連載「管理職のためのコーチング」第2回/全3回

「コーチングの考え方は分かったが、実際の1on1で何を聞けばいいのか分からない」——第1回を読んで、そう感じた管理職の方も多いと思います。第2回では、1on1でそのまま使える「会話の流れ(型)」と「質問」を、具体的な言い回しとともに解説します。

※人事・研修ご担当の方へ:管理職向けコーチング研修のご案内は、記事の後半(研修のご紹介)にまとめています。

この記事でわかること

  1. 知識があっても使えない理由——必要なのは「型」
  2. 会話の型「GROW」——4つの流れ
  3. 1on1(30分)の進め方の例
  4. 質問の使い分け——避けたい聞き方と、おすすめの聞き方
  5. 会話例:「どうしたらいいか分かりません」と言われたら
  6. 実践でよくある3つの失敗
  7. まとめと次回の予告
  8. コーチング研修のご紹介(人事・研修ご担当者様へ)

知識があっても使えない理由——必要なのは「型」

コーチングの考え方を知っていても、いざ部下を前にすると、つい自分の答えを話してしまう。これは、意志が弱いからではありません。会話の進め方(型)を持っていないため、どこで何を聞けばよいか迷ってしまうのです。

第1回のおさらい

コーチングは「質問と傾聴で、相手の答えを引き出す」関わり方です。ティーチングとの使い分けが前提で、学び方は「聴く→問う→型で進める→振り返る」の4ステップでした。今回は3つ目の「型で進める」を扱います。

型があれば、迷いが減ります。まずは次の流れを覚えるだけで、1on1の質が変わります。


会話の型「GROW」——4つの流れ

コーチングの会話でよく使われる型に、GROW(グロー)モデルがあります。4つの頭文字を取ったもので、「目標→現状→選択肢→意思決定」の順に会話を進めます。

段階 目的 質問の例
G
Goal(目標)
この会話で何を得たいか、どうなりたいかを明確にする 「今日は何について話したい?」
「どんな状態になれたら理想?」
R
Reality(現状)
いまの状況と、うまくいっていること・障害を整理する 「いまはどんな状況?」
「これまでに試したことは?」
「何が壁になっている?」
O
Options(選択肢)
解決のための方法を、できるだけ多く出してもらう 「どんな方法が考えられる?」
「他にはどうだろう?」
「制約がなければ何をする?」
W
Will(意思決定)
何をいつまでにやるか、具体的な行動に決める 「まず何から始める?」
「いつまでにやる?」
「私にできるサポートは?」

ポイントは、いきなり「O(選択肢)」や「W(行動)」に進まないことです。上司は解決を急ぎがちですが、目標と現状が整理されないまま進むと、部下は腹落ちしません。


1on1(30分)の進め方の例

GROWを、30分の1on1に当てはめると、次のような流れになります。時間配分は目安ですので、部下の状況に合わせて調整してください。

0〜5分
導入
「最近どう?」から始め、部下が話しやすい雰囲気をつくります。業務の確認は後回しにします。
5〜10分
G:目標
「今日は何について話したい?」と聞き、テーマを部下に選んでもらいます。
10〜18分
R:現状
現状や壁を、部下の言葉で話してもらいます。ここは聴くことに徹し、要約して確認します。
18〜25分
O:選択肢
部下に選択肢を3つ以上出してもらいます。出尽くした後で、上司の意見やアドバイスを「提案」として添えます。
25〜30分
W:意思決定
最初の一歩と期限を、部下自身の言葉で決めてもらいます。次回の1on1で振り返ることを伝えて終えます。

人事・研修ご担当者様へ:1on1について、こんな課題はありませんか

  • 1on1の制度はあるが、管理職によって進め方や質がばらばらである
  • 管理職が「何を聞けばよいか分からない」と感じている
  • 1on1が、業務の進捗確認で終わってしまっている
  • 管理職向けに、1on1の進め方を練習する機会をつくりたい

一つでも当てはまる場合は、会話の型と質問を、実際に練習しながら身につける研修が役に立ちます。内容はこの記事の後半でご紹介しています。

管理職向けコーチング研修について
相談してみる


質問の使い分け——避けたい聞き方と、おすすめの聞き方

同じ内容でも、聞き方によって部下の受け止め方は大きく変わります。よくある聞き方を、言い換えとともに整理します。

避けたい聞き方 おすすめの聞き方
「なんでできなかったの?」
(原因の追及・詰問になりやすい)
「うまくいかなかった原因は、何だと思う?」
「次はどう変えられそう?」
「やる気はあるの?」
(Yes/Noで答えさせ、追い込む)
「いまの仕事で、一番やりがいを感じるのはどんなとき?」
「〇〇すればいいんじゃない?」
(質問の形をした指示)
「どんな方法が考えられる?」
「他にはどうだろう?」
「大丈夫?」
(「大丈夫です」で終わってしまう)
「いま、一番気になっていることは何?」

質問づくりのコツ

① 「はい/いいえ」で答えられない質問にする(何・どんな・どのように)
② 「なぜ」が詰問に聞こえそうなときは、「何が」「どのように」に言い換える
③ 質問の後は待つ。部下が考えている間は、次の言葉を足さない


会話例:「どうしたらいいか分かりません」と言われたら

部下からの典型的な相談です。ティーチング型の対応と、コーチング型の対応を比べてみましょう。

ティーチング型(答えを伝える)

部下:「お客様への提案が進まず、どうしたらいいか分かりません」
上司:「まず先方の課題を整理して、資料はA案で出し直して。来週までにね」
部下:「……はい、分かりました」

コーチング型(答えを引き出す)

部下:「お客様への提案が進まず、どうしたらいいか分かりません」
上司:「そうか、悩んでいるんだね。どうなったら理想だと思う?」(G)
部下:「来月までに、一度は提案を聞いていただきたいです」
上司:「なるほど。いまは、どこで止まっているの?」(R)
部下:「先方の本当の課題が、まだつかめていない気がします」
上司:「それを知るために、どんな方法がありそう?」(O)
部下:「もう一度ヒアリングの時間をいただくか、担当の方に電話で聞いてみます」
上司:「まず、何から始める?いつまでにやる?」(W)
部下:「明日、電話でアポを取ります」

コーチング型の会話では、結論を出したのは部下自身です。自分で決めたことは、自分から動く——これが、部下が育つ理由です。

もちろん、未経験の業務や緊急時は、ティーチングを優先します。会話の最初に「答えを伝えたほうがよい場面か、考えてもらう場面か」を見極めることが、使い分けの第一歩です。


実践でよくある3つの失敗

1
誘導質問になっている
上司の頭に答えがあり、そこへ導く質問になると、部下は「正解探し」を始めます。答えを決めずに聞くことが大切です。
2
沈黙に耐えきれず、答えを言ってしまう
部下が黙っているのは、考えているときです。3秒、5秒と待つことで、言葉が出てくることが多くあります。
3
行動が曖昧なまま終わる
「頑張ります」では、次につながりません。「何を」「いつまでに」まで決めて、次回の1on1で振り返ります。

型は、読むだけでなく「練習」で身につきます

管理職向けに、会話の型と質問を実践的に学ぶ研修のご相談をお受けしています。

研修のご案内を見る 研修について相談する


まとめと次回の予告

コーチングを実践する鍵は、会話の型を持つことです。GROWの流れ——目標、現状、選択肢、意思決定——に沿って質問すれば、1on1は「報告を聞く場」から「部下が考え、動き出す場」に変わります。

ただし、型を知っただけでは使えません。実際に声に出して練習し、自分の癖に気づくことで、はじめて自分の言葉になります。まずは次の1on1で、GROWのうち一つだけ意識してみてください。

連載「管理職のためのコーチング」

  • 第1回:コーチングの学び方
  • 第2回(この記事):実践の型——1on1で使える会話の流れと質問
  • 第3回:定着のさせ方——続けるための振り返りと、組織への広げ方

管理職向けコーチング研修のご紹介(人事・研修ご担当者様へ)

会話の型や質問は、知識として知るだけでは職場で使えません。実際に練習し、自分の癖に気づくことで、はじめて1on1で使えるスキルになります。当社では、管理職を対象に、コーチングを実践的に学ぶ研修のご相談をお受けしています。

対象 管理職、リーダー、新任マネージャーなど。階層や職種に合わせてご提案します
テーマの例 ・ティーチングとコーチングの使い分け
・会話の型と、質問のスキル
・1on1での実践練習
ご相談 対象人数・時間・職場の状況に合わせて、内容をご提案します。まずは、現場でお困りのことをお聞かせください

コーチング研修の
詳細を見る
研修の内容・日程・費用を
相談する


管理職の1on1を、組織で変えたい人事・研修ご担当者様へ

会話の型と質問を、実践を通じて身につける研修をご提案します。
対象人数・時間・職場の状況に合わせて、内容をご相談いただけます。

研修の内容・日程・費用を
相談する

コーチング研修の
詳細を見る
個人で学ぶ:Udemy
(動画)講座はこちら

田中 和義

田中 和義

株式会社エス・シー・ラボ 代表。リクルート出身。人材ビジネス業界35年以上、営業経験25年以上、管理職経験25年以上。リクルートグループ2社でトップセールスの実績を誇る。年間170回以上の企業研修・講演を行う実践派講師で、研修・セミナーの受講者は3万人以上。コーチング・傾聴力・Z世代マネジメント・面接官トレーニング・ハラスメント防止を中心に、現場で使えるスキルの習得を支援している。Udemy Business講師。