面接官トレーニング研修では、このようなご質問をよくいただきます。「一次面接を担当する部長・課長は『良い人材』と評価したのに、二次面接を担当する役員は『コミュニケーションスキルが不足しており、周囲との意思疎通が厳しい』と評価することがある。これはなぜでしょうか」——採用担当者であれば、一度は経験したことがあるであろう、非常にリアルな悩みです。この記事では、この評価の食い違いが起こる原因と、防ぐための対策を解説します。
この記事でわかること
- 研修でよくいただく、リアルな質問
- 原因①:評価基準が、面接官によって異なっている
- 原因②:見ている「コミュニケーション」の定義が違う
- 原因③:一次と二次で、質問の深さ・角度が違う
- 原因④:役員は「経営目線」で見ている
- この食い違いを防ぐための4つの対策
- それでも評価が割れたときの、正しい対応
研修でよくいただく、リアルな質問
面接官トレーニング研修では、採用担当者の方から、このようなご質問をよくいただきます。
これは、多くの企業で実際に起きている、非常に典型的な悩みです。同じ候補者を見ているはずなのに、なぜこれほど評価が食い違うのか——その原因を、順番に見ていきましょう。
原因①:評価基準が、面接官によって異なっている
最も根本的な原因が、これです。「良い人材」の定義が、面接官一人ひとりの中で、明確に言語化されていないケースが非常に多くあります。
一次面接の部長・課長は、「素直さ」「明るさ」「一生懸命さ」を評価基準にしていたかもしれません。一方、二次面接の役員は、「論理的に説明できるか」「自分の考えを的確に伝えられるか」を評価基準にしていたとすれば、まったく違う評価が生まれるのは、むしろ当然のことです。
これは、どちらかの評価が間違っているという話ではありません。そもそも「何を評価するか」という前提が、統一されていなかっただけなのです。
原因②:見ている「コミュニケーション」の定義が違う
「コミュニケーションスキルが不足している」という評価も、実は曖昧な言葉です。コミュニケーション力には、いくつもの異なる側面があります。
候補者が「感じは良いが、質問に対する答えがやや的を射ていない」というタイプだった場合、一次面接では「感じの良さ」が評価され、二次面接では「答えの的確さの不足」が指摘される——これはまさに、コミュニケーションという同じ言葉の、違う側面を見ていた結果です。
原因③:一次と二次で、質問の深さ・角度が違う
一次面接は、多くの場合、短時間で多くの候補者をスクリーニングすることが目的です。そのため、表面的な受け答えでも「問題なし」と判断されやすい傾向があります。
一方、二次面接では、より深く、より厳しい角度からの質問が行われることが一般的です。この段階になって初めて、候補者の「その場しのぎの受け答え」や「準備していなかった質問への弱さ」が表面化することがあります。
つまり、「一次では見えなかった課題が、二次で初めて見えた」という側面もあります。この場合、評価が食い違っているというより、選考が進むにつれて、より深い情報が明らかになったと捉えることもできます。
原因④:役員は「経営目線」で見ている
もう一つ見逃せないのが、役員クラスの面接官が、部長・課長とは違う視座で候補者を見ているという点です。
現場の部長・課長は、「一緒に働きやすいか」「チームに馴染めそうか」という現場目線で評価します。一方、役員は、「将来、社外の関係者やお客様と対等にやり取りできるか」「役職が上がったときに通用するか」という、より長期的・経営的な視点で見ていることが多くあります。この視座の違いが、評価の違いとして表れます。
この食い違いを防ぐための4つの対策
それでも評価が割れたときの、正しい対応
どれだけ準備をしても、面接官によって評価が分かれることは起こり得ます。そのときに大切なのは、「どちらが正しいか」を決めることではなく、「なぜ評価が分かれたのか」を確認することです。
・一次と二次、それぞれが「具体的にどの発言・行動」を根拠に評価したのかを確認する
・その違いが、評価基準の違いによるものか、視点の違いによるものかを整理する
・必要であれば、追加の面接や参考人を交えて、事実確認を行う
評価が割れること自体は、決して悪いことではありません。むしろ、複数の視点から見ることで、一人では気づけなかった側面が見えているとも言えます。大切なのは、その違いを「対立」として処理するのではなく、「情報」として活用することです。
まとめ:評価の食い違いは、基準のズレを教えてくれるサイン
一次面接と二次面接で評価が食い違う背景には、評価基準の未統一、コミュニケーションという言葉の定義の違い、質問の深さの違い、視座の違いという、いくつもの要因が重なっています。
この食い違いを「困った現象」として片づけるのではなく、「自社の評価基準が、まだ十分にすり合っていない」というサインとして受け止めることが大切です。求める人物像を具体的に言語化し、面接官同士で目線を合わせ続けること——これが、評価のブレを防ぐ確実な方法です。
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田中 和義
株式会社エス・シー・ラボ 代表。人材ビジネス業界35年以上、管理職経験25年以上。この6年間、面接官トレーニングのセミナー・企業研修を日本全国で展開し、年間170回以上の企業研修・講演を行う実践派講師。2,000人以上の面接官・経営者へのトレーニング実績を持つ。著書『採用を成功に導く面接官超入門 失敗しない見極め&動機づけの実践スキル』好評発売中。Amazonで購入する 楽天ブックスで購入する