採用難と就職活動の早期化が進むなか、学生と接する機会が最も多いのは、採用担当者、そして面接官です。インターンシップや説明会から、面接・選考、内定、入職までの応対の一つひとつが、学生の「この会社で働きたい」という気持ち(動機)に大きな影響を与えます。この記事では、採用担当者と面接官の双方に向けて、学生に好印象を与える接し方・コミュニケーション・心構えを、場面別に解説します。
※人事・研修ご担当の方へ:採用担当者・面接官の応対力向上のご相談は、記事の後半(研修のご紹介)にまとめています。
この記事でわかること
- なぜ、採用担当者・面接官の応対が学生の動機形成を左右するのか
- 【場面別】インターンから入職まで——好印象のポイントとNG
- 好印象を与える5つの心構え
- 学生の心をつかむコミュニケーションの具体策(面接官が特に意識したいことを含む)
- 学生の気持ちが冷める瞬間
- 会話例:内定者の不安・面接で緊張する学生
- 採用チームとして整えたいこと
- まとめ
- 採用担当者・面接官向け研修のご紹介(人事・研修ご担当者様へ)
なぜ、採用担当者・面接官の応対が学生の動機形成を左右するのか
就職活動は早期化し、学生が企業と接点を持つ期間は長くなっています。インターンシップや説明会、個別面談、選考、内定後のフォローと、入職までに何度も接する相手が採用担当者であり、選考の場では面接官との対話が加わります。
学生にとって、採用担当者も面接官も「その会社の人の代表」です。会社の情報が十分にわからない段階では、担当者や面接官の話し方、連絡の早さ、こちらの話を聴いてくれる姿勢が、そのまま会社の印象になります。
接触機会が最も多い
インターン等から入職まで、何度も接する採用担当者と、選考で向き合う面接官
会社の印象を決める
担当者の応対が、「この会社で働く自分」を想像する材料になる
志望度に影響する
信頼できる担当者との関わりが、入社への安心感につながる
採用難のなかでは、条件や知名度だけでは学生に選ばれにくくなっています。だからこそ、「人」としての応対が、他社との差になります。
【場面別】インターンから入職まで——好印象のポイントとNG
学生との接点は、場面によって学生の心理が異なります。それぞれの場面で意識したいポイントを整理します。
| 場面 | 学生の心理 | 好印象のポイント | 避けたい対応 |
|---|---|---|---|
| インターン・説明会 | 緊張。会社の雰囲気を知りたい | 笑顔で名前を呼ぶ。質問しやすい空気をつくる | 一方的な説明。質問への曖昧な回答 |
| 個別面談・懇親会 | 本音を知りたい。評価されている不安もある | 学生の話を聴く時間を多くとる。自社の良い面も課題も正直に話す | 上から目線。会社の良い点だけを話す |
| 選考の連絡 | 結果を待つ不安。他社との比較 | 連絡時期を事前に伝え、守る。丁寧で簡潔な文面 | 連絡の遅れ。連絡の予定を伝えない |
| 面接の前後・面接中 | 最も緊張している。評価される場だと感じている | 受付・待ち時間の声かけ。面接では学生が話す時間を多くとり、最後まで聴く。終了後も感謝を伝える | 事務的・無愛想な対応。詰問や圧迫的な聞き方 |
| 内定〜入職 | 「本当にここでよいか」と迷う。入社後への不安 | 不安を聴き、決断を急がせない。定期的な接点をもつ | 他社の辞退を迫る。内定後の放置 |
すべての場面に共通するのは、学生を「評価する対象」としてだけでなく、「これから共に働くかもしれない一人の人」として尊重する姿勢です。
人事・研修ご担当者様へ:採用活動について、こんな課題はありませんか
- 内定を出しても、辞退や入社前の離脱が続いている
- 採用担当者や面接官によって、学生への応対の質に差がある
- 学生の本音や不安を、十分に聴き出せていない
- 採用担当者や面接官に、応対やコミュニケーションを学ぶ機会がない
一つでも当てはまる場合は、学生に好印象を与え、本音を引き出す応対力を、実践を通じて身につける研修が役に立ちます。内容はこの記事の後半でご紹介しています。
好印象を与える5つの心構え
テクニックの前に、土台となる心構えがあります。次の5つを意識するだけで、学生への接し方が変わります。
学生の心をつかむコミュニケーションの具体策
① 「話す」より「聴く」を増やす
好印象を左右するのは、学生がたくさん話せたかどうかです。自分の話を最後まで聴いてもらえた経験は、「この人は信頼できる」という気持ちにつながります。会社の説明は短くし、学生が話す時間を意識的に増やしましょう。
聴き上手になる3つの基本
① うなずきと相づち:話しやすい雰囲気をつくる
② 要約して返す:「〇〇ということですね」と、理解を伝える
③ 話を遮らない:最後まで聴いてから、話し始める
② 答えやすい質問で、考えを引き出す
「何か質問は?」と聞かれても、学生は聞きにくいものです。「はい/いいえ」で終わらない、答えやすい質問を用意しましょう。
| 避けたい言い方 | おすすめの言い方 |
|---|---|
| 「何か質問はありますか?」 | 「今日の話を聞いて、気になったことや、もっと知りたいことはありますか?」 |
| 「うちが第一志望ですよね?」 | 「いま、会社を選ぶうえで大切にしていることは何ですか?」 |
| 「他社はどこを受けているの?」 | 「就職活動は、いまどんな状況ですか? 困っていることがあれば聞かせてください」 |
| 「ちゃんと考えてるの?」 | 「どんな点が、いちばん迷いどころですか?」 |
③ 小さな配慮を積み重ねる
④ 面接官が特に意識したいこと
面接は、学生が最も緊張する場面です。評価する場であると同時に、学生にとっては会社と面接官を見極める場でもあります。面接官の応対が、会社の印象を大きく左右します。
| 避けたい面接官の言い方 | おすすめの言い方 |
|---|---|
| 「なんでそう思ったの? 根拠は?」 | 「そう考えたきっかけを、教えてもらえますか?」 |
| 「それって、あなた個人じゃなくてチームの成果ですよね」 | 「その中で、あなた自身が特に力を入れたことは何ですか?」 |
| (話の途中で)「それはもう分かりました。次の質問です」 | 「ありがとうございます。そこをもう少し聞かせてください」 |
学生の気持ちが冷める瞬間
好印象を積み上げても、たった一つの対応で、気持ちが冷めてしまうことがあります。特に注意したいのは、次の8つです。
□ 上から目線の言葉づかい、評価するような話し方
□ 質問に曖昧に答えたり、良い面だけを話したりする
□ 担当者や場面によって、言うことが違う
□ 他社の選考状況を詮索したり、辞退を迫ったりする
□ 内定後に連絡が途絶え、放置される
□ (面接)面接官ばかりが話し、学生の話を最後まで聴かない
□ (面接)詰問や圧迫するような聞き方、答えにくい質問を重ねる
求職者に対するセクシュアルハラスメントの防止措置は、2026年10月1日から事業主の義務になりました(改正男女雇用機会均等法)。また、他社の辞退を迫るなど、学生の意思決定を妨げる言動も、避けるべき対応です。採用担当者の言動は、法令の面でも注意が必要になっています。
会話例:内定者の不安・面接で緊張する学生
内定者の不安に向き合うとき(採用担当者)
内定後、学生は「本当にこの会社でよいのか」と迷うことがあります。ここでの応対が、入職の決断を左右します。
NG:説得して、決断を急がせる
学生:「実は、もう少し迷っていて……」担当者:「大丈夫ですよ、うちは働きやすいですから。他社は断って、うちに決めたほうがいいですよ。いつ返事をもらえますか?」
→ 不安を聴かないまま決断を迫られ、学生は距離を置きたくなります。
OK:不安を聴き、一緒に考える
学生:「実は、もう少し迷っていて……」担当者:「正直に話してくれてありがとうございます。どんな点が、迷いどころですか?」
学生:「入社後に、自分がやっていけるか不安で……」
担当者:「なるほど。やっていけるか、という点が気になっているのですね。具体的には、どんなことが心配ですか?」
学生:「配属先の雰囲気や、先輩との関係が気になっています」
担当者:「それなら、配属先の先輩と話す機会をつくることもできます。ほかに、確認しておきたいことはありますか?」
ポイントは、説得する前に、まず不安を最後まで聴くことです。気持ちを受け止めてもらえた学生は、その会社を信頼しやすくなります。
面接で緊張している学生に
NG:詰問して、緊張を強める
面接官:「では、あなたの強みは? 具体的に」学生:「えっと、粘り強いところです……」
面接官:「それだけ? なんでそう言えるの? 他には?」
→ 学生は萎縮し、本来の力も本音も出せません。会社の印象も悪くなります。
OK:話しやすくして、言葉を拾って深掘りする
面接官:「緊張されていると思うので、リラックスして話してくださいね。まず、最近いちばん力を入れたことを教えてもらえますか?」学生:「ゼミの研究で、粘り強く調査を続けました」
面接官:「粘り強く調査を続けた、のですね。どんな場面で、そう感じましたか?」
学生:「データが集まらないときに、方法を変えて何度も試しました」
面接官:「なるほど。そのとき、どんな工夫をしたのですか?」
学生の言葉を拾って、短い質問で掘り下げることで、学生はたくさん話せ、面接官は多くの情報を得られます。面接が「見極めの場」であると同時に、「好印象を持ってもらう場」にもなります。
採用チームとして整えたいこと
応対の質を個人の頑張りに任せていると、担当者による差が生まれます。人事・研修ご担当者として、次の仕組みを整えておくと効果的です。
| 取り組み | 具体例 |
|---|---|
| 応対の基準をそろえる | 言葉づかい、連絡の期限、NG行動を、採用チームで共有する |
| 学生の情報を共有する | 学生の関心・不安・約束事項を記録し、担当者が変わっても一貫した対応ができるようにする |
| 学生の声を集める | 内定者や辞退者に、応対の印象を聞き、改善に活かす |
| 練習の機会をつくる | 担当者・面接官同士で学生との会話を練習し、お互いにフィードバックし合う |
| 面接官間でそろえる | 面接官同士で、質問の仕方・応対の姿勢・評価の基準をすり合わせ、面接官による差を小さくする |
まとめ
採用難と就職活動の早期化が進むなか、学生と接する採用担当者・面接官の応対が、学生の動機形成を左右します。条件や知名度だけでなく、「この人たちと働きたい」と思ってもらえるかどうかが、選ばれる決め手になります。
- 採用担当者も面接官も、学生にとって「会社の代表」。応対がそのまま会社の印象になる
- 心構えは、選ばれる意識・代表の自覚・関心・誠実さ・一貫性
- 話すより聴く。答えやすい質問で、学生の考えや不安を引き出す(面接官は、詰問・圧迫を避ける)
- 連絡の遅れ、上から目線、辞退の強要など、気持ちが冷める瞬間を避ける
- 応対の質は、個人任せにせず、採用チームと面接官全体の仕組みで整える
まずは明日の学生との接点で、「学生が話す時間を、いつもより少し増やす」ことから始めてみてください。採用担当者も面接官も、同じ一歩から変えられます。
採用担当者・面接官向け研修のご紹介(人事・研修ご担当者様へ)
採用担当者や面接官の応対は、経験や性格に任せていると、担当者による差が生まれます。当社では、採用担当者・面接官を対象に、傾聴と質問のテクニックを軸にした研修のご相談をお受けしています。学生にたくさん話してもらうことで、好感度が高まり、信用・信頼につながり、志望度の向上につながる——その関わり方を、実践を通じて身につけます。
傾聴と質問を磨く2つの効果
① 相手の考えや能力を引き出し、多くの情報を集められる。その結果、的確な判断ができる
② 相手にたくさん話してもらうことで、好感度が高まる。信用・信頼につながり、志望度が高まる
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採用担当者・面接官の応対力を高め、「選ばれる会社」にしたい人事・研修ご担当者様へ
学生の本音を引き出し、好印象を与える応対を、ロールプレイングで身につける研修をご提案します。
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田中 和義
株式会社エス・シー・ラボ 代表。リクルート出身。人材ビジネス業界35年以上、営業経験25年以上、管理職経験25年以上。リクルートグループ2社でトップセールスの実績を誇る。年間170回以上の企業研修・講演を行う実践派講師で、研修・セミナーの受講者は3万人以上。面接官トレーニング・傾聴力・コーチング・ハラスメント防止・Z世代マネジメントを中心に、現場で使えるスキルの習得を支援している。Udemy Business講師。