「今年から土木系の新卒採用を担当することになったが、何から始めればいいかわからない」——そんな採用担当者1年目の方に向けた記事です。土木・建設系の学生採用には独自のリズム・特有の難しさ・早期化への対応が求められます。「3月になってから動き始めよう」では手遅れです。この記事では、土木系新卒採用を成功させるために採用担当者1年目がこの1年間でやるべきことを月別スケジュールとともにまとめました。

この記事でわかること

  1. 土木系学生の採用市場の特徴——なぜ難しいのか
  2. 土木系学生が就職先を選ぶ軸——何が刺さるか
  3. 採用担当者1年目の年間スケジュール(月別)
  4. 土木系採用で押さえるべき採用チャネル・サービス
  5. 1年目の採用担当者が絶対に避けるべき失敗パターン

土木系学生の採用市場の特徴——なぜ難しいのか

土木・建設系学生の採用は、理系の中でも特に「早く動かないと間に合わない」分野です。その理由を理解することが、採用戦略の出発点になります。

就職先の決定が理系の中でも特に早い
マイナビの調査によれば、土木・建築系学生の約55%が秋冬インターンシップを待たずに就職先を選定しています。夏インターンシップ(6〜8月)に参加した企業から内々定を受け、そのまま承諾するケースが非常に多い。
競合が多い——ゼネコン・インフラ・公務員が同じ学生を狙っている
ゼネコン(鹿島・清水・大林・大成等)・建設コンサル・NEXCO・JR・国や自治体の公務員——すべてが同じ土木系学生を採用ターゲットとしています。大手・準大手・中堅で採用競争が激しく、早期に動いた企業が優秀な学生を確保します。
「現場・転勤・残業」のイメージが採用の壁になる
建設・土木系企業には「現場勤務・転勤が多い・残業が多い」というイメージを持つ学生が多くいます。このイメージへの対処なしには、優秀な学生が敬遠するケースがあります。実態・改善状況を正直に発信することが重要です。
研究室・教員とのパイプが採用に影響することがある
土木系では伝統的に、特定の大学・研究室と企業の関係が採用に影響するケースがあります。ただし年々、学生が自由に就職先を選ぶ傾向が強まっており、研究室ルートだけに頼るのは危険です。

土木系学生が就職先を選ぶ軸——何が刺さるか

採用活動を設計する前に、「今の土木系学生は何を重視して就職先を選んでいるか」を理解することが不可欠です。

学生が重視するポイント 採用活動への示唆
社会への貢献・インフラへの誇り 「この仕事で社会に何を残せるか」を具体的に語れるようにする
技術力の成長・スキルアップ 入社後のキャリアパス・資格支援・研修制度を明示する
働き方・ライフスタイルの両立 残業時間・転勤の実態・育休実績・DX推進による改善を正直に伝える
先輩社員との距離感・職場の雰囲気 若手社員・現場エンジニアを採用プロセスに積極的に登場させる
プロジェクトの規模・面白さ 手がけた実績・進行中のプロジェクトを写真・動画で具体的に紹介する

採用担当者1年目の年間スケジュール(月別)

ここからが本題です。採用担当者1年目として、この1年間で何をいつやるべきかを月別に整理します。「今が何月でも、そこから逆算して動き始める」ための地図として活用してください。

前提:政府推奨スケジュールは「3月広報解禁・6月選考解禁」ですが、2026年卒の4月末時点での内々定率はすでに74.9%(学情調べ)。土木系は特に早く、夏インターンシップが採用の実質的な勝負どころです。以下のスケジュールは、これを踏まえた実態ベースの年間計画です。

4〜5月 採用の「土台づくり」期

採用担当者に就任したばかりのこの時期は、まず「知る」「整える」「つながる」の3つに集中します。

この時期にやること

過去の採用データを把握する:採用人数・応募数・辞退率・入社者の出身大学・研究室を整理する
競合企業の採用状況を調べる:ゼネコン・建設コンサル・インフラ各社のインターン・採用ページを確認
自社の採用広報物を点検する:採用サイト・会社案内・パンフレットの内容が今の学生に響くか確認
社内の技術系社員・若手にヒアリングする:「なぜこの会社を選んだか」「学生に伝えたいこと」を聞く
インターンシップの企画をスタートする:夏インターン(6〜8月)の内容・日程・受入人数を確定させる

この時期のゴール:夏インターンシップの企画・募集準備を完成させる

6〜8月 採用の「最重要勝負期」——夏インターンシップ

土木系採用においてこの時期が最も重要です。ここで学生に「この会社で働きたい」と思わせることができれば、その後の採用は格段にスムーズになります。

⚠️ 重要:インターンシップの定義変更(2023年〜)

「インターンシップ」という名称を使うには5日間以上・就業体験を含むなどの条件が必要になりました。条件を満たすインターンシップで得た学生情報は採用選考に活用可能です。5日未満・見学中心の場合は「オープン・カンパニー」等の名称が正確です。

この時期にやること

インターンシップを実施する:現場見学だけでなく「実際の業務に近い体験」を提供する(施工計画ワーク・測量体験・CAD・BIM体験など)
若手社員を積極的に登場させる:「3〜5年目の先輩」との座談会・懇親が学生の不安解消に直結する
参加学生の情報を丁寧に記録する:志望度・専攻・印象に残った点を記録し、フォローに活かす
インターン後のフォローを即日開始する:参加翌日〜1週間以内にお礼・次のステップ案内を送る
ダイレクトリクルーティングを並行開始する:TECH OFFER等で土木系専攻学生にオファーを送り始める

この時期のゴール:インターン参加学生の中から「志望度が高い学生リスト」を作成する

9〜11月 「関係深化」と「早期選考準備」期

夏インターンシップを終えたこの時期は、接点を持った学生との関係を維持・深化させながら、早期選考の準備を進めます。土木系ではこの時期に就職先を決める学生も多いため、接触を切らさないことが最重要です。

この時期にやること

秋インターンシップ・現場見学会を追加実施する:夏に来られなかった学生への2次接触の機会をつくる
インターン参加学生に個別フォロー連絡を入れる:「最近どうですか」「卒論は進んでいますか」等の気にかける連絡
会社説明会(秋冬版)の企画・準備をする:夏と内容を変えた冬向け説明会の企画を立てる
早期選考フローを設計する:インターン参加者に対して早期選考を実施する場合、選考ステップ・評価基準を確定させる
大学・研究室への訪問・挨拶を行う:土木系学科の就職担当教員・キャリアセンターへのご挨拶と求人票の提出

この時期のゴール:早期選考フローを確定し、インターン参加者との関係を維持する

12〜1月 「早期内々定」と「広報準備」期

インターンシップを通じて志望度の高い学生への早期選考を実施し、優秀な学生の確保を進めます。同時に、3月の広報解禁に向けた準備を整えます。

この時期にやること

早期選考を実施・早期内々定出しを行う:インターン参加者の中から志望度の高い学生に早期選考の案内を送る
内々定学生へのフォローをスタートする:内々定を出した学生が他社に流れないよう、継続的な接触を設計する
採用ナビサイトへの掲載内容を作成・確認する:マイナビ・リクナビ等への掲載情報を3月解禁に向けて準備する
採用広報コンテンツを整える:採用サイト・動画・社員インタビュー記事等を更新・充実させる
来年度のインターンシップ企画を見直す:今年の夏インターンの振り返りを行い、改善点を次年度設計に反映

この時期のゴール:採用目標人数の30〜50%を早期選考で確保できている状態をつくる

2〜3月 「広報解禁」と「本格選考スタート」期

3月1日に広報が解禁され、ナビサイト上での活動が本格化します。ただし土木系ではこの時点で優秀な学生の多くはすでに複数の内々定を持っていることを忘れてはいけません。

この時期にやること

ナビサイト経由のエントリー対応を開始する:説明会予約・エントリー対応を迅速に行う
会社説明会を複数回・複数形式で実施する:対面・オンラインを組み合わせ、参加しやすい環境をつくる
大学合同説明会・理系特化型イベントに参加する:土木・建設系に特化した合同イベントを探して参加する
早期内々定学生のフォローを継続する:内定者懇親会・OB社員との懇談など、入社意欲を高め続ける
選考辞退を防ぐ「つなぎ施策」を実施する:選考中の学生に定期的に連絡し、関係を切らさない

この時期のゴール:説明会からの本選考フローを回しながら、早期内々定者の入社意欲を維持する

4〜6月 「選考解禁」と「内定確定」期

6月1日の選考解禁に合わせて、面接・内定出しを進めます。同時に来年度の夏インターンシップ(翌年度の採用活動)がすでに始まっていることを意識し、二重に動く必要があります。

この時期にやること

面接・選考を実施し内定・内々定を出す(6月1日解禁以降)
内定者フォローを本格化させる:内定者懇親会・現場見学・メンター制度等で入社の決意を固める
辞退者・追加採用への対応をする:目標に未達の場合は追加採用チャネルを検討する
翌年度の採用計画・インターンシップ企画をスタートする:次の採用担当者業務が同時に始まる
今年度の採用活動を振り返る:何がうまくいって何がうまくいかなかったかをまとめ、来年度に活かす

この時期のゴール:採用目標人数を達成し、内定者の入社意欲を維持する


土木系採用で押さえるべき採用チャネル・サービス

土木系新卒採用で活用できる主な採用チャネルをまとめます。複数を組み合わせることが採用成功の鍵です。

ナビサイト
マイナビ・リクナビ・理系ナビ等
3月解禁以降の母集団形成の基本。土木・建設系カテゴリへの掲載が有効。合同説明会への参加も積極的に行う。
ダイレクト
リクルーティング
TECH OFFER・OfferBox等
土木・建設系専攻でフィルタリングし、直接オファーを送れる。早期接触・ブランド力に依存しない採用が可能。オファー文面のカスタマイズが返信率を左右する。
大学・研究室
連携
工学部キャリアセンター・土木系研究室への訪問
伝統的なルートだが今でも有効。就職担当教員・キャリアセンターへの定期的な訪問・求人票提出・OB訪問の受け入れが関係構築につながる。
インターン
シップ
夏・秋の就業体験型インターンシップ
土木系採用の最重要チャネル。現場体験・施工計画ワーク等の実務に近い体験が学生の入社動機形成に最も効果的。
SNS・採用
広報
Instagram・X(旧Twitter)・YouTube等
現場の様子・若手社員の1日・プロジェクト紹介などを発信することで、採用説明会に来る前から企業ファンを増やせる。土木・建設系は「現場のリアル」が学生に刺さりやすい。

1年目の採用担当者が絶対に避けるべき失敗パターン

最後に、採用担当者1年目がやってしまいがちな失敗パターンをまとめます。

「3月になってから動き始める」
土木系では3月の広報解禁時点で、すでに内々定を複数持っている学生が多数います。3月スタートでは「残り枠」の争奪戦に参加することになります。夏インターンシップから動いていない企業は採用の勝負から降りていると言っても過言ではありません。
「インターンシップ=会社見学・説明だけ」にしてしまう
現場見学と説明だけのインターンシップでは、学生に「体験した実感」が残りません。実際の業務に近い課題・ワーク・体験を盛り込んでこそ、入社動機が生まれます。
「内定を出したら終わり」と思ってしまう
土木系学生は複数社の内々定を比較しながら最終決断をします。内定後に連絡が途絶える企業は辞退されやすい。内定者フォローは採用活動の「最後の勝負」です。
「現場・転勤のイメージ問題」を放置する
「建設は転勤・残業が多い」というイメージは学生の間に広く存在します。このイメージを放置したまま採用活動をしていると、そもそもエントリーされない可能性があります。実態の変化・改善状況を積極的に発信することが必要です。
「採用担当者1人で全部やろうとする」
採用担当者だけで動く採用活動には限界があります。技術系社員・若手エンジニア・現場監督を採用活動に巻き込んでこそ、学生との「リアルな会話」が生まれます。全社を動かす採用活動の設計が必要です。

まとめ:土木系採用は「夏から動いた企業が勝つ」

採用担当者1年目の方に最も伝えたいことはシンプルです。「夏インターンシップから動き始めた企業が、土木系採用を制する」ということです。

採用活動の土台づくり(4〜5月)→ 夏インターンシップの実施(6〜8月)→ 関係深化と早期選考(9〜11月)→ 広報解禁・本選考(3月〜)→ 内定者フォロー(通年)——この流れを意識して動くことが、1年目の採用担当者に求められることです。

そして採用は「人事だけの仕事」ではありません。技術系部門・経営層・若手現場社員を巻き込んだ「全社採用」として設計することで、初めて土木系学生の心に響く採用活動ができます。

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田中 和義

田中 和義

株式会社エス・シー・ラボ 代表。人材ビジネス業界35年以上、管理職経験25年以上。年間170回以上の企業研修・講演を行う実践派講師。面接官トレーニング・採用力強化・傾聴力・コーチング・Z世代マネジメント・ハラスメント防止を中心に、現場で使えるスキルの習得を支援している。