「話がうまくて、印象がいい」——面接でそう感じた候補者が、入社後に期待外れだったという経験はないでしょうか。流暢なトークで語られる「実績アピール」の中に、どこまでが事実で、どこからが「盛り」なのかを見極めるのが、面接官の重要な仕事です。この記事では、私が顧問先の社長面接に同席した際の実体験をもとに、行動質問で「盛った話」を見抜く具体的な聴き方を解説します。

この記事でわかること

  1. 「流暢なトーク」に騙されかけた——顧問先面接での体験談
  2. なぜ面接で「盛った話」が通じてしまうのか
  3. 行動質問とは何か——表面の話を突き破る質問の技術
  4. 「盛った話」を見抜く3つの深掘り質問
  5. 答えが曖昧になったとき、どう対応するか
  6. 行動質問を機能させるための面接設計

「流暢なトーク」に騙されかけた——顧問先面接での体験談

先日、顧問先の企業で社長面接に同席したときのことです。

応募者は、これまでの営業実績について、非常に流暢なトークで語ってくれました。話の構成も整っていて、数字も出てくる。聞いていて「この人は、なかなかたいしたものかもしれない」と感じました。

しかし、私は同時にこう思いました。「この話、裏付けを取ってみよう」と。

そこで私は、次のような質問を投げかけました。

「その受注に至るまでの経緯を、具体的に教えていただけますか?」
「そのとき、具体的にどういう行動を取られたのでしょうか?」
「なぜ、そういう行動を取ろうと判断されたのですか?」
「その成果について、上司の方はどう評価してくれましたか?」

すると——応募者の答えが、どこか歯切れが悪くなり始めました。先ほどまでの流暢さが消え、具体的な場面・行動・判断の理由を聞くと、答えが曖昧になっていく。詳細を聞くほど、話に厚みがなくなっていったのです。

私はこのとき、「表面の話は上手くまとまっているが、実際の行動の事実がそこまで伴っていない」と感じました。つまり、話を「盛っている」可能性が高い——という判断に至ったのです。

面接終了後、同席していた社長に感想を聞くと、同じ感想を持っていました。「うーん、なんか、具体的なところが薄かったですね」と。

結果として、この応募者はNG。残念ではありましたが、「表面の話だけで判断せず、行動の事実を確認した」からこそ、採用ミスを防ぐことができた場面でした。


なぜ面接で「盛った話」が通じてしまうのか

この体験談から見えてくるのは、「面接が得意な人」と「仕事ができる人」は、必ずしも一致しないという現実です。

面接対策の情報は今や簡単に手に入ります。「実績をどう語るか」「志望動機をどう構成するか」——これらを学んで準備してくる応募者は少なくありません。結果として、実際の行動の裏付けが薄くても、聞こえのいいストーリーが語れる人が生まれてしまいます。

表面の話は「まとめ」に過ぎない
「〇〇億円を達成しました」「チームをまとめました」という言葉は、結果の「まとめ」です。そこに至るプロセス・行動・判断が伴っているかどうかは、表面の話を聞くだけでは見えません。
印象の良さが判断を曇らせる
話が上手で、笑顔がよく、受け答えがテキパキしている人に対して、面接官は無意識に「この人は優秀だ」という印象を持ちやすくなります。これが「ハロー効果」であり、採用ミスの大きな原因になります。
深掘りしない面接が「盛り」を通してしまう
表面の話だけを聞いて終わる面接では、どれだけ「盛った話」でも見抜けません。面接官が「いい話だった」で終わらせてしまうことが、盛りを通してしまう最大の原因です。

行動質問とは何か——表面の話を突き破る質問の技術

「盛った話」を見抜くために有効なのが、行動質問(ビヘイビアー質問)という手法です。

行動質問とは、「過去の具体的な行動・判断・経験の事実」を引き出す質問のことです。コンピテンシー面接の中核をなす技術で、「人は過去の行動パターンを将来も繰り返す」という前提に基づいています。

❌ 盛りを通してしまう質問 ✅ 行動の事実を引き出す質問
「リーダーシップはありますか?」 「チームをまとめた経験を、具体的に教えてください」
「困難な状況でもやり抜けますか?」 「これまでで一番困難だった場面で、どんな行動を取りましたか?」
「営業力には自信がありますか?」 「最も印象に残っている受注のエピソードを教えてください」

左側の質問は「はい」「あります」で終わります。右側の質問は、具体的な場面・行動・結果が出てこなければ答えられません。これが行動質問の力です。


「盛った話」を見抜く3つの深掘り質問

私が顧問先の面接で実際に使った質問を整理します。この3つを組み合わせることで、表面の話の「厚み」を確認できます。

1 「具体的にどんな行動を取りましたか?」——プロセスを聴く

実績・成果のアピールを聞いた後、必ず「そこに至るプロセス」を聞きます。本当に自分が主体となって動いた人は、行動を具体的に語れます。逆に、チームの成果を自分の成果として語っている場合や、運良くうまくいっただけの場合は、プロセスの説明が曖昧になります。

「その成果を出すために、あなた自身が具体的に取った行動を教えてください」
「その受注に至るまでのエピソードを、順を追って教えていただけますか?」

2 「なぜそう判断したのですか?」——思考を聴く

行動の「理由・判断の根拠」を聞くことで、その行動が本人の意志・考えに基づいたものかどうかが見えてきます。「なんとなく」「上司に言われたので」という答えが返ってきた場合は、主体的な関与が薄かった可能性があります。

「そのとき、なぜその行動を選ぼうと判断したのですか?」
「他のやり方もあったと思いますが、なぜその方法を選んだのでしょうか?」

3 「上司や周囲はどう評価しましたか?」——第三者の視点を聴く

本人の自己評価だけでなく、周囲からの評価・フィードバックを聞くことで、話の客観性が確認できます。本当に優れた成果を出した人は、上司や周囲の反応を具体的に語れます。曖昧な答えや、「特に何も言われなかった」という反応は、注意が必要です。

「その成果について、上司の方はどう評価してくれましたか?」
「チームメンバーや周囲の反応はいかがでしたか?」

答えが曖昧になったとき、どう対応するか

深掘り質問を投げかけたとき、私が顧問先の面接で経験したように、答えが急に曖昧になる場面があります。このとき、面接官はどう対応すべきでしょうか。

答えが曖昧になったときの対応

・焦らず、もう一度丁寧に聞き直す。「もう少し具体的に聞かせてもらえますか?」
・別の角度から同じ事実を確認する。「たとえば、そのとき一番大変だったことは何でしたか?」
・答えが出なくても、詰め寄らない。答えられない事実そのものが、評価の材料になる
・面接終了後、同席者がいれば必ず感想を共有して認識を確認する

重要なのは、答えが曖昧だからといって、その場で「嘘をついている」と断定しないことです。緊張で言葉が出ないケースもあります。複数の深掘り質問を経て、全体的に見て「行動の厚みが感じられるか」を判断することが大切です。


行動質問を機能させるための面接設計

行動質問は、ただ質問するだけでは機能しません。面接全体の設計に組み込んで初めて、本来の力を発揮します。

  • 「何を見極めるか」を事前に決めておく
    この候補者の「どの行動特性」を確認したいのかを、面接前に明確にしておく。そこから逆算して、どんな行動質問を使うかを設計します。
  • 表面の話だけで「感心」して終わらない
    私が体験したように、「なかなかたいした人かもしれない」と感じた瞬間こそ、深掘りのチャンスです。印象が良い候補者ほど、行動の事実を確認する意識を持つ。
  • 同席者がいれば、面接後に必ず感想を共有する
    一人の判断より、複数の視点で確認する方が精度が上がります。「あなたはどう感じましたか?」と率直に聞き合うことで、見落としを防げます。

まとめ:表面の話で終わらせない——「何を、なぜ、どう行動したか」を聴く

流暢なトークで語られる実績アピールは、それだけでは評価の根拠になりません。「何を考え、なぜそう判断し、具体的にどう行動したか」——この行動の事実を確認することが、面接官による見極めの本質です。

私が顧問先の面接で経験したように、深掘り質問を3つ投げかけるだけで、話の「厚み」が見えてきます。答えが具体的で一貫している候補者は、本当にその経験を持っている人です。逆に、深掘りするほど曖昧になる候補者は、表面だけを整えている可能性が高い。

「表面の話を聞いて、それで終わってはいけない」——これが、面接官として見極めの精度を高めるための、最も基本的な心構えです。

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田中 和義

田中 和義

株式会社エス・シー・ラボ 代表。人材ビジネス業界35年以上、管理職経験25年以上。この6年間、面接官トレーニングのセミナー・企業研修を日本全国で展開し、年間170回以上の企業研修・講演を行う実践派講師。面接官トレーニング・採用力強化・傾聴力・コーチング・ハラスメント防止・Z世代マネジメント・提案営業力強化を中心に、現場で使えるスキルの習得を支援している。2026年8月、著書『採用を成功に導く面接官超入門 失敗しない見極め&動機づけの実践スキル』を発売予定。