「採用がうまくいかない」「せっかく採用しても早期離職してしまう」「内定辞退が続く」——こうした悩みを持つ企業の多くが、原因を「良い人材がいない」「売り手市場だから仕方ない」と捉えています。しかし本当の問題は、別のところにあることが少なくありません。面接官のスキル不足です。この記事では、面接官トレーニングが必要な企業・人材の特徴と、採用が抱える「本当の問題」の正体を解説します。
この記事でわかること
- 「採用がうまくいかない」の本当の原因
- 面接官トレーニングが必要な企業の5つのサイン
- 面接官トレーニングを受けるべき人は誰か
- トレーニングを受けることで何が変わるのか
- 採用の質を上げることが、経営課題の解決につながる理由
「採用がうまくいかない」の本当の原因
私はこの6年間、日本全国で面接官トレーニングの研修・セミナーを行ってきました。その中で、採用に悩む企業の経営者・人事担当者から、共通する言葉を何度も聞いてきました。
「採用してみないとわからないので、どうしようもない」
「内定を出しても辞退されてしまって、困っています」
確かに、少子化・売り手市場という時代背景は現実です。しかしこれらの悩みを持つ企業に共通する、もう一つの問題があります。面接官が、面接の正しいやり方を知らないまま採用活動をしているという問題です。
私が研修の冒頭で毎回確認していることがあります。
この問いに「はい」と答えるのは、わずか1パーセント程度です。残りの99パーセントの面接官は、誰にも教わらないまま、自分の感覚だけで面接をしています。
採用がうまくいかない企業の多くは、「良い人材がいないのではなく、良い人材を見極め・動機づける面接官スキルが整っていない」という現実に、気づいていないことが多いのです。
面接官トレーニングが必要な企業の5つのサイン
次のうち、当てはまるものはありますか?一つでも当てはまれば、面接官トレーニングを検討すべきサインです。
面接官トレーニングを受けるべき人は誰か
「面接官トレーニングは、人事部門の専門家が受けるもの」と思っている方も多いですが、実際はそうではありません。採用に関わるすべての人に必要です。
トレーニングを受けることで何が変わるのか
「面接のやり方を学ぶ」と聞くと、「そんな研修を受けても、採用できる人材が増えるわけではない」と思う方もいるかもしれません。しかし、面接官トレーニングが変えるのは「人材の数」ではなく、「採用の精度と確率」です。
| 課題 | トレーニング前 | トレーニング後 |
|---|---|---|
| 見極め | 「なんとなく良さそう」で採用 | 行動の事実をもとに、根拠ある評価ができる |
| 動機づけ | 良い話だけを並べて終わる | 候補者の本音を引き出し、誠実に向き合える |
| 評価の統一 | 面接官によって基準がバラバラ | 共通の評価基準で、複数面接官が議論できる |
| 早期離職 | 「思っていたのと違う」が繰り返される | ミスマッチが減り、定着率が上がる |
採用の質を上げることが、経営課題の解決につながる理由
採用の失敗は、単に「一人採用がうまくいかなかった」という話ではありません。採用コスト・研修コスト・早期離職による生産性損失・再採用コストを合わせると、採用ミス1件のダメージは数百万円規模になることもあります。
逆に言えば、採用の精度を上げることは、最もコストパフォーマンスの高い経営投資のひとつです。優秀な人材を見極め、入社意欲を高め、定着してもらう——この流れが機能すれば、組織の成長スピードは大きく変わります。
採用は「人事の仕事」ではなく、「経営の仕事」です。面接官トレーニングへの投資は、採用精度を上げることを通じて、組織全体のパフォーマンス向上につながります。「良い人材がいない時代」だからこそ、来てくれた候補者を正しく見極め、確実に動機づける力が、企業の競争力の差になります。
面接官トレーニングは「知識」ではなく「スキル」——だから実践が必要
ここで、私が2000人以上の面接官・経営者にトレーニングを行ってきた中で、最も強く伝えてきたことをお伝えします。
面接官に必要な力は、大きく3つに分けられます。
これらはすべて、高度なコミュニケーションスキルです。そしてコミュニケーションスキルには、必ず「型(フレームワーク)」があります。その型を知り、繰り返し実践することで、初めて身につきます。
なぜ「知っているだけ」では使えないのか
面接官トレーニングで最も重要なのは、理論・心得・考え方をマスターした上で、ロールプレイングで繰り返し実践することです。
本を読んで「なるほど」と思うだけでは、実際の面接の場では使えません。緊張した候補者を前にして、適切な深掘り質問をとっさに投げかけ、話を聴き切り、誠実に動機づける——これは、頭でわかっているだけでは動けないスキルです。
私がトレーニングで毎回必ずロールプレイングを行うのは、このためです。実際に「面接官役」と「候補者役」を交互に経験することで、「言葉では知っていた」が「体で使えるようになる」という変化が生まれます。
2000人以上のトレーニングを通じて確信したこと
私はこれまで、経営者・管理職・人事担当者など2000人以上に面接官トレーニングを行ってきました。受講後に「受けてよかった」という声を多くいただきます。その理由はシンプルです。「こんなやり方があったのか」「自分がやっていたことの何が問題だったのかわかった」という気づきが生まれるからです。面接官として当然知っておくべき「型」が、世の中のほとんどの企業で教えられていない——だからこそ、学ぶことで大きな変化が生まれるのです。
まずは学ぶこと。セミナーや研修で理論・フレームワーク・実践の型を習得し、そこから日々の面接で繰り返し使っていく。面接官スキルは、この積み重ねによってのみ身につくものです。
まとめ:採用がうまくいかない本当の問題に、向き合うこと
「良い人材がいない」「売り手市場だから仕方ない」——この言葉で思考を止めてしまうと、採用の質は永遠に上がりません。
面接官の99パーセントが、誰にも教わらないまま感覚だけで面接をしている——この現実を変えることが、採用を変える最初の一歩です。「見極め」と「動機づけ」のスキルを持った面接官が一人増えるだけで、採用の結果は変わり始めます。
面接官トレーニングは、特別な才能が必要なスキルではありません。正しい方法を知り、実践することで、誰でも身につけられるものです。ぜひ、自社の採用が抱える「本当の問題」と向き合うきっかけにしてください。
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田中 和義
株式会社エス・シー・ラボ 代表。人材ビジネス業界35年以上、管理職経験25年以上。この6年間、面接官トレーニングのセミナー・企業研修を日本全国で展開し、年間170回以上の企業研修・講演を行う実践派講師。面接官トレーニング・採用力強化・傾聴力・コーチング・ハラスメント防止・Z世代マネジメント・提案営業力強化を中心に、現場で使えるスキルの習得を支援している。2026年8月、著書『採用を成功に導く面接官超入門 失敗しない見極め&動機づけの実践スキル』を発売予定。