以前の記事で、中途採用面接で本当のビジネススキルを見極めるための「きっかけ」「具体的行動」「成果」「振り返り」という4つの質問をご紹介しました。しかし実際の面接では、この4つの質問だけを機械的に投げかければいいわけではありません。候補者の答えの中に出てきた言葉を拾い、そこからさらに一段深く掘り下げるオープンクエスチョンが組み合わさって、初めて本当の実力が見えてきます。この記事では、その組み合わせ方を、模範対話例で解説します。

この記事でわかること

  1. 面接の設定——法人営業職の中途採用候補者
  2. 模範対話例:4つの質問と、その場で生まれる深掘り
  3. この対話で使われている質問技術の解説
  4. 「型」と「その場の深掘り」、両方が必要な理由

面接の設定——法人営業職の中途採用候補者

ある企業の中途採用面接。候補者の職務経歴書には、「既存顧客への提案強化により、売上を前年比120%に伸ばした」という記載がありました。面接官はこの記載をもとに、面接をスタートします。


模範対話例:4つの質問と、その場で生まれる深掘り

面接スタート

面接官

職務経歴書に「既存顧客への提案強化により、売上を前年比120%に伸ばした」とありますが、その成果を出すために、力を入れたことは何ですか?

候補者

はい、既存のお客様に対して、御用聞きのような御用聞き営業ではなく、こちらから積極的に課題を提案する形に変えていくことに力を入れました。

面接官

御用聞きから、提案型に変えていったのですね。①それに取り組み始めたきっかけは何でしたか?

候補者

前任の担当が異動になり、私が引き継いだんですが、そのとき既存顧客のリピート率がかなり低いことに気づいたんです。

面接官

引き継いだタイミングで、リピート率の低さに気づかれたのですね。[深掘り]それは、具体的にどうやって気づいたのですか?

候補者

引き継ぎのタイミングで、過去3年分の受注データを自分なりに整理してみたんです。そうしたら、一度受注したお客様の半分近くが、その後1年以内に取引が止まっていることがわかりました。

面接官

ご自身で過去のデータを整理し、課題を発見されたのですね。②では、具体的に、何をしましたか?

候補者

取引が止まっているお客様一社ずつに、改めて訪問のアポイントを取りました。そこで一度、何にお困りだったのかをヒアリングし直したんです。

面接官

取引が止まった理由を、一社ずつ改めて確認しに行かれたのですね。[深掘り]その中で、特に多かった理由は何でしたか?

候補者

意外だったのですが、価格の問題ではなく、「前担当者から新しい提案が全然なかった」という声が一番多かったんです。それで、こちらから定期的に業界動向や新しい活用方法を提案する仕組みを作りました。

面接官

価格ではなく、提案不足が理由だったのですね。[深掘り]その「定期的に提案する仕組み」というのは、具体的にはどのようなものですか?

候補者

お客様ごとに、3ヶ月に一度は必ず新しい提案を持っていくというルールを自分の中で決めました。ネタが尽きないよう、毎週金曜日に業界ニュースをチェックする時間を確保していました。

面接官

ご自身でルールと仕組みを作られたのですね。③そこから、どんな成果が出ましたか?

候補者

半年ほどでリピート率が改善し始めて、最終的には売上が前年比120%まで伸びました。

面接官

半年ほどで成果が出始めたのですね。[深掘り]その中で、周りの同僚や上司の反応はいかがでしたか?

候補者

最初は「そんなに手間をかけて意味があるのか」と言われましたが、成果が出始めてからは、この仕組みを他のメンバーにも共有してほしいと言われるようになりました。実際にチーム全体に展開する機会もいただきました。

面接官

ご自身の取り組みが、チーム全体に広がっていったのですね。④今振り返ると、同じ場面でどうすればもっと高い成果を出せたと思いますか?

候補者

今考えると、データ分析をもっと早い段階でやっていれば、課題に気づくのがあと2〜3ヶ月早かったと思います。それと、最初から仕組み化を考えて、属人的にならないようにしておけば、チームへの展開ももっとスムーズだったかもしれません。


この対話で使われている質問技術の解説

この対話は、「①きっかけ→②具体的行動→③成果→④振り返り」という4つの質問を軸にしながら、その合間にその場で出てきた言葉を拾う深掘り質問を挟んでいます。

4つの質問
(骨格)
「きっかけは?」「具体的に何を?」「成果は?」「振り返ると?」——この4つが面接全体の骨格を作っています。どんなエピソードでも、この順番で聴けば、思考のプロセスを網羅的に確認できます。
その場の深掘り
(肉付け)
「それは、具体的にどうやって気づいたのですか?」「特に多かった理由は?」——候補者の回答の中に出てきた気になる言葉・曖昧な部分を、その場で拾って掘り下げる質問です。これにより、事前に準備していなかった、その候補者ならではの具体的な行動特性が見えてきます。

今回の対話では、深掘り質問によって「自らデータを分析して課題を発見した」「顧客への直接ヒアリングで本質的な理由を突き止めた」「再現性のある仕組みを自分で設計した」「チームへの横展開にもつながった」という、職務経歴書の一文からは決してわからなかった、候補者の思考力・行動力・巻き込み力が、具体的に見えてきました。


「型」と「その場の深掘り」、両方が必要な理由

4つの質問という「型」だけを機械的に投げかけていると、面接は事務的な質問と回答の往復で終わってしまいます。一方で、深掘りだけをその場の思いつきで行うと、確認すべきポイントに漏れが生まれます。

「型」が面接全体の抜け漏れを防ぎ、「その場の深掘り」がその候補者ならではの本質を引き出す。この2つが組み合わさって初めて、職務経歴書の文字情報を超えた、生きた情報が得られます。

面接官として大切なのは、4つの質問を順番通りに聴きながらも、候補者の答えに耳を澄ませ、「もう少し詳しく聞きたい」と感じた瞬間に、迷わず一歩踏み込む姿勢です。この柔軟性こそが、面接の質を大きく左右します。


まとめ:型を軸に、その場の言葉を拾う——これが深掘りの本質

中途採用面接で本当のビジネススキルを見極めるには、「きっかけ」「具体的行動」「成果」「振り返り」という4つの質問を骨格にしながら、候補者の回答から出てきた具体的な言葉を、その場でオープンクエスチョンとして拾い上げることが欠かせません。

今日の面接から、この「型+その場の深掘り」の組み合わせを、ぜひ意識してみてください。

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田中 和義

田中 和義

株式会社エス・シー・ラボ 代表。人材ビジネス業界34年以上、営業・営業マネージャー経験25年以上。この6年間、面接官トレーニングのセミナー・企業研修を日本全国で展開し、年間170回以上の企業研修・講演を行う実践派講師。2,000人以上の面接官・経営者へのトレーニング実績を持つ。著書『採用を成功に導く面接官超入門 失敗しない見極め&動機づけの実践スキル』好評発売中。Amazonで購入する 楽天ブックスで購入する