連載「管理職のためのコーチング」第3回/全3回(最終回)
「研修を受けた直後は意気込んでいたのに、数週間たつと元のやり方に戻っている」——コーチングに限らず、スキルの定着でよくある悩みです。連載の最終回では、管理職がコーチングを続けて身につけるための「振り返り」と、職場全体に広げていくための仕組みづくりを解説します。
※人事・研修ご担当の方へ:管理職向けコーチング研修のご案内は、記事の後半(研修のご紹介)にまとめています。
この記事でわかること
- なぜコーチングは、定着しにくいのか
- 定着の3つの柱——個人・仲間・組織
- 【個人】1on1後の「3つの振り返り」
- 【仲間】ペア練習と事例共有で磨く
- 【組織】人事・研修ご担当者が整えたい仕組み
- 3か月の定着プラン
- まとめ——連載の振り返り
- コーチング研修のご紹介(人事・研修ご担当者様へ)
なぜコーチングは、定着しにくいのか
第1回で学び方を、第2回で会話の型と質問を紹介しました。ところが、知っただけで実践が続く管理職は、多くありません。定着しにくい理由は、主に次の3つです。
つまり、定着は本人の意志の問題ではなく、仕組みの問題でもあります。
定着の3つの柱——個人・仲間・組織
| 柱 | やること | 得られること |
|---|---|---|
| 個人 | 1on1のたびに、短く振り返る | 自分の癖への気づき |
| 仲間 | 管理職同士で、練習と事例共有を行う | 他者の工夫と、客観的な視点 |
| 組織 | 研修・目標・フォローを仕組みにする | 管理職による差の縮小、継続 |
【個人】1on1後の「3つの振り返り」
振り返りは、長くやる必要はありません。1on1の直後に、1〜2分で十分です。次の3つをメモに残してみてください。
1on1後の3つの振り返り
① 話す割合:部下が話した時間は、全体の何割だったか
② 質問:部下が考えを広げた質問は、どれだったか。答えを誘導した場面はなかったか
③ 次の一手:次回は、何を一つだけ意識するか
ポイントは、「できなかったこと」より「次に一つだけ試すこと」を決めることです。反省会にすると続きません。小さな改善を積み重ねるほうが、定着します。
| 続かない振り返り | 続く振り返り |
|---|---|
| 項目が多く、書くのに時間がかかる | 3項目、1〜2分で終わる |
| 「できなかった点」を並べて反省する | 「次に一つだけ試すこと」を決める |
| 気が向いたときだけ行う | 1on1の予定の直後に、時間をあらかじめ確保する |
人事・研修ご担当者様へ:研修後の「定着」について、こんな課題はありませんか
- 管理職研修を実施しても、現場の行動が変わったか分からない
- 研修後のフォローが、十分にできていない
- コーチングを実践する管理職と、しない管理職の差が大きい
- 管理職同士で学び合う機会が、社内にない
一つでも当てはまる場合は、研修の内容だけでなく、その後の実践やフォローを含めた設計から、ご相談いただけます。内容はこの記事の後半でご紹介しています。
【仲間】ペア練習と事例共有で磨く
一人で続けるのは、想像以上に大変です。管理職同士で練習する機会をつくると、気づきが一気に増えます。
【組織】人事・研修ご担当者が整えたい仕組み
コーチングを一部の管理職だけでなく、職場全体の習慣にするには、人事・研修ご担当者による仕組みづくりが欠かせません。ポイントは次の4つです。
| ポイント | 具体的な進め方 |
|---|---|
| ① 目的を共有する | 「なぜ今コーチングなのか」を、経営層から管理職へ伝える。自社の課題(離職、育成、1on1の形骸化など)と結びつけて説明する |
| ② 型をそろえる | 1on1の進め方や質問の型を共通にし、管理職による差を小さくする |
| ③ 練習の場をつくる | 研修で体験するだけでなく、研修後も、練習や事例共有の機会を定期的に設ける |
| ④ 続けられる負担にする | 報告書や記録を重くしすぎない。現場が「やらされ感」を持つと、続かない |
研修は「受けて終わり」ではなく、「現場で使い始めるためのスタート」です。研修後の数か月をどう支えるかが、成果を分けます。
3か月の定着プラン
最後に、定着までの進め方を、3か月の例としてまとめます。自社の状況に合わせて、調整してください。
| 時期 | テーマ | やること |
|---|---|---|
| 1か月目 | 聴くことを習慣にする | 答えを言う前に3秒待つ。1on1の最初の5分は部下が話す。1on1後の3つの振り返りを始める |
| 2か月目 | 型で進める | GROWの流れを1on1に取り入れる。管理職同士でペア練習と事例共有を行う |
| 3か月目 | 変化を確かめ、広げる | 部下に1on1の感想を聞く。うまくいった事例を職場に共有し、次のテーマを決める |
まとめ——連載の振り返り
3回にわたり、管理職のコーチングについて解説してきました。最後に、全体を整理します。
連載「管理職のためのコーチング」
- 第1回:コーチングの学び方——「聴く→問う→型で進める→振り返る」の4ステップ
- 第2回:実践の型——GROWの流れと、答えを引き出す質問
- 第3回(この記事):定着のさせ方——個人・仲間・組織の3つの柱
コーチングは、一度学べば終わりのスキルではありません。小さく試し、振り返り、仲間と磨き、組織で支える——この積み重ねが、部下が自分で考えて動くチームをつくります。
まずは明日の1on1の後に、3つの振り返りを1〜2分だけ書いてみてください。それが、定着の最初の一歩です。
管理職向けコーチング研修のご紹介(人事・研修ご担当者様へ)
コーチングは、知識として知るだけでは身につきません。実際に体験し、現場で使い、振り返ることで、はじめて職場で使えるスキルになります。当社では、管理職を対象に、コーチングを実践的に学ぶ研修のご相談をお受けしています。研修後の実践やフォローの進め方も、あわせてご相談ください。
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田中 和義
株式会社エス・シー・ラボ 代表。リクルート出身。人材ビジネス業界35年以上、営業経験25年以上、管理職経験25年以上。リクルートグループ2社でトップセールスの実績を誇る。年間170回以上の企業研修・講演を行う実践派講師で、研修・セミナーの受講者は3万人以上。コーチング・傾聴力・Z世代マネジメント・面接官トレーニング・ハラスメント防止を中心に、現場で使えるスキルの習得を支援している。Udemy Business講師。