前回の記事で、リクルーターの重要性についてお伝えしました。しかし実際には、名の知られた大手企業であっても、リクルーター制度を導入できていない会社は少なくありません。「現場が非協力的」「忙しい営業や生産の人には頼みにくい」「そもそも人手不足で余裕がない」——こうした理由から、採用スタッフだけで学生フォローを担わざるを得ない企業が、実際には数多く存在します。この記事では、リクルーター制度を導入できない企業が、限られた人員でどう効果的な学生フォローを実現するか、その仕組みづくりを解説します。

この記事でわかること

  1. リクルーター制度を導入できない、よくある4つの理由
  2. まず発想を変える——「専任リクルーター」ではなく「フォロー機能の分散設計」
  3. 採用スタッフだけで効果的なフォローを実現する5つの仕組み
  4. 現場を「巻き込まず」に、少しだけ「借りる」工夫
  5. 限られた人員でも実践できる、フォロー体制の作り方
  6. まとめ:完璧なリクルーター制度より、続けられる仕組みを

リクルーター制度を導入できない、よくある4つの理由

リクルーター制度の重要性は理解していても、実際に導入できていない企業には、共通する理由があります。

現場が非協力的
採用は「人事の仕事」という認識が根強く、現場社員が採用活動への協力に消極的な状態。
忙しい営業・生産の人には依頼しにくい
目の前の業績・生産数字に直結する部署ほど、時間を割いてもらう依頼がしづらい。
そもそも人手不足がひどく、お願いできる状況にない
各部署がぎりぎりの人員で業務を回しており、採用協力に割ける余力がまったくない。
採用スタッフが学生フォローを担うことになっている
人事・採用担当が少人数で、フォローまで含めてすべてを抱え込んでいる状態。

これらの理由は、どれも決して珍しいものではありません。むしろ、多くの企業に共通する、現実的な制約です。


まず発想を変える——「専任リクルーター」ではなく「フォロー機能の分散設計」

リクルーター制度が導入できないとき、最初に見直すべきは発想そのものです。「専任のリクルーターを立てる」という前提にこだわると、現場に負担をかけられない企業では、そこで思考が止まってしまいます。

大切なのは、「誰か一人にすべてを担わせる」のではなく、リクルーターが果たしていた機能——不安の解消・信頼関係の構築・動機づけ——を、複数の小さな仕組みに分散して実現するという発想です。専任者がいなくても、機能そのものは実現できます。


採用スタッフだけで効果的なフォローを実現する5つの仕組み

①フォローを「型」にして、属人化を防ぐ

採用スタッフが少人数でも回せるように、「いつ・誰に・何を連絡するか」をあらかじめテンプレート化します。内定通知後1週間・1ヶ月・入社1ヶ月前など、フォローのタイミングと内容を型にしておくことで、担当者の負担も、対応の抜け漏れも減らせます。

②一斉配信と個別対応を使い分ける

すべてを個別対応しようとすると、少人数では回りません。業界動向・入社準備情報などの一般的な内容は一斉配信で効率化し、不安や迷いに関わる部分だけ個別に対応する——このメリハリが、限られた人員でのフォローを可能にします。

③内定者同士のコミュニティを作る

採用担当者がすべての不安に一人で応えようとするのではなく、内定者同士が横のつながりを持てる場を作ります。同期同士の交流は、就活の不安を分かち合う効果があり、担当者の負担を増やさずに安心感を提供できます。オンラインのグループチャットなど、運営コストの低い方法で十分機能します。

④「協力してもらいやすい形」で現場を巻き込む

現場に全面的な協力を求めるのではなく、「1回30分だけ」「オンラインで顔を出すだけ」というように、負担を極小化した関わり方を設計します。次の項目で詳しく解説します。

⑤フォローの優先順位をつける

すべての内定者に同じ熱量でフォローすることは、少人数では困難です。「入社意欲がまだ固まっていない」「他社と迷っている様子がある」という兆候が見える内定者を優先的にフォローする——限られたリソースを、最も必要な相手に集中させる判断も必要です。


現場を「巻き込まず」に、少しだけ「借りる」工夫

現場が非協力的、あるいは人手不足で頼めない状況でも、「巻き込む」のではなく「少しだけ借りる」という発想なら、協力を得やすくなります。

現場の負担を最小化する依頼の仕方

・「15分だけ、オンラインで学生の質問に答えてもらえますか」
・「動画で1回、仕事の様子を撮らせてもらえますか」(一度作れば繰り返し活用できる)
・「懇親会に顔を出すだけで大丈夫です」
・依頼するタイミングを、現場が比較的落ち着く時期に合わせる

ポイントは、「継続的な負担」ではなく「一度きりの、短時間の協力」として依頼することです。これなら、忙しい部署であっても、単発の協力なら引き受けてもらいやすくなります。


限られた人員でも実践できる、フォロー体制の作り方

内定直後
テンプレート化したお祝い連絡+今後のフォロースケジュールの案内(採用スタッフのみで対応)
1ヶ月後
内定者同士の顔合わせ(オンライン可)+一斉配信での情報提供
3ヶ月後
現場社員に短時間だけ協力を依頼した座談会(15〜30分の負担で設計)
入社直前
個別の最終確認連絡(不安の兆候が見える内定者を優先)

このように、「常に個別対応」ではなく、「型で効率化する部分」と「人の温かみを出す部分」を意図的に組み合わせることで、専任のリクルーターがいなくても、十分に機能するフォロー体制を作ることができます。


まとめ:完璧なリクルーター制度より、続けられる仕組みを

リクルーター制度が理想的な形であることは間違いありません。しかし、「導入できないから何もしない」という選択は、最も避けるべきです。

現場に大きな負担をかけず、少人数の採用スタッフでも回せる仕組みを設計すること——「型による効率化」と「限定的だが確実な人との接点」を組み合わせることで、専任リクルーターがいなくても、学生の不安に寄り添うフォローは十分に実現できます。

完璧な制度を目指すより、今の体制で「続けられる仕組み」を作ることが、内定辞退を防ぐ現実的な第一歩です。

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田中 和義

田中 和義

株式会社エス・シー・ラボ 代表。人材ビジネス業界34年以上、営業・営業マネージャー経験25年以上。この6年間、面接官トレーニングのセミナー・企業研修を日本全国で展開し、年間170回以上の企業研修・講演を行う実践派講師。中小企業から大手企業まで、幅広い体制の採用現場に対応した実践的な採用力強化を支援している。著書『採用を成功に導く面接官超入門 失敗しない見極め&動機づけの実践スキル』好評発売中。Amazonで購入する 楽天ブックスで購入する