「オンライン面接をすると、みんないい人に見えてしまって、どう判断すればいいかわかりません」——私が行う面接官トレーニングのセミナーで、この質問を本当によくいただきます。オンライン面接が普及した今、多くの面接官が同じ悩みを抱えています。この原因は「非言語コミュニケーション」が対面に比べて圧倒的に伝わりにくいことにあります。この記事では、オンライン面接特有の落とし穴と、それを突き破るための実践的な見極め技術を解説します。

この記事でわかること

  1. 「みんないい人に見える」——セミナーで繰り返し出てくる悩みの正体
  2. なぜオンラインでは見極めが難しいのか——非言語情報の損失
  3. オンライン面接でおかしがちな5つの失敗
  4. 非言語をカバーする——オンラインでの見極め強化策
  5. 言語情報で補完する——行動質問・深掘りをより徹底する
  6. オンライン面接を機能させるための環境・進め方の基本

「みんないい人に見える」——セミナーで繰り返し出てくる悩みの正体

私が全国で開催している面接官トレーニングのセミナーで、ここ数年、ある質問を非常によくいただくようになりました。

「オンライン面接をすると、学生がみんないい人に見えてしまいます。みんな優秀で、人柄もよさそうに見える。どうやって見分ければいいでしょうか?」

この悩みは、特定の面接官だけが感じているものではありません。オンライン面接を経験した多くの面接官が共通して感じている感覚です。

なぜこういうことが起きるのか。私はセミナーでこう説明します。

オンライン面接では「言語情報」は届く。しかし「非言語情報」が圧倒的に伝わりにくくなる。そのため、話の内容・言葉のうまさだけで判断してしまいがちになり、「みんなよく見える」という状態になるのです。

対面の面接であれば、入室から退室までのあらゆる場面で、姿勢・表情の細かな変化・視線の動き・声のトーン・間の取り方・握手の仕方など、無数の非言語情報が面接官に届いています。しかしオンラインでは、画面という「フィルター」を通すことで、これらの情報の多くが失われてしまいます。


なぜオンラインでは見極めが難しいのか——非言語情報の損失

コミュニケーション研究において、メラビアンの法則という有名な知見があります。人が相手から受け取る情報のうち、言語(話の内容)はわずか7%、声のトーン・話し方が38%、見た目・表情・姿勢などの視覚情報が55%を占めるというものです。

オンライン面接では、この3つの要素すべてに「損失」が生じます。

情報の種類 対面での割合 オンラインでの問題
言語(内容) 7% 比較的伝わるが、話が上手な候補者に過大評価されやすい
声・話し方 38% 音質・音量・接続状況によって歪む。声の細かなトーン変化が伝わりにくい
視覚(表情・姿勢) 55% 最も損失が大きい。上半身しか見えない・画面越しに表情が読みにくい・視線がカメラと画面でズレる

つまり、オンライン面接ではコミュニケーション情報の55%以上が正確に伝わらない可能性があります。だから「みんなよく見える」のです。言葉だけを聞けば、面接対策をしっかりしてきた候補者はほぼ全員、「いいことを言っている」ように聞こえます。


オンライン面接でおかしがちな5つの失敗

1 「話の内容」だけで判断してしまう

非言語情報が届きにくいため、どうしても「何を話したか」だけに注目してしまいます。結果として、話が上手い候補者・面接対策を入念にしてきた候補者が過大評価される傾向が強まります。

2 背景・照明・音声の問題を放置して面接を進めてしまう

候補者の背景が雑然としている・逆光で顔が暗い・音声がこもっている——こうした環境問題は、候補者の印象を実際より悪くも良くも変えてしまいます。面接官側も、自分の映り方・音声を確認せずに始めてしまうケースも少なくありません。

3 沈黙・間が気になって、深掘りが浅くなる

オンラインでは、会話の間や沈黙が対面より「ぎこちなく」感じられます。そのため面接官が沈黙を埋めようとして、深掘り質問をする前に次の話題に移ってしまうことがあります。これが見極めを表面的にします。

4 アイスブレイクが不十分で、候補者の緊張がほぐれない

対面であれば来社から面接室までの移動・お茶出しなど、自然なアイスブレイクの機会があります。しかしオンラインでは接続した瞬間からいきなり本題が始まりがちで、候補者の緊張が最後まで解けないまま終わることがあります。

5 カメラを見ずに画面を見て、視線がずれる

候補者の顔を見ようとして画面を見ると、候補者側からは「目線が下を向いている」ように見えます。アイコンタクトが成立しにくいオンラインの特性を理解せずに進めると、候補者に「見てもらえていない」という印象を与えます。


非言語をカバーする——オンラインでの見極め強化策

非言語情報が届きにくいオンライン面接では、見極めの精度を保つために意識的な工夫が必要です。

①「観察できる非言語」に集中する

オンラインでも観察できる非言語情報は存在します。カメラを見ているか・表情の変化(答えにくい質問への反応)・話すスピードの変化・言葉に詰まるタイミング・目線の動き——これらは画面越しでも確認できます。特に「行動の事実を聞いたとき」と「表面的な話をしているとき」の反応の違いに注目します。

②複数回・複数の面接官で評価する

一回のオンライン面接だけで判断しないことが重要です。面接の回数を増やし、複数の面接官の目で評価を照合することで、一人の面接官が「みんないい人に見える」という状態でも、複数の視点から見えにくい差異が浮かび上がります。

③対面との組み合わせを検討する

重要な選考段階(最終面接・内定前など)では、可能な限り対面面接を組み合わせることが望ましいです。オンラインで絞り込み、対面で最終確認するという設計が、見極めの精度を高めます。


言語情報で補完する——行動質問・深掘りをより徹底する

非言語情報が届きにくい分、言語情報(質問と回答の内容)の質を上げることで補完します。オンライン面接では特に、行動質問・深掘り質問を対面以上に徹底することが重要です。

オンライン面接で特に重要な質問スタイル

「みんないい話に聞こえる」状態を突き破るには——
表面の話(「チームワークを大切にしています」)では差がつきません。「その経験を具体的に教えてください」「そのとき、あなた自身はどんな行動を取りましたか?」「うまくいかなかったとき、どうしましたか?」という行動の事実を掘り起こす質問を、オンラインでは対面以上に意識的に使います。

言葉が流暢でも、具体的な行動事実を聞くと曖昧になる候補者と、どんどん具体的なエピソードが出てくる候補者——この差が、オンラインでの見極めの核心です。


オンライン面接を機能させるための環境・進め方の基本

見極めの質を上げるためには、面接官側の環境整備も欠かせません。

照明・背景
顔に光が当たる位置に照明を置く。背景はシンプルに(バーチャル背景か整理された空間)。候補者に「この会社はきちんとしている」という印象を与えます。
カメラ・視線
話すときはカメラを見る(画面ではなく)。これにより、候補者側からは「目を見て話してくれている」という印象になります。
アイスブレイク
接続確認を兼ねて「つながりましたね。音声・映像は問題ないですか?」から始める。その後、天気や来た場所など軽い話を2〜3分入れてから本題へ。
うなずき・反応
オンラインでは相槌・うなずきが対面より伝わりにくいため、意識的に大きめのリアクションを心がける。「なるほど」「そうですね」という言語での相槌も積極的に入れる。

まとめ:「みんないい人に見える」を突き破るのは、言語情報の深掘りと複数評価

「オンライン面接でみんないい人に見える」——この悩みの正体は、非言語情報の損失です。そしてその解決策は2つです。

①観察できる非言語に集中しながら、複数の面接官・複数回で評価する。
②言語情報の質を上げる——行動質問・深掘りをオンラインでこそ徹底する。

表面の話が上手い候補者は、オンラインでは特に「よく見え」ます。しかし「具体的にどう行動したか」を深掘りすると、本当の力が見えてきます。オンライン面接の特性を正しく理解し、見極めの工夫を意識することで、対面に近い精度の採用判断ができるようになります。

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田中 和義

田中 和義

株式会社エス・シー・ラボ 代表。人材ビジネス業界35年以上、管理職経験25年以上。この6年間、面接官トレーニングのセミナー・企業研修を日本全国で展開し、年間170回以上の企業研修・講演を行う実践派講師。2,000人以上の面接官・経営者へのトレーニング実績を持つ。面接官トレーニング・採用力強化・傾聴力・コーチング・ハラスメント防止・提案営業力強化を中心に、現場で使えるスキルの習得を支援している。2026年8月30日、著書『採用を成功に導く面接官超入門 失敗しない見極め&動機づけの実践スキル』発売。