「有名大学出身」「有名企業でのインターン経験」——こうした華やかな肩書きを目にした瞬間、面接官の評価は無意識に引き上げられます。これがハロー効果です。知識としてハロー効果を知っていても、実際の面接の場でその引力に気づき、踏みとどまるのは簡単ではありません。この記事では、新卒面接でハロー効果に引っ張られそうになりながらも、深掘り質問で踏みとどまる面接官の模範対話例をご紹介します。

この記事でわかること

  1. 面接の設定——有名大学・有名企業インターン経験を持つ候補者
  2. 模範対話例:ハロー効果に引っ張られそうになりながら、踏みとどまる面接官
  3. この対話で面接官が使った「踏みとどまる技術」
  4. ハロー効果は「知っているだけ」では防げない理由
  5. 面接官がハロー効果に気づくための、自分への問いかけ

面接の設定——有名大学・有名企業インターン経験を持つ候補者

ある企業の新卒採用面接。候補者は、難関大学出身で、学生時代に有名IT企業の長期インターンを経験しているという経歴の持ち主でした。話し方も落ち着いていて、受け答えもスムーズ。面接官の中には、自然と「優秀そうだ」という印象が生まれ始めていました。


模範対話例:ハロー効果に引っ張られそうになりながら、踏みとどまる面接官

面接スタート

面接官

エントリーシートを拝見しました。〇〇大学ご出身で、学生時代は△△社で長期インターンをされていたのですね。

候補者

はい。1年半ほど、新規事業の立ち上げチームに関わらせていただきました。事業計画の策定や、市場調査などを担当していました。

(面接官の内心:新規事業の立ち上げに関わって、あの有名企業で……これはかなり優秀な学生かもしれない)

面接官

新規事業の立ち上げに関わられていたのですね、貴重な経験ですね。[踏みとどまり]その中で、あなた自身が具体的に担当されていた業務を、もう少し詳しく教えていただけますか?

候補者

はい、主に市場調査のデータをまとめて、資料に落とし込む作業を担当していました。チームの先輩社員の指示のもと、リサーチした内容を整理していました。

面接官

データをまとめて資料化する作業を担当されていたのですね。[深掘り]その中で、ご自身から提案したり、工夫したりした場面はありましたか?

候補者

えっと……基本的には、指示された内容に沿って進めることが多かったです。資料のフォーマットを見やすく整えるといった工夫はしていましたが……。

(面接官の内心:あれ、思ったより「自分から動いた」というエピソードが出てこないな。もう少し確認してみよう)

面接官

なるほど、資料を見やすく整える工夫をされていたのですね。[深掘り]では、そのインターン期間の中で、あなた自身が課題だと感じて、自分から改善に取り組んだ経験はありますか?

候補者

そうですね……正直に言うと、あまり自分から課題を見つけて動く、ということは少なかったかもしれません。与えられたタスクを、期限内にきちんと仕上げることを大切にしていました。

面接官

正直にお話しいただき、ありがとうございます。[別の角度から確認]では、大学の授業やゼミ、他の活動の中で、ご自身が課題を見つけて主体的に動いた経験があれば教えてください。

候補者

大学のゼミで、後輩の学習フォロー体制を提案したことがあります。先輩が忙しくて後輩のサポートが手薄になっていることに気づき、週1回の勉強会を自分で企画して、半年ほど運営しました。


この対話で面接官が使った「踏みとどまる技術」

この対話の面接官は、有名大学・有名企業インターンという肩書きに一瞬引っ張られそうになりながらも、次の技術で踏みとどまっています。

「あなた自身は」
で個人の行動を分離
「新規事業の立ち上げ」というチームの成果と、候補者個人の行動を切り分けて確認。肩書きが立派でも、本人の関与度は別問題であることを意識しています。
主体性を確認する
質問を重ねる
「提案した場面」「課題だと感じて動いた経験」と、主体性を確認する質問を複数回投げかけ、一度の答えで判断を確定させないようにしています。
別の角度から
再確認する
インターン経験だけで判断せず、「大学の授業やゼミ」という別の場面に切り替えて質問することで、候補者の主体性をより広い視点から確認しています。

結果として、「有名企業のインターンでは指示された業務が中心だったが、ゼミでは自ら課題を見つけて行動していた」という、肩書きだけでは見えなかった候補者の実像が浮かび上がりました。


ハロー効果は「知っているだけ」では防げない理由

この対話の面接官は、ハロー効果という知識を持っていました。しかし、それでも「これは優秀な学生かもしれない」という印象が、心の中に自然と浮かんでいます。

ハロー効果は、知識として知っているだけでは防げません。「今、自分は肩書きに引っ張られているかもしれない」と、面接の最中にその都度気づき、意識的に質問で確認する行動に移すこと——この実践までできて初めて、ハロー効果への対策になります。

この面接官が優れていたのは、「優秀そうだ」という第一印象を持った直後に、あえて個人の行動を確認する質問を挟んだことです。印象を否定するのではなく、印象を「検証する」という姿勢が、見極めの精度を守りました。


面接官がハロー効果に気づくための、自分への問いかけ

面接中に「この候補者、良さそうだ」と感じたとき、面接官が自分自身に投げかけるとよい問いがあります。

面接中、自分に問いかけたい3つの質問

「今の良い印象は、肩書きや経歴から来ているだろうか、それとも具体的な行動事実から来ているだろうか」
「この人が同じ話を、無名の大学・無名の会社の経歴で語っていたら、同じ評価をしただろうか」
「まだ確認していない、行動の具体性はどこにあるだろうか」

この自問自答を、面接中に一瞬でも挟むことができれば、ハロー効果に引きずられたまま評価を確定させてしまうリスクを大きく減らせます。


まとめ:肩書きに触れた瞬間こそ、深掘りのタイミング

有名大学、有名企業でのインターン経験——こうした情報は、面接官の評価を無意識に引き上げます。しかし、この模範対話が示すように、「良い印象を持った瞬間こそ、あえて個人の行動を深掘りするタイミング」と捉えることで、ハロー効果に流されない見極めが可能になります。

肩書きに反応した自分に気づき、その印象を検証する質問を投げかける——この一手間が、面接の精度を大きく変えます。

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田中 和義

田中 和義

株式会社エス・シー・ラボ 代表。人材ビジネス業界34年以上、営業・営業マネージャー経験25年以上。この6年間、面接官トレーニングのセミナー・企業研修を日本全国で展開し、年間170回以上の企業研修・講演を行う実践派講師。2,000人以上の面接官・経営者へのトレーニング実績を持つ。著書『採用を成功に導く面接官超入門 失敗しない見極め&動機づけの実践スキル』好評発売中。Amazonで購入する 楽天ブックスで購入する