「一次面接ではA評価だったのに、二次面接ではC評価がついた」「面接官によって、同じ候補者への評価がまったく違う」——複数の面接官が関わる採用では、こうした評価のバラつきがよく起こります。評価がバラバラなまま採用会議に臨めば、議論はかみ合わず、最終的に「なんとなく」で決まってしまいます。この記事では、複数の面接官の評価を正しくすり合わせるための技術を、研修で必ずお伝えしている内容をもとに解説します。

この記事でわかること

  1. なぜ面接官によって評価がバラバラになるのか
  2. 評価がバラバラなまま採用してしまうリスク
  3. 評価をすり合わせるための3つの前提条件
  4. 評価すり合わせ会議の正しい進め方
  5. 評価が割れたときの具体的な対処法
  6. 評価すり合わせを組織文化にするために

なぜ面接官によって評価がバラバラになるのか

私は面接官トレーニングの研修で、必ずこのテーマに触れています。複数の面接官がいる採用の現場では、評価のバラつきは避けられない現象として起こります。その原因は主に次の3つです。

求める人物像の解釈が面接官ごとに違う
「主体性がある人」という言葉一つとっても、面接官によってイメージする具体像が異なります。共通の定義がなければ、評価は当然バラつきます。
面接官それぞれの認知バイアスが働く
ハロー効果・類似性バイアス・第一印象効果など、面接官が無意識に持つバイアスは人によって異なります。同じ候補者でも、引っかかるバイアスが違えば評価も変わります。
評価基準・評価シートが統一されていない
「総合的にどうだったか」という感覚的な評価シートしかなければ、面接官の主観がそのまま評価点になり、比較できる根拠がありません。

これらの原因は、いずれも「事前の準備」「評価の仕組み」で解決できるものです。感覚に頼った評価から抜け出すことが、すり合わせの第一歩です。


評価がバラバラなまま採用してしまうリスク

声の大きい人・役職が上の人の意見で決まってしまう
評価基準が曖昧だと、議論は「誰の意見が強いか」で決着します。これは正しい見極めとは言えません。
本来採用すべき人材を見逃す
ある面接官には強く響いた候補者の強みが、別の面接官には伝わっていないケースがあります。すり合わせがなければ、その強みは議論の場に出てきません。
採用ミスマッチが繰り返される
根拠のない評価で採用を続ければ、入社後のミスマッチが繰り返され、離職率の高さにもつながります。

評価をすり合わせるための3つの前提条件

評価すり合わせを機能させるには、面接そのものが始まる前に、次の3つを整えておく必要があります。

①求める人物像を「行動」で言語化しておく

「主体性がある人」ではなく「問題を自分で発見し、上司の指示を待たずに行動できる人」というように、行動レベルで具体的に定義します。全面接官がこの定義を共有していることが大前提です。

②共通の評価シートを用意する

「総合評価」の一行だけでなく、求める人物像の要素ごとに評価項目を分けたシートを用意します。項目ごとに5段階評価と根拠となる発言・行動をメモできる形式が理想です。

③面接官自身が「事実」と「印象」を分けて記録する

面接中、候補者が実際に話した内容(事実)と、それに対して自分がどう感じたか(印象)を分けてメモする習慣をつけます。これにより、すり合わせの場で根拠のある議論ができます。


評価すり合わせ会議の正しい進め方

1
まず各面接官が独立して評価を出す
他の面接官の評価を見る前に、自分自身の評価を確定させます。先に他人の評価を見てしまうと、無意識に引きずられてしまいます。
2
評価が一致している項目から確認する
全員の評価が一致している項目は、そのまま確定で問題ありません。ここに時間をかける必要はありません。
3
評価が割れている項目に絞って議論する
議論すべきは、評価が分かれた部分だけです。すべての項目を一から話し合う必要はありません。
4
「なぜその評価にしたか」を事実ベースで説明する
「なんとなく良さそうだった」ではなく、「候補者はこう発言した。だからこう評価した」という事実に基づいた説明を求めます。

評価が割れたときの具体的な対処法

評価をすり合わせても、それでも意見が分かれることはあります。そのときの対処法を整理します。

評価が割れたときの3つのアプローチ

①同じ場面についての受け止め方の違いを確認する
同じ発言でも、「主体性がある」と受け取った人と「自己中心的」と受け取った人がいる場合、その場面を具体的に再現して確認する。

②追加の面接・確認の場を設ける
評価が大きく割れる場合は、無理にその場で結論を出さず、追加の面接や質問で確認する選択肢を持つ。

③求める人物像の定義に立ち返る
「そもそも、うちの会社が本当に必要としている人物像はどちらの評価に近いか」を、原点に戻って確認する。


評価すり合わせを組織文化にするために

評価すり合わせは、一度の会議で終わるものではありません。組織の中で継続的に磨いていく仕組みにすることが大切です。

  • 採用後、入社した人材のパフォーマンスと面接評価を照合する
    「高評価だった人が本当に活躍しているか」を振り返ることで、評価基準そのものの精度を検証できます。
  • 面接官同士で評価のクセを共有する
    「自分は話し方の印象に引っ張られやすい」など、それぞれの評価の傾向を自覚することで、バイアスへの意識が高まります。
  • 定期的に評価基準・評価シートを見直す
    事業環境や求める人物像は変化します。評価基準も定期的にアップデートすることが必要です。

まとめ:評価のバラつきは「仕組み」で解決できる

「面接官によって評価がバラバラ」という現象は、決して面接官個人の能力の問題ではありません。求める人物像の言語化・共通の評価シート・事実と印象を分けて記録する習慣——この仕組みが整っていないことが根本原因です。

評価がバラバラなまま「声の大きい人の意見」で採用を決めるのではなく、事実に基づいた議論で結論を出す——この積み重ねが、採用の精度を根本から変えていきます。

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田中 和義

株式会社エス・シー・ラボ 代表。人材ビジネス業界34年以上、営業・営業マネージャー経験25年以上。この6年間、面接官トレーニングのセミナー・企業研修を日本全国で展開し、年間170回以上の企業研修・講演を行う実践派講師。2,000人以上の面接官・経営者へのトレーニング実績を持つ。著書『採用を成功に導く面接官超入門 失敗しない見極め&動機づけの実践スキル』好評発売中。Amazonで購入する 楽天ブックスで購入する