仕組み

コーチングを一部の管理職だけでなく、職場全体の習慣にするには、人事・研修ご担当者による仕組みづくりが欠かせません。ポイントは次の4つです。

ポイント 具体的な進め方
① 目的を共有する 「なぜ今コーチングなのか」を、経営層から管理職へ伝える。自社の課題(離職、育成、1on1の形骸化など)と結びつけて説明する
② 型をそろえる 1on1の進め方や質問の型を共通にし、管理職による差を小さくする
③ 練習の場をつくる 研修で体験するだけでなく、研修後も、練習や事例共有の機会を定期的に設ける
④ 続けられる負担にする 報告書や記録を重くしすぎない。現場が「やらされ感」を持つと、続かない

研修は「受けて終わり」ではなく、「現場で使い始めるためのスタート」です。研修後の数か月をどう支えるかが、成果を分けます。


3か月の定着プラン

最後に、定着までの進め方を、3か月の例としてまとめます。自社の状況に合わせて、調整してください。

時期 テーマ やること
1か月目 聴くことを習慣にする 答えを言う前に3秒待つ。1on1の最初の5分は部下が話す。1on1後の3つの振り返りを始める
2か月目 型で進める GROWの流れを1on1に取り入れる。管理職同士でペア練習と事例共有を行う
3か月目 変化を確かめ、広げる 部下に1on1の感想を聞く。うまくいった事例を職場に共有し、次のテーマを決める

管理職のコーチングを、社内に根づかせたい企業様へ

研修の内容と、その後の実践の進め方を含めて、ご相談をお受けしています。

研修のご案内を見る 研修について相談する


まとめ——連載の振り返り

3回にわたり、管理職のコーチングについて解説してきました。最後に、全体を整理します。

連載「管理職のためのコーチング」

  • 第1回:コーチングの学び方——「聴く→問う→型で進める→振り返る」の4ステップ
  • 第2回:実践の型——GROWの流れと、答えを引き出す質問
  • 第3回(この記事):定着のさせ方——個人・仲間・組織の3つの柱

コーチングは、一度学べば終わりのスキルではありません。小さく試し、振り返り、仲間と磨き、組織で支える——この積み重ねが、部下が自分で考えて動くチームをつくります。

まずは明日の1on1の後に、3つの振り返りを1〜2分だけ書いてみてください。それが、定着の最初の一歩です。


管理職向けコーチング研修のご紹介(人事・研修ご担当者様へ)

コーチングは、知識として知るだけでは身につきません。実際に体験し、現場で使い、振り返ることで、はじめて職場で使えるスキルになります。当社では、管理職を対象に、コーチングを実践的に学ぶ研修のご相談をお受けしています。研修後の実践やフォローの進め方も、あわせてご相談ください。

対象 管理職、リーダー、新任マネージャーなど。階層や職種に合わせてご提案します
テーマの例 ・ティーチングとコーチングの使い分け
・会話の型と、質問のスキル
・1on1での実践練習
・研修後の実践と振り返りの進め方
ご相談 対象人数・時間・職場の状況に合わせて、内容をご提案します。まずは、現場でお困りのことをお聞かせください

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管理職のコーチングを、組織に根づかせたい人事・研修ご担当者様へ

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田中 和義

田中 和義

株式会社エス・シー・ラボ 代表。リクルート出身。人材ビジネス業界35年以上、営業経験25年以上、管理職経験25年以上。リクルートグループ2社でトップセールスの実績を誇る。年間170回以上の企業研修・講演を行う実践派講師で、研修・セミナーの受講者は3万人以上。コーチング・傾聴力・Z世代マネジメント・面接官トレーニング・ハラスメント防止を中心に、現場で使えるスキルの習得を支援している。Udemy Business講師。