夏のボーナス時期は、評価面談・フィードバック面談が最も集中する時期のひとつです。「結果をどう伝えるか」「モチベーションをどう高めるか」——管理職にとって悩ましい場面が続きます。正直に言うと、私自身もこの時期の面談には、毎年少し身構えていました。「ボーナスが出たら会社を辞めます」という宣告を部下から受けることもあったからです。この記事では、夏のボーナス面談・評価面談を、信頼関係を深める機会にするための進め方を解説します。

この記事でわかること

  1. なぜ夏のボーナス時期は離職リスクが高まるのか——体験談
  2. ボーナス面談・評価面談の本来の目的
  3. 面談前に準備しておくべきこと
  4. 評価を伝えるときの3つの基本ステップ
  5. 評価に納得していない部下への対応
  6. 「辞めます」と言われたときの受け止め方
  7. 面談後のフォローで信頼を積み重ねる

なぜ夏のボーナス時期は離職リスクが高まるのか——体験談

夏のボーナス面談シーズン。私はこの時期、ある種の緊張感を持って面談に向かっていました。

理由は、ごく少数ではありますが、ボーナス支給後に「会社を辞めます」と宣告してくる部下がいたからです。

転職活動をしていた部下にとって、ボーナスをもらってから退職を切り出すのは、ある意味で合理的な判断です。「もらえるものはもらってから」という心理は、誰しも理解できるものだと思います。

私はこうした申し出を受ける可能性がある部下については、面談前に「もし辞めると言われたらどう引き留めようか」というトークを、密かに準備して面談に臨んでいました(笑)。今思えば、少し過剰な準備だったかもしれませんが、それくらい、この時期の面談には気を引き締めて臨んでいたのです。

実際、ボーナス支給直後は離職を考えていた人材が動き出すタイミングとして知られています。「ボーナスをもらってから」「夏のキリのいい時期に」という心理的なタイミングが重なるためです。だからこそ、この時期の面談は、単なる評価伝達の場ではなく、離職を防ぎ、信頼関係を深める重要な機会になります。


ボーナス面談・評価面談の本来の目的

評価面談を「結果を通知するだけの場」と捉えている管理職は少なくありません。しかし、本来の目的はもっと広く、深いものです。

評価の根拠を本人と共有する
なぜこの評価になったのか、どんな成果・行動が評価されたのかを具体的に伝える。評価の「結果」だけでなく「理由」を理解してもらう。
今後の成長への道筋を一緒に考える
評価を伝えるだけで終わらせず、「次にどう成長していくか」を一緒に話し合う場にする。
本音・モヤモヤを聴く機会にする
「評価に納得しているか」「今の仕事・環境に不満はないか」を確認できる、貴重な対話の機会になる。
離職の兆しを早期に察知する
評価面談は、部下の心の状態を確認できる定期的なタイミング。違和感や不満のサインに気づける数少ない機会でもある。

つまり、評価面談は「伝える場」であると同時に「聴く場」です。この両方を意識できているかどうかで、面談の質は大きく変わります。


面談前に準備しておくべきこと

良い面談は、準備の質で決まります。当日いきなり話し始めるのではなく、事前に整理しておくべきことがあります。

  • 評価の根拠となる具体的な事実を整理する
    「頑張っていた」という印象論ではなく、「〇〇のプロジェクトで△△の成果を出した」という具体的な事実・数字を準備する。
  • 本人の自己評価との「ズレ」を予測する
    本人がどう自分を評価していそうか、上司の評価とズレがありそうな点を事前に想定しておく。ズレが大きい場合は、より丁寧な説明の準備が必要になる。
  • 最近の様子・変化を振り返る
    最近元気がないように見えた、残業が増えていた、発言が減っていたなど、気になっていたことがあれば思い出しておく。
  • 「もし不満や離職の話が出たら」を想定しておく
    私自身がそうしていたように、可能性がありそうな部下については、心構えだけでもしておくと、当日落ち着いて対応できます。

評価を伝えるときの3つの基本ステップ

ステップ①:まず本人に自己評価を聞く

上司から評価を伝える前に、「この半年、自分ではどう評価している?」と本人に聞きます。これにより、本人の認識と上司の評価のズレを事前に把握できます。また、本人が自分の言葉で振り返ることで、自己理解が深まります。

ステップ②:事実に基づいて評価を伝える

評価を伝える際は、「〇〇という成果・行動があったので、この評価になった」という具体的な事実をもとに説明します。「なんとなく頑張っていたから」「印象が良かったから」という曖昧な伝え方では、本人の納得感は生まれません。

良い伝え方の例:「今期は〇〇の案件で△△という成果を出してくれました。特に□□の場面での対応は、お客様からも高く評価されていました。それを踏まえて、今回の評価になっています」

ステップ③:今後に向けた対話で締める

評価を伝えたら、それで終わりにしないことが大切です。「これからどうなっていきたいか」「どんなことに挑戦したいか」を聞き、今後への期待や支援の姿勢を伝えます。評価面談を「査定の通知」で終わらせず、「成長への対話」として締めくくることが、信頼関係を深めるポイントです。


評価に納得していない部下への対応

評価を伝えた際、部下の表情が曇ったり、反論が出たりすることもあります。このときの対応が、その後の信頼関係を大きく左右します。

やってはいけない対応

「決まったことだから」と話を打ち切る
「他のメンバーと比べて」と他者比較で説明する
不満そうな反応に対して、感情的に言い返す

望ましい対応

まず「そう感じたんだね」と一度受け止める。否定や正当化を急がず、本人がどう感じているかをしっかり聴く。その上で、「どの部分が納得できないか、具体的に聞かせてもらえる?」と深掘りし、評価基準・事実を改めて丁寧に説明する。

評価への不満をその場で完全に解消できなくても構いません。「ちゃんと話を聴いてもらえた」という実感を持ってもらうことが、何よりも重要です。


「辞めます」と言われたときの受け止め方

評価面談・ボーナス面談の場で、突然「実は、転職を考えています」と切り出されることがあります。私自身、何度かこうした場面に立ち会いました。

このとき、慌てて引き留めようとすることが、必ずしも最善ではありません。

1
まず驚きを表に出さず、冷静に受け止める
動揺した反応を見せると、本人がさらに話しづらくなります。落ち着いて「そうか、教えてくれてありがとう」とまず受け止める。
2
「なぜ」を否定せずに聴く
「なぜ辞めたいと思ったのか」を、責めるのではなく純粋な関心として聴く。待遇・仕事内容・人間関係・将来性——本当の理由が見えてくることがあります。
3
引き留めは「説得」ではなく「選択肢の提示」
「辞めるな」と説得するのではなく、本人の言葉に出てきた不満・課題に対して、改善できる可能性を提示する。それでも本人の意思が固い場合は、無理に押し留めない。
4
結論にかかわらず、最後は感謝で締める
残ることになっても、辞めることになっても、「これまで頑張ってくれたことへの感謝」を伝える。これがその後の関係性、さらには将来的な「出戻り」の可能性にもつながります。

事前に「もし辞めると言われたら」を想定して準備しておくこと自体は、決して悪いことではありません。慌てず、本人の話をしっかり聴く準備ができているかどうか——それが、突然の申し出にも落ち着いて対応できるかの分かれ目になります。


面談後のフォローで信頼を積み重ねる

評価面談は、その場で終わりではありません。面談後のフォローが、信頼関係を本当に深める部分です。

  • 面談で出た話題を、後日のコミュニケーションで覚えていることを示す
    「あのとき言っていた〇〇、その後どう?」と気にかけることで、「ちゃんと話を聴いてくれた」という実感が強まります。
  • 不満・課題への対応を、できる範囲で実行する
    面談で挙がった課題を放置せず、可能な範囲で改善に動く。「言っても変わらない」という諦めを生まないことが重要です。
  • 次の1on1・面談につなげる
    評価面談を単発のイベントにせず、日頃の1on1の中で継続的に状況を確認していく。

まとめ:夏の面談を「信頼を深める機会」に変える

夏のボーナス時期は、評価を伝えるだけでなく、部下の心の状態を確認できる貴重なタイミングです。私自身、「辞めます」という申し出に身構えていた経験がありますが、それも含めて、この時期の面談には特別な緊張感と重要性があるということだと思います。

評価は具体的な事実に基づいて伝える。納得していない様子があれば、まず受け止めて聴く。離職の話が出ても、慌てず本音を聴く姿勢を保つ。そして面談後も継続的にフォローする——この積み重ねが、部下との信頼関係を確かなものにしていきます。

今年の夏のボーナス面談も、ぜひ「評価を伝える場」ではなく「信頼を深める場」として、準備して臨んでみてください。

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田中 和義

田中 和義

株式会社エス・シー・ラボ 代表。人材ビジネス業界35年以上、管理職経験25年以上。年間170回以上の企業研修・講演を行う実践派講師。1on1・コーチングマネジメント・傾聴力・ハラスメント防止・Z世代マネジメント・面接官トレーニング・提案営業力強化を中心に、現場で使えるスキルの習得を支援している。