はじめての理系新卒採用シリーズ|電気・機械編

「今年から電気・機械系の新卒採用を担当することになったが、何から手をつけていいかわからない」——そんな採用担当者1年目の方に向けた記事です。電気・機械系学生は理系の中でも最も採用競争が激しい分野のひとつであり、大手・中堅・ベンチャーが同じ学生を奪い合っています。「とりあえずナビサイトに載せて3月から説明会をしよう」では、到底戦えません。この記事では、電気・機械系新卒採用を成功させるために採用担当者1年目がこの1年間でやるべきことを月別スケジュールとともにまとめました。

この記事でわかること

  1. 電気・機械系学生の採用市場の特徴——土木系とどう違うのか
  2. 電気・機械系学生が就職先を選ぶ軸——何が刺さるか
  3. 採用担当者1年目の年間スケジュール(月別)
  4. 電気・機械系採用で押さえるべき採用チャネル・サービス
  5. 1年目の採用担当者が絶対に避けるべき失敗パターン

電気・機械系学生の採用市場の特徴——土木系とどう違うのか

電気・機械系(機電系)学生の採用市場は、理系採用の中でも最も競合が多く・最も広い業界が争い合うフィールドです。土木系が「建設・インフラ系企業の競争」であるのに対し、電気・機械系は業界をまたいで採用競争が発生します。

大学院進学率が高く、採用できる絶対数が少ない
上位校の機電系(電気電子・機械系)学生は大学院進学率が80%を超えるケースも。学部採用・修士採用の両方を設計する必要があります。特に修士学生は研究室推薦・学校推薦のルートも残っており、多様な接点設計が必要です。
競合が業界を超えて広範囲に存在する
自動車・重工業・電機メーカーだけでなく、半導体・IT・情報通信・エネルギー・食品・化学まで、あらゆる製造業が電気・機械系学生を求めています。さらに近年はGAFAM系・外資IT・国内メガテックも参戦し、競争は激化する一方です。
研究・実験で忙しく、就活に使える時間が少ない
機電系学生は学部・院ともに実験・研究が多忙で、文系学生と同じ感覚でのアプローチは通用しません。「短時間で自社の魅力を伝える」「オンラインで気軽に参加できる」設計が重要です。
技術への関心が高く「何を作るか・何を研究できるか」で選ぶ
電気・機械系学生は「この会社でどんな技術に関われるか」「自分の専門性を活かせるか」を就職先選びの核心に置きます。技術・製品・研究内容を具体的に語れない企業は候補から外れやすい。

電気系・機械系——それぞれの採用の特徴の違い

専攻 主な就職先・競合 採用での注意点
電気・電子系 電機メーカー・半導体・自動車・インフラ・情報通信・外資IT 修士採用が主流。半導体・IT系との競合が激しく、待遇差が開いている
機械系 製造業・自動車・重工業・プラント・設備メーカー・航空宇宙 学部・院どちらも対象。幅広い業界から需要があり、早期に接触した企業が有利

電気・機械系学生が就職先を選ぶ軸——何が刺さるか

電気・機械系学生は、土木系学生とは異なる特有の価値観・行動パターンを持っています。採用活動の設計前に、「今の機電系学生は何を軸に就職先を選んでいるか」を理解することが不可欠です。

学生が重視するポイント 採用活動への示唆
技術・製品の面白さ・先進性 「弊社の技術が社会のどんな問題を解決しているか」を具体的に語る。製品・研究紹介は必須
専門性を活かせるか・成長できるか 「入社後のキャリアパス」「どんな技術スキルが身につくか」を明示する
研究環境・設備・開発体制 研究所・開発センターの設備・体制を見せる。インターンで「本物の環境」を体験させる
待遇・年収水準 半導体・外資IT系との待遇差が学生に知られている。正直な待遇提示と非待遇面での魅力強化が必要
先輩技術者との距離感・会社の雰囲気 若手エンジニア・研究者との座談会を採用プロセスに組み込む
働き方・ライフスタイルとの両立 リモートワーク可否・フレックス・育休取得実績を明示する

電気・機械系採用の最大のポイント

機電系学生は「技術で語られる企業」に惹かれます。「うちは安定している」「福利厚生が充実」という話より、「弊社のエンジニアが取り組んでいる技術的課題」「あなたが入社したら最初の2〜3年でどんな技術に触れられるか」を具体的に語れる採用担当者・技術者が同席する企業が選ばれます。


採用担当者1年目の年間スケジュール(月別)

電気・機械系採用の年間スケジュールを月別に整理します。「今が何月でも、そこから逆算して動き始める」ための実践的な地図として活用してください。

前提:政府推奨スケジュールは「3月広報解禁・6月選考解禁」ですが、現実は大きく乖離しています。2026年卒の4月末時点での内々定率はすでに74.9%(学情調べ)。理系就活生のインターンシップ参加率は95.6%(理系ナビ調べ)に達しており、夏インターンシップを経ずに採用できる機電系学生はほぼ存在しないと認識してください。

4〜5月 採用の「土台づくり」期

採用担当者就任直後のこの時期に、「知る」「整える」「巻き込む」の3つを徹底します。特に電気・機械系は技術系部門の協力なしに採用活動が成立しないため、早期の社内巻き込みが最重要課題です。

この時期にやること

過去の採用データを把握する:採用実績・応募数・辞退率・入社者の出身大学・学科・学部/院の比率を整理する
競合企業の採用状況を徹底的に調べる:自動車・電機・半導体・重工業各社のインターン・採用サイト・待遇情報を確認する
技術系部門・エンジニアを採用活動に巻き込む:「インターンシップの技術コンテンツ担当者」「座談会に出てくれる若手」を今から確保する
自社の技術・製品の「採用向けストーリー」を作る:技術者にヒアリングし「何がすごいか・何に取り組んでいるか」を採用言語に翻訳する
インターンシップの企画をスタートする:夏インターン(6〜8月)の内容・日程・技術プログラム・受入人数を確定させる

この時期のゴール:技術系部門を巻き込んだ夏インターンシップの企画・募集準備を完成させる

6〜8月 採用の「最重要勝負期」——夏インターンシップ

電気・機械系採用においてもこの時期が最も重要です。機電系学生の研究・実験スケジュールに配慮した設計が必要で、土木系より「短時間・オンライン対応」も重要な設計要素になります。

⚠️ 重要:インターンシップの定義変更(2023年〜)と機電系への影響

「インターンシップ」という名称を使うには5日間以上・就業体験を含むなどの条件が必要。条件を満たせば学生情報を採用選考に活用できます。機電系は研究で多忙なため「2日間や1週間のオープン・カンパニー形式(技術体験型)」と「5日以上の本格インターン」を組み合わせる設計が効果的です。

この時期にやること

技術体験型のインターンシップを実施する:回路設計・機械設計・シミュレーション・製品分解・CAD操作など、実際の業務に近い技術体験を提供する
若手エンジニア・研究者を積極的に登場させる:「3〜5年目の先輩技術者」との技術的な対話が機電系学生の入社動機に直結する
研究所・開発センターを見せる:設備・研究環境の充実度は機電系学生の重要な判断材料になる
参加学生の情報・志望度を丁寧に記録する:専攻・研究テーマ・興味分野・志望度をメモし、その後のオファー・フォローに活かす
インターン後のフォローを即日開始する:参加翌日〜1週間以内にお礼・技術的な補足資料・次のステップの案内を送る
ダイレクトリクルーティングを並行開始する:TECH OFFER等で電気・機械系専攻学生に、研究テーマ・技術キーワードに合わせたオファーを送り始める

この時期のゴール:インターン参加学生の中から「技術的にもカルチャー的にもマッチする学生リスト」を作成する

9〜11月 「関係深化」と「早期選考準備」期

夏インターンシップを終えたこの時期は、接点を持った学生との関係を維持・深化させます。機電系学生は秋〜冬にかけて就職先を絞り込む学生が多く、この時期の接触頻度が最終的な志望度を大きく左右します。

この時期にやること

秋の技術説明会・研究所見学会を追加実施する:夏に来られなかった学生への2次接触の機会をつくる。秋は大学の実験が一段落するタイミングでもある
インターン参加学生に個別フォロー連絡を入れる:「研究はどんな状況ですか」「先日体験した〇〇の技術、興味はありますか」等の技術的な対話で関係を温める
技術者・社員との個別面談機会を設ける:「あなたの研究テーマに近い部署の先輩に話を聞いてみませんか」という個別設定が志望度向上に効果的
早期選考フローを設計する:インターン参加者への早期選考ステップ・評価基準を確定させる
大学・研究室・キャリアセンターへの訪問を行う:工学部の就職担当教員・キャリアセンターへのご挨拶と求人票・インターン情報の提供。学校推薦制度がある場合はその手続きも確認する

この時期のゴール:早期選考フローを確定し、志望度の高い学生との接点を途切れさせない

12〜1月 「早期内々定」と「広報準備」期

インターンシップを通じて志望度の高い学生への早期選考を実施します。機電系学生は年明けから卒業研究・修士論文の追い込みに入るため、この時期に早期内々定を確保できている企業が圧倒的に有利です。

この時期にやること

早期選考を実施・早期内々定出しを行う:インターン参加者の中から志望度の高い学生に早期選考の案内を送る
内々定学生へのフォローをスタートする:内々定を出した学生が他社(特に大手・高待遇企業)に流れないよう、継続的な接触と「なぜここで働くと良いか」の体験設計を行う
採用ナビサイトへの掲載内容を作成・確認する:マイナビ・リクナビ・理系ナビ等への掲載情報を3月解禁に向けて準備する
採用広報コンテンツを整える:技術者インタビュー・研究所紹介動画・製品解説記事など、技術系学生に刺さるコンテンツを充実させる
来年度のインターンシップ企画を見直す:今年の夏インターンの振り返りを行い、技術プログラムの改善点を次年度に反映する

この時期のゴール:採用目標人数の30〜50%を早期選考で確保できている状態をつくる

2〜3月 「広報解禁」と「本格選考スタート」期

3月1日の広報解禁とともに、ナビサイト経由のエントリー対応が本格化します。ただし機電系学生の多くは2〜3月に卒業論文・修士論文の最終発表が集中します。この時期は学生が最も多忙な時期であることを忘れてはいけません。

この時期にやること

ナビサイト経由のエントリー対応を開始する:説明会予約・エントリー対応を迅速に行う。遅い返信は離脱につながる
会社説明会をオンライン・対面の両形式で実施する:論文追い込み中の学生が参加しやすい短時間・録画対応なども設ける
理系特化型・機電系合同説明会に参加する:TECH OFFERイベント・理系ナビ合同説明会・工学部系の就職イベントを探して参加する
早期内々定学生のフォローを継続する:他社と比較している期間。内定者同士の懇親・技術者との対話機会を積極的に設ける
学校推薦の手続きを開始する:学校推薦(指定校推薦・自由応募)の申請・受付手続きを確認し、大学窓口と連携する

この時期のゴール:本選考フローを回しつつ、早期内々定者の入社意欲を他社に奪われないよう維持する

4〜6月 「選考解禁」と「内定確定」期

6月1日の選考解禁に合わせて面接・内定出しを進めます。機電系学生は4〜5月に集中的に就職先を決定する傾向があるため、この時期の対応スピードが入社率を左右します。

この時期にやること

面接・選考を実施し内定・内々定を出す(6月1日解禁以降)
内定者フォローを本格化させる:内定者懇親会・現場見学・若手エンジニアとの技術的な対話会など、技術系学生が「ここで働く未来」をリアルに描けるイベントを設ける
辞退者・追加採用への対応をする:目標に未達の場合は追加採用チャネル(ダイレクトリクルーティング継続・学校訪問等)を検討する
翌年度の採用計画・インターンシップ企画をスタートする:翌年の夏インターン準備はすでに始まっている
今年度の採用活動を振り返る:辞退者が多かった企業・時期・理由を分析し、来年度の改善に活かす

この時期のゴール:採用目標人数を達成し、技術系内定者の入社意欲を高める


電気・機械系採用で押さえるべき採用チャネル・サービス

電気・機械系は採用チャネルの「多層活用」が重要です。ナビサイトだけでは競合に勝てません。

ナビサイト
マイナビ・リクナビ・理系ナビ等
3月解禁以降の母集団形成の基本。電気・機械・工学系のカテゴリを活用し、技術系学生の目に止まりやすい掲載内容(技術紹介・製品情報)を充実させる。
ダイレクト
リクルーティング
(最重要)
TECH OFFER・OfferBox等
電気・機械系採用における最重要チャネル。TECH OFFERは研究室・技術キーワードベースのマッチングで、専攻に合った学生に直接アプローチ可能。オファー文面に「あなたの研究テーマ(〇〇)に関連して、弊社では△△という技術開発をしています」と記載することで返信率が大幅に上がる。
大学・研究室
連携
工学部キャリアセンター・指導教員との関係構築
学校推薦制度が残っている企業・学科もある。キャリアセンターへの定期訪問・求人票提出・卒業生の活躍状況の報告が関係構築の基本。特定の研究室との共同研究がある場合は採用にもつながりやすい。
技術系
インターン
シップ
研究・開発体験型インターンシップ
単なる見学・説明ではなく、実際の技術課題に取り組む「仕事体験」が機電系学生への最大の訴求になる。オンライン短期版(1〜2日の技術体験)と5日以上の本格版を組み合わせると参加ハードルが下がる。
技術系
SNS・採用
広報
技術ブログ・YouTube・X(旧Twitter)等
機電系学生は技術情報収集にSNS・動画を活用する。製品解説動画・エンジニアの1日・技術課題の紹介など「技術に刺さるコンテンツ」の発信が採用説明会より前に学生の興味を引く。

1年目の採用担当者が絶対に避けるべき失敗パターン

電気・機械系採用に特有の失敗パターンをまとめます。

「技術の話ができない」採用担当者だけで動く
機電系学生は「技術的な対話ができない企業」を本能的に見抜きます。採用担当者が技術を語れなくても、技術者・エンジニアを採用プロセスに同席させることで解決できます。技術者の巻き込みが採用成功の最大の鍵です。
テンプレートのスカウトメールを一斉送信する
機電系学生はスカウトメールを大量に受け取っています。「貴殿のご活躍に期待して…」という汎用文は即座にスルーされます。「〇〇の研究に取り組んでいることを拝見し、弊社の△△開発チームとの親和性を感じてご連絡しました」という研究テーマに触れたパーソナライズが必須です。
「インターンシップ=製品説明・工場見学」だけにしてしまう
見学と説明だけでは「どこにでもあるインターン」になります。実際の技術課題・開発業務に近い体験——回路設計課題・機械設計シミュレーション・ソフトウェア開発演習など——を盛り込むことで学生の印象に残ります。
待遇差の問題を直視しない
機電系学生は半導体・外資IT系の高待遇を熟知しています。待遇を誤魔化したり触れなかったりすると信頼を失います。正直に待遇を示した上で、「技術環境・仕事の面白さ・チームの雰囲気・事業の社会的意義」で勝負する姿勢が重要です。
「2月〜3月は連絡しにくい」と連絡を止めてしまう
2〜3月は卒業論文・修士論文の最終発表時期で学生は多忙ですが、連絡が途切れると他社に決まります。「大変な時期ですが、応援しています」という一言のメッセージでもつながりを維持することが重要です。

まとめ:電気・機械系採用は「技術で語り、夏から動いた企業が勝つ」

電気・機械系の採用で最も伝えたいことは2つです。「夏インターンシップから動き始めること」と、「技術者を巻き込んで技術で語ること」です。

土台づくり(4〜5月)→ 技術体験型インターン(6〜8月)→ 関係深化と早期選考(9〜11月)→ 早期内々定と広報準備(12〜1月)→ 本選考・内定者フォロー(3月〜)——この流れで動くことが1年目の採用担当者に求められることです。

採用担当者は技術の専門家でなくて構いません。しかし「技術者が活き活きと語れる場をつくる設計者」であることが求められます。人事だけで完結させようとせず、技術者・経営層を巻き込んだ「全社採用」として動いてください。

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田中 和義

株式会社エス・シー・ラボ 代表。人材ビジネス業界35年以上、管理職経験25年以上。年間170回以上の企業研修・講演を行う実践派講師。面接官トレーニング・採用力強化・傾聴力・コーチング・Z世代マネジメント・ハラスメント防止を中心に、現場で使えるスキルの習得を支援している。