組織のマネージャーは、新入社員から、役職定年を迎えたシニア社員まで、幅広い世代のメンバーをマネジメントする必要があります。指示をし、褒め、注意し、時には叱る——あらゆるコミュニケーションを、一人ひとりに合わせて行わなければなりません。この記事では、「なぜ社員を世代ごとにカテゴライズしなければいけないのか」という疑問を持つ管理職に向けて、世代の特徴を理解することの本当の意味をお伝えします。
この記事でわかること
- マネージャーが向き合う、幅広い世代というマネジメントの現実
- 「なぜ世代でカテゴライズする必要があるのか」という疑問について
- 世代の特徴を知ることは、「決めつけ」ではなく「仮説を持つ」こと
- 世代への理解がないと、実際に何が起きるか
- 世代の特徴は「地図」であり、「答え」ではない
- 今日からできる、世代理解の第一歩
マネージャーが向き合う、幅広い世代というマネジメントの現実
組織のマネージャーは、新入社員から、役職定年(ポストオフ)を迎えたシニア社員まで、非常に幅広い世代のメンバーをマネジメントする必要があります。
そして、そのマネジメントは、指示を出すだけでは終わりません。褒める、注意する、時には叱る——あらゆる場面でのコミュニケーションを、一人ひとりに対して的確に行わなければならないのです。
一人ひとりに伝わるコミュニケーションを行うためには、若い世代から、自分より上の世代の先輩まで、それぞれの特徴や考え方を知っておくことが、コミュニケーションを円滑に進める土台になります。
「なぜ世代でカテゴライズする必要があるのか」という疑問について
研修の場で、こうした疑問を口にする管理職の方に出会うことがあります。
一見、もっともらしい疑問に聞こえます。しかし率直に言えば、この疑問は、コミュニケーションにおける課題感が薄いマネージャーが陥りやすい発想です。なぜそう言えるのか、順を追って説明します。
世代の特徴を知ることは、「決めつけ」ではなく「仮説を持つ」こと
「世代でカテゴライズすべきでない」という主張の背景には、「世代で決めつけると、個人を見誤る」という懸念があるのだと思います。この懸念自体は、正しい問題意識です。
しかし、ここで見落とされているのは、世代の特徴を知ることと、個人を決めつけることは、まったく別物だということです。
世代の特徴を知ることは、目の前の相手を理解するための「仮説」を持つことです。「この世代は、こういう価値観を持つ傾向がある」という仮説を持った上で、実際に目の前の一人ひとりと向き合い、確認し、修正していく——これが正しい使い方です。仮説を持たずに向き合うことと、仮説を持って向き合うことでは、相手への理解の深さがまったく違います。
「一人ひとり個性がある」という考え方自体は、まったくその通りです。しかし、「個性がある」ということと、「世代的な傾向を知る必要がない」ということは、イコールではありません。むしろ、世代の傾向という土台を知っているからこそ、その人固有の個性がより際立って見えてきます。
世代への理解がないと、実際に何が起きるか
「世代の特徴なんて関係ない、一人ひとりを見ればいい」という考え方で、実際にマネジメントがうまくいくのであれば、それに越したことはありません。しかし現実には、次のようなことが起こります。
皮肉なことに、「一人ひとりを見ればいい」と主張する管理職ほど、実際には自分の価値観を一律に押し付けてしまっているケースが少なくありません。世代の傾向を学ぶことは、この画一的な押し付けから抜け出すための、最初の一歩なのです。
世代の特徴は「地図」であり、「答え」ではない
ここで一つ、大切な整理をしておきます。世代の特徴は、「この人はこういう人だ」という結論(答え)ではなく、「初めて会う場所を歩くときの地図」のようなものです。
地図を持たずに歩くより、
地図を持って歩き、
実際の景色と照らし合わせる方がいい。
地図があれば、初めての土地でも大まかな方向性を持って歩けます。しかし、実際に歩いてみれば、地図にない小道や、地図とは違う風景に出会うこともあります。そのときは、目の前の現実に合わせて、地図を修正すればいいのです。世代の特徴という地図を持たずに歩くことは、迷子になるリスクを自ら高めているようなものです。
今日からできる、世代理解の第一歩
「なぜ世代でカテゴライズしなければいけないのか」という疑問を持つこと自体は、悪いことではありません。しかし、その疑問を「学ぶ必要はない」という結論にしてしまうと、コミュニケーションの課題は、いつまでも「なんとなく」の勘に頼ったままになってしまいます。
・世代ごとの一般的な傾向を、まず知識として学ぶ
・その知識を「仮説」として持ちながら、目の前の一人ひとりと向き合う
・仮説と実際の様子が違えば、遠慮なく仮説の方を修正する
・「この人はこの世代だから、こうだ」という決めつけの言葉は使わない
幅広い世代のメンバーを預かるマネージャーだからこそ、世代の特徴という「地図」を持つ価値があります。個々の人格を尊重することと、世代的な傾向を学ぶことは、決して矛盾しません。むしろ両方があって初めて、本当の意味で一人ひとりに伝わるコミュニケーションが実現します。
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田中 和義
株式会社エス・シー・ラボ 代表。人材ビジネス業界35年以上、管理職経験25年以上。年間170回以上の企業研修・講演を行う実践派講師。管理能力養成・世代間コミュニケーション・Z世代マネジメント・ハラスメント防止を中心に、現場で使えるスキルの習得を支援している。