管理職として組織マネジメントを行う上で、果たすべき役割は突き詰めると2つに集約されます。「組織の目標達成のために、部下たちの業務を円滑に回していくこと」、そして「人材を育成していくこと」です。しかし、この2つを実現するためには、避けて通れない大きな課題があります。それが、多様な人材との円滑なコミュニケーションです。この記事では、現代の管理職に求められるコミュニケーションの全体像を整理します。
この記事でわかること
- 管理職が果たすべき、たった2つの役割
- なぜ、この2つの役割に「多様な人材とのコミュニケーション」が不可欠なのか
- 課題①:世代間ギャップを乗り越える
- 課題②:ポストオフした年上部下に機嫌よく働いてもらう
- 課題③:中途入社者と上手に人間関係を築く
- 課題④:ハラスメント的な言動を職場からなくす
- まとめ:これらすべてが、組織マネジメントに必要な「知識とスキル」である
管理職が果たすべき、たった2つの役割
管理職として組織マネジメントを行う上で、果たすべき役割は、突き詰めると次の2つに集約されます。
シンプルに見えるこの2つの役割ですが、実際にこれを実現しようとすると、非常に複雑で、繊細な課題に直面します。それが、多様な人材との円滑なコミュニケーションです。
なぜ、この2つの役割に「多様な人材とのコミュニケーション」が不可欠なのか
「業務を円滑に回す」ことも、「人材を育成する」ことも、すべて人を介して実現するものです。どれだけ優れた業務プロセスを設計しても、どれだけ体系的な育成計画を立てても、それを動かすのは結局のところ「人」であり、人と人との間のコミュニケーションです。
そして今の職場は、年齢・世代・立場・キャリア背景がこれまで以上に多様化しています。この多様性の中で円滑にコミュニケーションを取れなければ、業務は滞り、人材育成もうまく機能しません。管理職に求められるコミュニケーション力は、もはや「あれば良いもの」ではなく、2つの役割を果たすための土台そのものです。
具体的にどのような課題に向き合う必要があるのか、4つの側面から整理します。
課題①:世代間ギャップを乗り越える
今の職場には、複数の世代が同時に存在しています。育ってきた時代背景、価値観、仕事に対する考え方——これらはそれぞれの世代で大きく異なります。
どちらが正しい・間違っているという話ではなく、「育ってきた環境が違えば、価値観が違うのは当然だ」という前提に立つことが、世代間ギャップを乗り越える出発点です。目的を先に伝える、テキストと対面をハイブリッドで使い分けるなど、具体的な工夫を積み重ねることで、この壁は着実に低くなっていきます。
課題②:ポストオフした年上部下に機嫌よく働いてもらう
今、多くの企業で起きているのが、定年後再雇用や役職定年(ポストオフ)によって、かつて管理職だった年上社員が、部下として現場に残るというケースです。
ポストオフした年上部下のマネジメントは、単なる「年上部下」への配慮以上に、「かつて上の立場にいた人が、今は違う立場で働いている」という、本人自身の複雑な感情への理解が求められます。年下上司にとっては、指示や評価をどう伝えるかという技術的な課題に加え、相手の経験・実績への敬意を保ちながら、気持ちよく力を発揮してもらうという配慮が欠かせません。
丁寧な依頼の言葉を選ぶこと、相手の経験を頼る場面を意識的に作ること、そして役職としての責任は明確にしながらも、一人の人間としての敬意を忘れないこと——これらの積み重ねが、年上部下との良好な関係を築きます。
課題③:中途入社者と上手に人間関係を築く
もう一つ、現代の管理職が向き合う課題が、社風の異なる会社から転職してきた中途入社者とのコミュニケーションです。
中途入社者に気持ちよく力を発揮してもらうためには、「これまでの経験を尊重しながら、今の組織の文化を丁寧に伝える」という両輪の関わりが必要です。前職のやり方を頭ごなしに否定せず、「なぜ今の会社ではこうしているのか」を丁寧に説明することで、早期の信頼関係構築につながります。
課題④:ハラスメント的な言動を職場からなくす
多様な人材が共に働く職場では、悪意のない言動が、意図せずハラスメントとして受け取られてしまうリスクが常につきまといます。
「人格ではなく行動にフォーカスして叱る」「相手が受け取ったかどうかがすべて」——こうした原則を、管理職自身がまず理解し、実践できるようになることが不可欠です。特に、自分自身が人格否定型の叱られ方しか経験してこなかった管理職ほど、意識的な学び直しが必要になります。
ハラスメントのない職場は、放っておいて実現するものではありません。管理職一人ひとりが、正しい知識とスキルを持って、日々の関わりの中で実践し続けることで、初めて築かれるものです。
まとめ:これらすべてが、組織マネジメントに必要な「知識とスキル」である
世代間ギャップを乗り越えること。ポストオフした年上部下に機嫌よく働いてもらうこと。社風の異なる会社から転職してきた中途入社者と、上手に人間関係を築くこと。そして、ハラスメント的な言動を職場からなくしていくこと。
これらはすべて、
組織マネジメントを行う上で
必要な「知識とスキル」である。
これらの課題は、決して「センス」や「相性」で片づけられるものではありません。正しい知識を学び、意識して実践を重ねることで、誰でも身につけられるスキルです。
組織の目標達成のために業務を円滑に回し、人材を育成していく——この管理職本来の役割を果たすために、多様な人材との円滑なコミュニケーションは、避けて通れない土台です。一つひとつの課題に、焦らず、着実に向き合っていってください。
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田中 和義
株式会社エス・シー・ラボ 代表。人材ビジネス業界35年以上、管理職経験25年以上。年間170回以上の企業研修・講演を行う実践派講師。管理能力養成・コミュニケーション・ハラスメント防止・面接官トレーニングを中心に、現場で使えるスキルの習得を支援している。著書『採用を成功に導く面接官超入門 失敗しない見極め&動機づけの実践スキル』好評発売中。Amazonで購入する 楽天ブックスで購入する