「あの人は使えない」「何をやってもダメな人だ」——職場でそう評価されている人が、上司が変わった途端に急に動き出し、成績が上がったというケースを私はこれまで何人も見てきました。パフォーマンスが上がらない部下は、本当に「ダメな人」なのでしょうか。この記事では、配属・上司との関係性・担当領域の向き不向きが、いかに人のパフォーマンスに影響するかを、実体験をもとに解説します。
この記事でわかること
- 「上司が変わったら急に動き出した」——私が見てきたリアルな事例
- パフォーマンスが上がらない本当の理由——本人の問題とは限らない
- 上司・マネジメントスタイルの「向き不向き」は実在する
- 担当領域・仕事の「向き不向き」が人を変える
- 管理職がやるべき3つのアプローチ
- 「ダメな人」と決めつける前に、試してほしいこと
「上司が変わったら急に動き出した」——私が見てきたリアルな事例
人材ビジネスの現場に長年いた私は、「この人はダメだ」と評価されていた人が、環境が変わった途端に別人のように変わる場面を、何度も目にしてきました。
事例①:上司が変わったら、急に活発に動き出した
ある営業担当者が、長い間パフォーマンスが振るわない状態が続いていました。上司からの評価も低く、「この人は向いていないのではないか」という声も聞こえていました。
しかし、異動によって上司が変わった途端——その人が急に活発に動き出し、営業成績も上がり始めたのです。私はそういったケースを何人か見ています。
前の上司と後の上司で、何が違ったのか。それはマネジメントスタイルの「向き不向き」でした。細かく管理されると萎縮してしまうタイプの人が、自律性を重んじる上司の下に移ったことで、本来の力が引き出されたのです。
事例②:担当領域を変えたら、業績が伸びた
別のケースでは、一般ビジネスパーソン向けの人材紹介領域でなかなか結果が出なかった人が、看護師向けの人材紹介領域に担当を変えた途端に業績を伸ばしたというケースがありました。
仕事の能力に根本的な問題があったわけではありません。担当するビジネス領域との「向き不向き」があったのです。看護師という職種に対する関心・共感・コミュニケーションの取り方が、その人の強みと合致していたのかもしれません。
この2つの事例から言えることは、「パフォーマンスが上がらない」という現象は、必ずしも「その人の能力の問題」ではないということです。上司のマネジメントスタイルとの相性、担当領域との向き不向き——これらが、人のパフォーマンスに大きく影響します。
パフォーマンスが上がらない本当の理由——本人の問題とは限らない
部下のパフォーマンスが上がらないとき、多くの管理職はまず「この人の能力・やる気の問題だ」と判断しがちです。しかし実際には、パフォーマンスを下げる原因は複数あります。
パフォーマンスが上がらないとき、「本人の問題」と「環境・関係性の問題」のどちらが原因かを切り分けることが、管理職として最初にやるべきことです。
上司・マネジメントスタイルの「向き不向き」は実在する
私が見てきた事例でも明らかなように、上司のマネジメントスタイルと部下の特性の相性は、パフォーマンスに大きく影響します。
「あの上司の下では伸びなかったが、この上司の下では伸びた」——これは決して珍しいことではありません。管理職として重要なのは、自分のスタイルを部下の特性に合わせて柔軟に変えていく意識を持つことです。
担当領域・仕事の「向き不向き」が人を変える
私が見てきたもう一つの事例——一般ビジネスパーソン向けの人材紹介では結果が出なかった人が、看護師向けの人材紹介領域に変わった途端に業績を伸ばした——これは、仕事の「向き不向き」の典型的な例です。
人にはそれぞれ、自分の強み・関心・価値観と合う仕事の領域があります。どれだけ努力しても結果が出ない人が、担当を変えただけで別人のように輝き出すことがあります。これは「努力不足」や「能力不足」の問題ではなく、「人と仕事のマッチングの問題」です。
「この人はダメだ」と結論を出す前に、「この人に合う仕事・領域・環境は何か」を考えてみる。これが、人を活かせる管理職・組織の発想です。
管理職がやるべき3つのアプローチ
①まず「対話」で本人の声を聴く
パフォーマンスが上がらないとき、最初にやるべきは「なぜ結果が出ていないか」を本人と対話することです。「何が難しいと感じているか」「どんな仕事が向いていると思うか」「今の状況についてどう感じているか」——本人の言葉の中に、答えが隠れていることがあります。
②自分のマネジメントスタイルを振り返る
「この人はダメだ」と判断する前に、「自分のマネジメントスタイルが、この人に合っているか」を振り返ることが大切です。細かく指示しすぎていないか、逆に放置しすぎていないか、褒めているか、声かけをしているか——自分の関わり方を見直すことで、部下が変わることがあります。
③配置・役割の変更を検討する
対話と自己点検を経て、それでも改善が見られない場合は、担当業務・配属先・チームの変更を検討します。「ダメな人をどこに移しても同じ」と考える管理職も多いですが、私が見てきた事例のように、環境が変わることで人が大きく変わることは実際にあります。
「ダメな人」と決めつける前に、試してほしいこと
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「いつから」パフォーマンスが下がったかを確認する
最初からダメだったのか、ある時期から変わったのか。変化のタイミングに、原因のヒントがあります。上司が変わった・担当が変わった・チームが変わったなど、環境変化との相関を確認します。 -
「何が得意で、何が苦手か」を整理する
パフォーマンスが低い業務だけを見るのではなく、その人が得意とすることを探します。得意な部分を活かせる役割・環境に変えることで、全体のパフォーマンスが上がることがあります。 -
短期間でも「別の環境」を試してみる
プロジェクトへの一時的な参加・別チームとの協働・担当業務の一部変更など、大きな異動でなくても「環境の変化」を作ることができます。
まとめ:「ダメな人」はいない——「合っていない環境」があるだけかもしれない
上司が変わって急に動き出した人、担当領域を変えて業績が伸びた人——私はそういった人を何人も見てきました。
パフォーマンスが上がらない部下を「ダメな人」と決めつけることは簡単です。しかし「この人に合う上司・環境・仕事は何か」を探し続けることが、管理職の本当の仕事ではないでしょうか。対話・自己点検・配置の見直し——この3つを試した上で初めて、本人の問題かどうかを判断できます。
人を活かすことは、採用と同じくらい重要な経営課題です。「ダメだ」と決めつける前に、もう一度その人の可能性を探してみてください。
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田中 和義
株式会社エス・シー・ラボ 代表。人材ビジネス業界35年以上、管理職経験25年以上。年間170回以上の企業研修・講演を行う実践派講師。コーチング・1on1・部下育成・面接官トレーニング・ハラスメント防止・提案営業力強化を中心に、現場で使えるスキルの習得を支援している。2026年8月30日、著書『採用を成功に導く面接官超入門 失敗しない見極め&動機づけの実践スキル』発売。Amazon予約はこちら