今の管理職は、本当に大変です。コンプライアンス遵守やハラスメントリスクを常に意識し、自分の一つひとつの発言にまで注意を払わなければなりません。それでいて、上からは業績アップの圧力をかけられ続け、何か問題が起きれば責任を取らなければならない立場にあります。「それでも、管理職になるメリットはあるのか」——この率直な疑問に、この記事では正面から向き合います。
この記事でわかること
- 今の管理職が置かれている、厳しい現実
- メリット①:意思決定に関われる、影響力の大きさ
- メリット②:人を育てる喜びを、直接味わえる
- メリット③:視座が上がり、見える景色が変わる
- メリット④:処遇・キャリアの選択肢が広がる
- メリット⑤:人間的に鍛えられる、貴重な経験
- 「大変さ」と「メリット」は、実は表裏一体である
今の管理職が置かれている、厳しい現実
まず、この厳しい現実をきちんと認めることから始めます。今の管理職は、次のようなプレッシャーに常にさらされています。
これらはすべて事実であり、決して軽視すべきものではありません。「管理職になりたくない」と感じる人が増えているのも、無理のないことです。その上で、それでも管理職になることには、確かなメリットが存在します。
メリット①:意思決定に関われる、影響力の大きさ
一般社員としてどれだけ優れた提案をしても、最終的な意思決定は上位者に委ねられます。しかし管理職になれば、自分自身の判断で、チーム・部門の方向性を決められるようになります。
「こうすればもっと良くなるのに」という思いを、実際に行動に移せる立場になること——これは、一般社員のままでは決して得られない、大きなやりがいです。責任が重い分、影響力もまた大きいのです。
メリット②:人を育てる喜びを、直接味わえる
管理職の役割の一つは、人材育成です。これは大きな負担である一方、部下の成長を間近で見届けられる、かけがえのない経験でもあります。
自分が関わったことで、部下が自信を持って仕事に取り組めるようになる。以前はできなかったことが、できるようになる。その成長の瞬間に立ち会えることは、管理職だけが得られる特別な喜びです。プレイヤーとして自分の成果を出す喜びとは、また違う種類の達成感がそこにあります。
メリット③:視座が上がり、見える景色が変わる
管理職になると、自分の業務だけでなく、チーム全体・事業全体を俯瞰する視点が求められるようになります。この視座の変化は、決してマイナスなものではありません。
経営層が何を考え、どんな判断基準で意思決定をしているのかが、以前より格段によく見えるようになります。この「経営的な視点」を実務の中で培えることは、その後のキャリア全体にとって、非常に大きな財産になります。
メリット④:処遇・キャリアの選択肢が広がる
現実的な側面も、無視できません。多くの企業で、管理職への昇進は給与・処遇面での向上を伴います。また、管理職としての経験は、社内でのキャリアの幅を広げるだけでなく、転職市場においても高く評価される経験になります。
「マネジメント経験がある」ということは、多くの企業にとって、実務スキルとは別の価値として評価されます。管理職としての経験そのものが、市場価値の高いキャリア資産になるのです。
メリット⑤:人間的に鍛えられる、貴重な経験
コンプライアンス、ハラスメント防止、多様な世代とのコミュニケーション——今の管理職に求められる要素は、確かに多岐にわたります。しかし、視点を変えれば、これらすべてが「人間力」を磨く、またとない機会でもあります。
自分の言葉一つひとつに責任を持つ習慣、多様な価値観の相手と向き合う経験、プレッシャーの中で判断を下す胆力——こうした経験は、管理職を経験した人にしか身につかない、大きな成長の機会です。困難であるからこそ、乗り越えたときの成長も大きいのです。
「大変さ」と「メリット」は、実は表裏一体である
ここまで見てきた5つのメリットは、実は最初に挙げた「大変さ」と、表裏一体の関係にあります。
責任が重いからこそ、影響力も大きい。
プレッシャーがあるからこそ、成長も大きい。
コンプライアンス・ハラスメントリスクへの意識、業績へのプレッシャー、責任の重さ——これらは確かに大変です。しかし、これらの重みを引き受けることでしか得られない、意思決定の影響力、人材育成の喜び、視座の高さ、キャリアの広がり、人間的な成長があります。
管理職になることに迷いがある方は、この「表裏一体」の関係を、ぜひ思い出してみてください。大変さの分だけ、そこには確かなリターンがあります。
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田中 和義
株式会社エス・シー・ラボ 代表。人材ビジネス業界35年以上、管理職経験25年以上。年間170回以上の企業研修・講演を行う実践派講師。管理能力養成・ハラスメント防止・コミュニケーションを中心に、現場で使えるスキルの習得を支援している。