いよいよ明日、2026年10月1日から、カスタマーハラスメント対策がすべての企業に義務化されます。NHKの報道(2026年9月29日)でも、施行を目前に控え、対応に苦慮している事業者が少なくないことが伝えられました。「うちはまだ準備が間に合っていない」という企業も、今からできることがあります。この記事では、義務化の直前に、最低限押さえておきたいポイントを整理します。

この記事でわかること

  1. 明日から何が変わるのか——義務化の要点
  2. 「対応に苦慮する事業者」が多い理由
  3. 準備が間に合っていない場合、今日中にできること
  4. 「どこからがカスハラか」を判断する基本の考え方
  5. 10月1日以降、継続して取り組むべきこと

明日から何が変わるのか——義務化の要点

2025年6月に公布された改正労働施策総合推進法により、2026年10月1日から、カスタマーハラスメント(カスハラ)への防止措置が、すべての企業に義務化されます。従業員を1人でも雇用していれば対象となり、企業規模による猶予措置は一切ありません。

すでにパワーハラスメント防止措置を義務づけてきたのと同じ法律の枠組みに、カスハラが新たに加わる形です。2026年2月には厚生労働省から具体的な指針も告示されており、企業が講じるべき措置の内容はすでに明確になっています。


「対応に苦慮する事業者」が多い理由

NHKの報道でも取り上げられた通り、施行を目前にしても対応に苦慮している企業が少なくありません。その背景には、いくつかの共通した悩みがあります。

「どこからがカスハラか」の線引きが難しい
正当なクレームとの境界線が曖昧に感じられ、現場でどう判断すればいいか迷う企業が多くあります。
「顧客第一」の企業文化との折り合い
長年「お客様は神様」という価値観で運営してきた企業ほど、従業員を守る姿勢への転換に戸惑いが生じやすい傾向があります。
準備の時間・人手が確保できなかった
特に中小企業では、通常業務と並行して防止措置の整備を進めることが難しく、施行直前までずれ込むケースが多く見られます。

準備が間に合っていない場合、今日中にできること

完璧な体制を今日中に整えることは難しくても、最低限、今すぐ着手できることはあります。

□ 「カスハラを許さない」という基本方針を、口頭でもいいので管理職・現場に伝える
□ 既存の相談窓口(総務・人事など)を、カスハラの相談先として明確にする
□ 「一人で対応せず、上司に共有する」というルールだけでも徹底する
□ 理不尽な要求を受けた際の、最低限の対応フレーズ(「上席に確認します」等)を共有する
□ 本格的な規程・マニュアル整備は、10月以降も継続して進める計画を立てる

完璧を目指して着手が遅れるより、できることから始めて、継続的に整備していくという姿勢が現実的です。


「どこからがカスハラか」を判断する基本の考え方

多くの企業が悩む「線引き」については、厚生労働省の指針で、基本的な判断軸が示されています。

①要求の内容が、そもそも妥当か(商品・サービスに瑕疵があるかなど)
②要求を実現するための手段・態様が、社会通念に照らして相当かどうか

要求内容が妥当であっても、手段・態様が不相当(怒鳴る、長時間拘束する、土下座を要求するなど)であれば、カスタマーハラスメントに該当します。この2軸で考えると、現場での判断がしやすくなります。


10月1日以降、継続して取り組むべきこと

義務化はあくまでスタートラインです。施行日を迎えた後も、継続的な取り組みが求められます。

正式な社内規程・マニュアルの整備
管理職・現場従業員向けの実践的な研修・ロールプレイの実施
実際に発生した事案の記録・分析と、対応の見直し

まとめ:完璧でなくても、まず動き出すこと

明日から始まる義務化に、すべての準備が完璧に整っている企業ばかりではありません。大切なのは、今日できることから着手し、10月以降も継続的に体制を整えていく姿勢です。「対応に苦慮する事業者」の一つで終わらせず、まずは方針を伝えること、相談先を明確にすることから始めてみてください。

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田中 和義

田中 和義

株式会社エス・シー・ラボ 代表。人材ビジネス業界35年以上、管理職経験25年以上。この6年間、面接官トレーニングのセミナー・企業研修を日本全国で展開し、年間170回以上の企業研修・講演を行う実践派講師。ハラスメント防止・コミュニケーションを中心に、現場で使えるスキルの習得を支援している。