「この部下は、正直、人間的にちょっと苦手だ」——マネジメントをしていれば、誰しもこう感じる相手が一人はいるものです。しかし、「好き・嫌い」という感覚に頼ったマネジメントには限界があります。そこで役立つのが「ソーシャルスタイル」という考え方です。ソーシャルスタイルを活用すれば、たとえ人間的に苦手なタイプの部下であっても、うまくマネジメントできるようになります。この記事では、その理由と具体的な活用方法を解説します。

この記事でわかること

  1. 「好き・嫌い」に頼ったマネジメントの限界
  2. ソーシャルスタイルとは何か——4つのタイプ
  3. なぜソーシャルスタイルが「苦手」を乗り越えさせてくれるのか
  4. 4タイプそれぞれへの、具体的な関わり方
  5. 「苦手なタイプ」は、実は自分と対極のスタイルであることが多い
  6. ソーシャルスタイルを実践する、3つのステップ

「好き・嫌い」に頼ったマネジメントの限界

マネジメントをしていると、部下に対して自然と「話しやすい」「なんとなく苦手」という感覚が生まれます。これは人間である以上、避けられないことです。しかし、この感覚だけに頼ってマネジメントを続けると、大きな問題が起こります。

「苦手だから、なんとなく距離を置いてしまう」「話しやすい部下ばかりに目が向いてしまう」——これでは、贔屓と受け取られるリスクや、苦手な部下の力を十分に引き出せないリスクが生まれます。マネジメントは、好き嫌いの感情ではなく、相手を理解するための「型」を持つことで、格段にやりやすくなります。

その型として、私が研修で必ずお伝えしているのが「ソーシャルスタイル」という考え方です。


ソーシャルスタイルとは何か——4つのタイプ

ソーシャルスタイルとは、アメリカの産業心理学者によって提唱された、人の行動特性を「感情表現」と「自己主張」という2つの軸で分類する理論です。人は誰しも、次の4つのタイプのいずれかに近い傾向を持っています。

ドライビング型
感情表現は控えめ、自己主張は強い。結論・結果を重視し、効率的でスピーディーな進め方を好む。指示は明確・簡潔に。
エクスプレッシブ型
感情表現も自己主張も強い。人と関わることが好きで、直感的・情熱的に行動する。承認・称賛を重視する。
エミアブル型
感情表現は豊か、自己主張は控えめ。協調性を重視し、周囲との関係を大切にする。急な変化やプレッシャーを苦手とする。
アナリティカル型
感情表現も自己主張も控えめ。論理・データを重視し、慎重に物事を進める。感情論より、根拠のある説明を好む。

なぜソーシャルスタイルが「苦手」を乗り越えさせてくれるのか

「この部下が苦手だ」という感覚の多くは、実は「相手の行動の理由がわからない」ことから生まれています。

「なぜこの人は、こんなに感情的に話すのだろう」「なぜこの人は、いつも結論を急ぐのだろう」——理由がわからないまま接すると、その言動は単に「苦手な性格」として片づけられてしまいます。しかし、その行動が「タイプによる傾向」だとわかれば、「苦手な人」ではなく「そういうタイプの人」として理解できるようになります。

感情的な好き嫌いの対象だった相手が、「対応の仕方がわかる、ひとつのタイプ」に変わる——これが、ソーシャルスタイルを学ぶ最大の効果です。


4タイプそれぞれへの、具体的な関わり方

ドライビング型
への関わり方
結論から簡潔に伝える。雑談や前置きは短めに。裁量を与え、細かく管理しすぎない。褒めるときも簡潔に、成果に焦点を当てる。
エクスプレッシブ型
への関わり方
感情を込めて、称賛を惜しまず伝える。アイデアを積極的に聞く姿勢を見せる。人前で認められる機会を作る。細かいルールで縛りすぎない。
エミアブル型
への関わり方
急な変更や高圧的な指示は避ける。安心できる関係性を丁寧に築く。「あなたのおかげで助かった」という感謝を具体的に伝える。決断を急かさない。
アナリティカル型
への関わり方
感覚論ではなく、データや根拠を示して説明する。即答を求めず、考える時間を与える。感情的な褒め言葉より、具体的な事実に基づく評価を好む。

「苦手なタイプ」は、実は自分と対極のスタイルであることが多い

興味深いことに、「苦手だ」と感じる相手は、多くの場合、自分自身とは対極のソーシャルスタイルを持つ人であることが少なくありません。

例えば、結論を重視するドライビング型の上司は、じっくり関係性を築こうとするエミアブル型の部下を「決断が遅い」と感じやすく、逆にエミアブル型の上司は、ドライビング型の部下を「冷たい」と感じやすい傾向があります。これは相性の良し悪しではなく、単に「タイプの違い」です。

この事実を知っているだけで、「合わない」という感覚が、「タイプが違うだけ」という理解に変わります。この認知の転換こそが、苦手意識を乗り越える鍵になります。


ソーシャルスタイルを実践する、3つのステップ

1
まず自分自身のスタイルを知る
自分がどのタイプに近いかを理解することで、「なぜあの部下と合わないと感じるのか」の理由が見えてきます。
2
部下一人ひとりのスタイルを観察する
会議での発言の仕方、メールの書き方、意思決定のスピードなど、日常の言動からタイプの傾向を観察します。
3
相手のスタイルに合わせて、自分の関わり方を調整する
自分のやりやすいスタイルを押し付けるのではなく、相手が受け取りやすい形に、伝え方を意識的に変えていきます。

まとめ:苦手なタイプは、「わからないタイプ」だっただけ

「人間的に苦手だ」と感じていた部下も、ソーシャルスタイルという視点を持つことで、「対応の仕方がわかる、ひとつのタイプ」として理解できるようになります。感情的な好き嫌いに頼ったマネジメントから抜け出し、相手のタイプに合わせた関わり方を選択できるようになること——これが、ソーシャルスタイルを学ぶ最大のメリットです。

どんなタイプの部下であっても、うまくマネジメントできる自分になるために、まずは自分自身のスタイルを知ることから始めてみてください。

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田中 和義

田中 和義

株式会社エス・シー・ラボ 代表。人材ビジネス業界35年以上、管理職経験25年以上。年間170回以上の企業研修・講演を行う実践派講師。ソーシャルスタイル・管理能力養成・コミュニケーション・コーチングを中心に、現場で使えるスキルの習得を支援している。