「お前がいいと思う人をあげてくれればいいよ」——以前の記事で、私が初めて面接を担当したときに上司から言われたこの言葉をご紹介しました。その後、私が所属していた会社にも面接評価シートが導入されましたが、実はそこにも別の落とし穴がありました。評価シートがあっても、使い方を誤れば「なんとなく面接」と同じ結果になるのです。この記事では、私自身の苦労した体験をもとに、本当に機能する面接評価シートの作り方を解説します。
この記事でわかること
- 「評価シートがあるのに記入できない」——私が苦労した体験談
- なぜ面接評価シートが必要なのか
- 多くの企業の評価シートが「使われない」理由
- 面接評価シートの作り方——5つの設計原則
- 評価シートの構成要素——実際の項目例
- 評価シートを「機能させる」運用のポイント
「評価シートがあるのに記入できない」——私が苦労した体験談
「お前がいいと思う人を」と言われた経験をした後、私が所属していた会社にも、ようやく面接評価シートが導入されました。「これで属人的な面接から脱却できる」と、私は期待していました。
ところが、実際に使ってみると、別の問題に苦しむことになりました。
その評価シートは、記入すべき項目が非常に細かく設定されていました。項目数も多く、丁寧に作られていたのは確かです。しかし、いざ面接の現場で使おうとすると、これが大きな足かせになったのです。
面接の最中、私は応募者とのやり取りに一生懸命でした。質問を考え、回答を聴き、深掘りし、次の質問を考える——その間、評価シートに記入する余裕など、まったくありませんでした。
だから、面接が終わったあとに記入することになります。ですが、ここでまた問題が起きます。
だから、面接直後にサクッと記入できない。
「時間が空いているときに書こう」と後回しにする。
しかし時間が経つと、応募者の細かいやり取りを忘れてしまう。
このサイクルに、私はよく困らされていました。せっかく丁寧に作られた評価シートも、「記入する余裕がない」「記入が後回しになる」「結果として忘れてしまう」という現実の前で、十分に機能していなかったのです。
この経験から私が学んだのは、評価シートは「内容の充実度」よりも「記入のしやすさ」が何より大切だということです。理想を言えば、面接直後の隙間時間に、5分以内でサクッと記入できるくらいの簡潔さが必要です。どれだけ立派な評価項目を作っても、面接官が実際に書けなければ、それは「機能していない評価シート」になってしまいます。
なぜ面接評価シートが必要なのか
面接評価シートの役割は、単に「記録を残すこと」ではありません。面接官の「なんとなく」という主観的な判断を防ぐ仕組みとして機能することが、最大の目的です。
多くの企業の評価シートが「使われない」理由
評価シートを導入している企業は多くあります。しかし、「導入している」と「機能している」の間には大きな差があります。私の経験も含め、評価シートが使われなくなる典型的な理由を整理します。
1 項目が多すぎて記入に時間がかかる
「網羅性」を重視するあまり、評価項目を20も30も設定してしまう企業があります。面接官は面接中に記入する余裕がなく、面接後にまとめて書こうとして、結局後回しになります。
2 記述式の自由欄が多く、文章化に時間がかかる
「所感を自由に記入してください」という欄が多いと、面接官は何をどう書けばいいか迷い、結局簡単な一言で済ませるか、書かずに終わってしまいます。
3 記入のタイミングが決まっていない
「あとで書いておいてください」という運用ルールでは、忙しい面接官の優先順位は下がります。私自身が経験したように、時間が経てば記憶も薄れ、記入の精度はどんどん落ちていきます。
4 評価基準が曖昧で、何を見ればいいかわからない
「コミュニケーション力:5段階評価」というだけの項目では、面接官それぞれの「5」の基準が違います。結局、評価シートを使っていても「なんとなく」の延長になってしまいます。
こうした問題に共通するのは、「丁寧に作ろう」という意図が、結果的に「使われないシート」を生んでしまうということです。評価シートの良し悪しは、項目の充実度ではなく、「現場で実際に機能するか」で決まります。
面接評価シートの作り方——5つの設計原則
原則①:5分以内で記入できる項目数に絞る
私自身の苦い経験から、最も強くお伝えしたいのがこの原則です。評価項目は、面接直後の隙間時間に5分以内で記入できる量に絞ること。項目数の目安は、5〜8項目程度が現実的です。「あれもこれも評価したい」という気持ちを抑え、本当に重要な項目だけに絞り込みます。
原則②:自由記述は最小限にし、選択式・段階評価を中心にする
文章で書く欄が多いと、記入のハードルが上がります。多くの項目はチェックボックスや5段階評価で済ませ、自由記述は「特筆すべき点」など1〜2項目に絞ることで、記入時間を大幅に短縮できます。
原則③:評価基準を「行動の事実」で具体化する
「コミュニケーション力:5段階」ではなく、「自分の経験を、状況・行動・結果の順で具体的に説明できたか」という基準にすることで、面接官の主観のブレを減らせます。コンピテンシー面接の考え方を、評価シートの項目設計にも反映させます。
原則④:面接の「直後」に書く運用をルール化する
「あとで書く」という運用は、確実に記入の質を下げます。「面接終了後、次の面接に入る前の5分間で記入する」というルールを明確に決めることが重要です。スケジュールにも、面接と面接の間に記入時間を最初から組み込んでおきます。
原則⑤:面接中にメモを取る「簡易版」を併用する
面接中にすべてを評価シートに記入することはできなくても、キーワードだけを書き留める簡易メモ欄を別に用意しておくと、後で評価シートに記入する際の手がかりになります。私が苦労した「忘れてしまう」問題は、この簡易メモがあれば大きく軽減できたはずです。
評価シートの構成要素——実際の項目例
5分以内で記入できる、実用的な評価シートの構成例を紹介します。
このくらいの構成であれば、合計で3〜5分程度で記入が完了します。「丁寧に作り込む」よりも、「無理なく続けられる」ことを優先する。これが、評価シートを本当に機能させるための最大のポイントです。
評価シートを「機能させる」運用のポイント
シートを設計しただけでは終わりません。日々の運用の中で機能させるための工夫も大切です。
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面接の合間に「記入タイム」をスケジュールに組み込む
面接を詰め込みすぎず、1件あたり5分の記入時間を最初からスケジュールに入れておく。これだけで「後回し問題」がほぼ解消します。 -
デジタル化して、その場で入力できるようにする
スマートフォン・タブレットで入力できるフォーム形式にすると、紙よりも記入のハードルが下がります。チェックボックス中心の設計であれば、デジタル化の効果はさらに高まります。 -
複数面接官の評価を持ち寄って議論する場を設ける
評価シートが記入されるだけで終わらせず、採用会議で実際に見比べる機会を作ることで、「ちゃんと書く意味」が面接官に伝わります。 -
定期的にシート自体を見直す
「この項目は使われていない」「この項目があると判断しやすい」という現場の声を集め、半年〜1年に一度、シートそのものを改善していく。
まとめ:評価シートは「丁寧さ」より「使いやすさ」
「お前がいいと思う人を」という、何の基準もない面接。そして、項目が多すぎて記入できなかった評価シート——私はどちらの問題も経験してきました。
この2つの経験から言えることは、評価シートは「なければ困る」けれど、「重すぎても使われない」ということです。面接官の「なんとなく」を防ぐための仕組みは、面接官自身が無理なく使い続けられるものでなければ、机上の空論になってしまいます。
項目を絞り、行動の事実で評価基準を具体化し、面接直後の5分で記入できる設計にする——この記事で紹介した原則を、ぜひ自社の評価シートの見直しに活用してみてください。
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田中 和義
株式会社エス・シー・ラボ 代表。人材ビジネス業界35年以上、管理職経験25年以上。年間170回以上の企業研修・講演を行う実践派講師。面接官トレーニング・採用力強化・傾聴力・コーチング・ハラスメント防止・Z世代マネジメント・提案営業力強化を中心に、現場で使えるスキルの習得を支援している。