連載「しゃべらない部下との関係づくり」第1回/全3回

「うちの部下、何を考えているのかわからない」「聞いても『大丈夫です』しか返ってこない」——。管理職の方から、こうした相談を数多くいただきます。
しゃべらない部下に、つい「もっと発言してほしい」と思うのは自然なことです。ただ、部下が話さないのには、たいてい理由があります。そして、その理由の一部は、上司の側の関わり方にあるかもしれません。
本シリーズ(全3回)では、しゃべらない部下と信頼関係を築くためのポイントを、理由の見立て、引き出し方、上司自身のトレーニング方法の順にお伝えします。第1回は、まず「なぜ話さないのか」を考えます。

※本記事は、人事・研修ご担当者様、管理職の皆様向けです。

この記事でわかること

  1. 部下がしゃべらない7つの理由
  2. 部下の「タイプ」をどう見立てるか(決めつけない)
  3. 上司側に原因はないか?セルフチェック
  4. 急に話さなくなったときは「サイン」かもしれない
  5. まとめ:まず「理由を探る」ことから

連載「しゃべらない部下との関係づくり」

  • 第1回(この記事):しゃべらない理由と、部下のタイプの見立て方
  • 第2回:思いや考えを引き出す、会話と質問の技術
  • 第3回:部下を理解し、関係を築く——上司のトレーニング方法

1. 部下がしゃべらない7つの理由

「しゃべらない」という行動の裏には、さまざまな気持ちがあります。代表的な理由を整理します。

①考えをまとめてから話したい
頭の中で整理してから話したいタイプ。会議などその場での発言を求められると、言葉が出てこない。
②否定・間違いが怖い
「間違ったことを言って否定されたらどうしよう」という不安から、発言を控える。
③遠慮している
「忙しそうだから」「こんなことを聞いたら迷惑かも」と、相手を気づかって黙る。
④何を話せばよいか分からない
何を、どこまで報告・相談すべきかの基準が分からず、結果として話せない。
⑤話しても変わらないと感じる
以前に意見を出したが取り上げられなかった、という経験から、期待しなくなっている。
⑥上司との関係の壁
上司との距離を感じていたり、過去のやり取りで苦手意識を持っていたりする。
⑦体調や私生活の事情
体調不良や、仕事以外の悩みで余裕がなくなっている。

ポイント:「やる気がない」「消極的」と決めつける前に、「話せない事情があるのでは?」と考える。この視点の切り替えが、関係づくりの第一歩です。

2. 部下の「タイプ」をどう見立てるか(決めつけない)

部下の傾向を知ることは、関わり方を工夫するうえで役に立ちます。ただし、タイプ分けはあくまで「仮説」です。ラベルを貼って決めつけるのではなく、「こういう傾向があるかもしれない」と考えて、反応を見ながら修正していく姿勢が大切です。

傾向 特徴(例) 関わり方のヒント
熟考型 考えてから話す。即答は苦手だが、時間があれば深い意見が出る。 事前に質問を伝える。「あとで聞かせて」と時間をとる。
慎重型 間違いや否定を避けたい。確認を重ねてから動く。 失敗を責めない姿勢を示す。まず努力や着眼点を認める。
協調型 周囲への気づかいが強い。自分の意見より場の空気を優先する。 1対1で話す。「あなたはどう思う?」と個人の意見を尋ねる。
論理型 根拠や筋道を重視。曖昧な問いには答えにくい。 具体的で答えやすい質問をする。目的を先に伝える。

※上記は一般的な傾向の例です。一人ひとりは複数の要素を併せ持ちます。「この人はこのタイプ」と固定せず、日々の様子から見立てを更新していきましょう。

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3. 上司側に原因はないか?セルフチェック

部下がしゃべらない原因を、部下の性格だけに求めてしまうと、解決の糸口が見えなくなります。まず、ご自身の関わり方を振り返ってみましょう。

□ 部下の話を最後まで聞かず、途中で結論やアドバイスを話してしまう
□ 「なぜできなかったの?」と、理由を詰める質問が多い
□ 部下の意見に、すぐ「でも」「それは違う」と返してしまう
□ 忙しそうな雰囲気で、話しかけにくい空気を出している
□ 以前に部下が出した意見を、その後どうなったか伝えていない
□ 雑談や声かけが少なく、用件だけの会話になっている

一つでも当てはまれば、改善の余地があります。多くの場合、上司が少し関わり方を変えるだけで、部下の反応は変わり始めます。次回以降で、その具体的な方法をお伝えします。

4. 急に話さなくなったときは「サイン」かもしれない

もともと口数が少ない部下と、最近急に話さなくなった部下とでは、対応が異なります。以前は話してくれていたのに、急に口数が減った、表情が暗い、遅刻や欠勤が増えた、といった変化がある場合は、体調や私生活、職場の人間関係などで何かが起きているサインかもしれません。

  • 原因を詮索したり、上司が自分で診断しようとしたりしない
  • 「最近少し元気がないように見えるけど、何か困っていることはない?」と、心配していることを伝える
  • 話したくないという場合は無理に聞き出さず、「いつでも話して」と伝える
  • 状況に応じて、人事担当者や産業医など、社内の相談窓口につなぐ

注意:上司の役割は、診断や解決ではなく、「気づく」「声をかける」「つなぐ」ことです。一人で抱え込まず、組織として支える仕組みを活用しましょう。

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5. まとめ:まず「理由を探る」ことから

  • 部下がしゃべらないのには、必ず理由がある(7つの理由を参考に)
  • タイプ分けは「仮説」として使い、決めつけない
  • 上司自身の聞き方・反応が、部下の口を重くしている場合がある
  • 急な変化は「サイン」。診断せず、声をかけて、必要に応じてつなぐ

次回の第2回では、部下の思いや考えを引き出す会話と質問の技術を、具体的な言い換え例や会話例とともにお伝えします。


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田中 和義

田中 和義

株式会社エス・シー・ラボ 代表。リクルート出身。人材ビジネス業界35年以上、営業経験25年以上、管理職経験25年以上。リクルートグループ2社でトップセールスの実績を誇る。年間170回以上の企業研修・講演を行う実践派講師で、研修・セミナーの受講者は3万人以上。傾聴力・コーチング・ハラスメント防止・Z世代マネジメント・面接官トレーニングを中心に、現場で使えるスキルの習得を支援している。Udemy Business講師。