連載「管理職のためのコーチング」第2回/全3回
「コーチングの考え方は分かったが、実際の1on1で何を聞けばいいのか分からない」——第1回を読んで、そう感じた管理職の方も多いと思います。第2回では、1on1でそのまま使える「会話の流れ(型)」と「質問」を、具体的な言い回しとともに解説します。
※人事・研修ご担当の方へ:管理職向けコーチング研修のご案内は、記事の後半(研修のご紹介)にまとめています。
この記事でわかること
- 知識があっても使えない理由——必要なのは「型」
- 会話の型「GROW」——4つの流れ
- 1on1(30分)の進め方の例
- 質問の使い分け——避けたい聞き方と、おすすめの聞き方
- 会話例:「どうしたらいいか分かりません」と言われたら
- 実践でよくある3つの失敗
- まとめと次回の予告
- コーチング研修のご紹介(人事・研修ご担当者様へ)
知識があっても使えない理由——必要なのは「型」
コーチングの考え方を知っていても、いざ部下を前にすると、つい自分の答えを話してしまう。これは、意志が弱いからではありません。会話の進め方(型)を持っていないため、どこで何を聞けばよいか迷ってしまうのです。
第1回のおさらい
コーチングは「質問と傾聴で、相手の答えを引き出す」関わり方です。ティーチングとの使い分けが前提で、学び方は「聴く→問う→型で進める→振り返る」の4ステップでした。今回は3つ目の「型で進める」を扱います。
型があれば、迷いが減ります。まずは次の流れを覚えるだけで、1on1の質が変わります。
会話の型「GROW」——4つの流れ
コーチングの会話でよく使われる型に、GROW(グロー)モデルがあります。4つの頭文字を取ったもので、「目標→現状→選択肢→意思決定」の順に会話を進めます。
| 段階 | 目的 | 質問の例 |
|---|---|---|
| G Goal(目標) |
この会話で何を得たいか、どうなりたいかを明確にする | 「今日は何について話したい?」 「どんな状態になれたら理想?」 |
| R Reality(現状) |
いまの状況と、うまくいっていること・障害を整理する | 「いまはどんな状況?」 「これまでに試したことは?」 「何が壁になっている?」 |
| O Options(選択肢) |
解決のための方法を、できるだけ多く出してもらう | 「どんな方法が考えられる?」 「他にはどうだろう?」 「制約がなければ何をする?」 |
| W Will(意思決定) |
何をいつまでにやるか、具体的な行動に決める | 「まず何から始める?」 「いつまでにやる?」 「私にできるサポートは?」 |
ポイントは、いきなり「O(選択肢)」や「W(行動)」に進まないことです。上司は解決を急ぎがちですが、目標と現状が整理されないまま進むと、部下は腹落ちしません。
1on1(30分)の進め方の例
GROWを、30分の1on1に当てはめると、次のような流れになります。時間配分は目安ですので、部下の状況に合わせて調整してください。
人事・研修ご担当者様へ:1on1について、こんな課題はありませんか
- 1on1の制度はあるが、管理職によって進め方や質がばらばらである
- 管理職が「何を聞けばよいか分からない」と感じている
- 1on1が、業務の進捗確認で終わってしまっている
- 管理職向けに、1on1の進め方を練習する機会をつくりたい
一つでも当てはまる場合は、会話の型と質問を、実際に練習しながら身につける研修が役に立ちます。内容はこの記事の後半でご紹介しています。
質問の使い分け——避けたい聞き方と、おすすめの聞き方
同じ内容でも、聞き方によって部下の受け止め方は大きく変わります。よくある聞き方を、言い換えとともに整理します。
| 避けたい聞き方 | おすすめの聞き方 |
|---|---|
| 「なんでできなかったの?」 (原因の追及・詰問になりやすい) |
「うまくいかなかった原因は、何だと思う?」 「次はどう変えられそう?」 |
| 「やる気はあるの?」 (Yes/Noで答えさせ、追い込む) |
「いまの仕事で、一番やりがいを感じるのはどんなとき?」 |
| 「〇〇すればいいんじゃない?」 (質問の形をした指示) |
「どんな方法が考えられる?」 「他にはどうだろう?」 |
| 「大丈夫?」 (「大丈夫です」で終わってしまう) |
「いま、一番気になっていることは何?」 |
質問づくりのコツ
① 「はい/いいえ」で答えられない質問にする(何・どんな・どのように)
② 「なぜ」が詰問に聞こえそうなときは、「何が」「どのように」に言い換える
③ 質問の後は待つ。部下が考えている間は、次の言葉を足さない
会話例:「どうしたらいいか分かりません」と言われたら
部下からの典型的な相談です。ティーチング型の対応と、コーチング型の対応を比べてみましょう。
ティーチング型(答えを伝える)
部下:「お客様への提案が進まず、どうしたらいいか分かりません」上司:「まず先方の課題を整理して、資料はA案で出し直して。来週までにね」
部下:「……はい、分かりました」
コーチング型(答えを引き出す)
部下:「お客様への提案が進まず、どうしたらいいか分かりません」上司:「そうか、悩んでいるんだね。どうなったら理想だと思う?」(G)
部下:「来月までに、一度は提案を聞いていただきたいです」
上司:「なるほど。いまは、どこで止まっているの?」(R)
部下:「先方の本当の課題が、まだつかめていない気がします」
上司:「それを知るために、どんな方法がありそう?」(O)
部下:「もう一度ヒアリングの時間をいただくか、担当の方に電話で聞いてみます」
上司:「まず、何から始める?いつまでにやる?」(W)
部下:「明日、電話でアポを取ります」
コーチング型の会話では、結論を出したのは部下自身です。自分で決めたことは、自分から動く——これが、部下が育つ理由です。
もちろん、未経験の業務や緊急時は、ティーチングを優先します。会話の最初に「答えを伝えたほうがよい場面か、考えてもらう場面か」を見極めることが、使い分けの第一歩です。
実践でよくある3つの失敗
まとめと次回の予告
コーチングを実践する鍵は、会話の型を持つことです。GROWの流れ——目標、現状、選択肢、意思決定——に沿って質問すれば、1on1は「報告を聞く場」から「部下が考え、動き出す場」に変わります。
ただし、型を知っただけでは使えません。実際に声に出して練習し、自分の癖に気づくことで、はじめて自分の言葉になります。まずは次の1on1で、GROWのうち一つだけ意識してみてください。
連載「管理職のためのコーチング」
- 第1回:コーチングの学び方
- 第2回(この記事):実践の型——1on1で使える会話の流れと質問
- 第3回:定着のさせ方——続けるための振り返りと、組織への広げ方
管理職向けコーチング研修のご紹介(人事・研修ご担当者様へ)
会話の型や質問は、知識として知るだけでは職場で使えません。実際に練習し、自分の癖に気づくことで、はじめて1on1で使えるスキルになります。当社では、管理職を対象に、コーチングを実践的に学ぶ研修のご相談をお受けしています。
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田中 和義
株式会社エス・シー・ラボ 代表。リクルート出身。人材ビジネス業界35年以上、営業経験25年以上、管理職経験25年以上。リクルートグループ2社でトップセールスの実績を誇る。年間170回以上の企業研修・講演を行う実践派講師で、研修・セミナーの受講者は3万人以上。コーチング・傾聴力・Z世代マネジメント・面接官トレーニング・ハラスメント防止を中心に、現場で使えるスキルの習得を支援している。Udemy Business講師。