営業は、才能やセンスだけで決まる仕事ではありません。それなのに、ビギナー時代に「営業の基本(型)」を学ばないまま現場に出てしまうと、行動の多くが無駄なことに費やされ、やがて理屈抜きの気合と根性論だけを語る営業になってしまいます。そして、売れれば「ラッキー」、売れなければ「アンラッキー」と受け止めるようになる——。この記事では、なぜビギナー時代に営業の「型」を学ぶことが重要なのかを、私が研修で使っているテキストの内容も交えて解説します。
この記事でわかること
- 「型」を学ばない営業が陥る、3つの状態
- 営業の「型」とは何か——お客様の心理に沿ったプロセス
- 気合だけでは成果が出ない理由——営業成果の方程式
- 型を知っていると、売れても売れなくても成長できる
- ビギナー時代に学ぶべき理由
- 型は、ロールプレイングで身につける
- 自社の営業教育、点検してみませんか
「型」を学ばない営業が陥る、3つの状態
営業の基本を体系的に学ばないまま現場に出ると、次の3つの状態に陥りやすくなります。
特に3つ目が深刻です。結果を運で説明している限り、次に同じ成果を出すことができません。成功も失敗も「再現できない」まま、経験だけが積み上がっていくことになります。
営業の「型」とは何か——お客様の心理に沿ったプロセス
ここでいう「型」とは、決まったセールストークを丸暗記することではありません。お客様の心理が、どのように変化していくのかを理解し、それぞれの段階に合った関わり方をするということです。
お客様の心理は、次のような段階を経て変化していきます。
この流れを知らない営業は、まだ警戒しているお客様に、いきなり商品説明を始めてしまいます。お客様の心理がどの段階にあるのかを観察し、それに合わせて話し、質問する——これが営業の「型」の核心です。
気合だけでは成果が出ない理由——営業成果の方程式
営業の成果は、次のように整理できます。
営業成果 = 能力 × 行動量
能力 = マインド(意識)× ナレッジ(知識)× スキル(技術)
気合と根性論は、この式の中の「行動量」だけを増やそうとする考え方です。しかし、掛け算である以上、能力が低いままでは、行動量を増やしても成果は大きくなりません。
お客様本位のマインドが弱ければ、スキルが高くても成果は低くなります。そして、どれかが「0」であれば、すべてが「0」になるのが掛け算の怖さです。ビギナー時代に、マインド・ナレッジ・スキルを学ばないまま行動量だけを積み上げても、成果に結びつきにくいのはこのためです。
一方で、能力が伴っていれば、行動が成果につながり、成功体験が増え、それが自信につながるという好循環が生まれます。型を学ぶことは、この好循環の入り口なのです。
型を知っていると、売れても売れなくても成長できる
型を学んでいる営業と、そうでない営業の最大の違いは、結果の「受け止め方」に表れます。
たとえば、初回訪問の最初の5分間にも、明確な型があります。
初回訪問・最初の5分の型
①名刺交換・あいさつ(笑顔・視線・所作で好印象を与える)
②雑談(共通点を見つけて、警戒心を解く)
③ニーズの投げかけ・成功事例の紹介(興味を持っていただく)
④ヒアリングの許可をいただく(売り込みに入らず、課題を聞かせていただく)
そして初回訪問のゴールは、無理に売ることではなく、お客様の課題をお聞きして、「次の機会」をいただくことです。この型を知っていれば、初回で売れなくても「ゴールは達成できた」と判断でき、焦って無理な売り込みをすることもなくなります。
ビギナー時代に学ぶべき理由
型は、いつ学んでもいいものですが、特に「ビギナー時代」に学ぶことには、大きな意味があります。
営業の「売れない特徴」として、「売れない営業ほどよくしゃべる」「ヒアリングができていない」「売りたい気持ちが出過ぎている」といったものが挙げられますが、これらはまさに、型を知らないことから生まれる行動です。
型は、ロールプレイングで身につける
型は、知識として知っているだけでは使えません。実際に声に出して、体で覚えて初めて、お客様の前で使えるようになります。私が担当する営業力養成研修(入門編)では、最後に、次のようなロールプレイングを行います。
通しロープレ「初回訪問の最初の5分」
・3人1組(営業役・お客様役・観察者)で役割を交代しながら実施
・1回5分のロールプレイ+3分のフィードバック
・名刺交換からヒアリングの許可をいただくところまでを、通して演じる
観察者がチェックシートを使って、印象力・雑談力・動機づけ力を客観的に評価することで、自分では気づけない癖や改善点が見えてきます。座学で理解した型が、「できる」に変わる瞬間です。
自社の営業教育、点検してみませんか
ここまで読んで、「自社の若手営業は大丈夫だろうか」と感じた方は、次の項目をチェックしてみてください。
☑ 営業教育セルフチェック
□ 先輩の「見よう見まね」で、営業のやり方を覚えさせている
□ 指導の中心が、「気合が足りない」「もっと訪問しろ」になっている
□ 若手が、受注できた理由・失注した理由を自分の言葉で説明できない
□ 営業担当者によって、成果のばらつきが大きい
□ 異動してきた社員に、営業の基本を教える仕組みがない
1つでも当てはまる場合は、「型」を教える研修の導入を検討するタイミングかもしれません。貴社の状況に合わせた進め方を、お気軽にご相談ください。
営業力養成研修(入門編)のご紹介
本記事の内容は、私が新人営業担当者に研修を行う際に使用している「営業力養成研修(入門編)」のテキストをベースにしています。この研修では、営業マナー・顧客満足・アプローチ手法を学びます。
研修内容の詳細や、貴社の状況に合わせた進め方については、お問い合わせフォームからご相談ください。
まとめ:型は、気合を「成果」に変える土台になる
営業の基本(型)をビギナー時代に学ばないと、行動は無駄に使われ、理屈なしの気合と根性論に頼り、結果を「ラッキー」「アンラッキー」で片づけるようになってしまいます。
逆に、お客様の心理に沿った型を学んでいれば、売れた理由も売れなかった理由も説明でき、経験のたびに力が磨かれていきます。気合を否定する必要はありません。型という土台があって初めて、気合が成果に変わるのです。
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田中 和義
株式会社エス・シー・ラボ 代表取締役。一般社団法人日本能率協会 JMAマネジメントスクール専任講師。人材ビジネス歴33年、営業経験30年、管理職(営業所長〜取締役)経験25年。リクルートグループ2社でトップセールスの殿堂入り。2020年以降、2,000人以上の人事採用担当者に「面接官トレーニング」を指導。営業力・コミュニケーション・ハラスメント防止などの研修・講演を、全国の企業で行っている。著書『採用を成功に導く面接官超入門』(メイツ出版)。研修・講演のご相談はこちら