面接官トレーニングの研修で、よくこんな質問をいただきます。「メンタルに弱い人を見抜く質問を教えてほしい」——採用後にストレスで早期離職・休職してしまうケースを防ぎたいという、切実な思いからの質問です。しかし、候補者の病歴やメンタルヘルスの状態を、面接で直接聞くことは禁じられています。この記事では、なぜそれが禁じられているのか、そして本当に確認すべきことは何かを整理します。
この記事でわかること
- 研修でよく聞かれる「メンタルの弱さを見抜きたい」という質問
- なぜ健康状態・病歴を聞くことが禁じられているのか
- 面接で聞いてはいけない質問・避けるべき推測
- 適性検査の使い方にも、同じ注意が必要
- 本当に確認すべきは「メンタルの強さ」ではない
- 見極めるべきは「ストレス耐性」——次の記事へ
研修でよく聞かれる「メンタルの弱さを見抜きたい」という質問
面接官トレーニングの研修を行うと、こうした質問を非常によくいただきます。
「採用後にすぐ休職してしまう人を、事前に見分ける方法はありますか」
入社後の早期離職・休職は、企業にとって大きな損失です。この質問の背景には、「同じような採用ミスマッチを繰り返したくない」という、切実な思いがあります。しかし、この質問には、はっきりとお伝えしなければならないことがあります。
なぜ健康状態・病歴を聞くことが禁じられているのか
採用選考において、健康状態や病歴を理由に採否を判断することは、就職差別につながる行為として、厚生労働省が明確に禁止しています。
採用選考は、本来「本人の適性・能力」だけを基準に行われるべきものです。健康状態は、本人の適性・能力とは別のプライバシー情報であり、これを基準にした選考は、本人にはどうにもできない事情による排除、つまり差別に直結します。「メンタルが弱そうだから採用しない」という判断は、この原則に真っ向から反します。
面接で聞いてはいけない質問・避けるべき推測
通院歴・既往歴・服薬の有無を尋ねる質問
「メンタルクリニックに通ったことはありますか」といった直接的な質問
「ストレスに弱そうに見えるが」といった、外見や印象からの決めつけ発言
家族の病歴・健康状態に関する質問
適性検査の結果だけを根拠に、健康状態を推測して不採用にすること
これらは、候補者の能力とは無関係な情報であり、面接・選考の場に持ち込むべきではありません。「見抜きたい」という動機がどれだけ切実であっても、方法として許されないものは許されません。
適性検査の使い方にも、同じ注意が必要
適性検査のパーソナリティ項目についても、同じ原則が当てはまります。適性検査は、あくまで「業務適性・行動特性の傾向を知る参考情報」であり、「メンタルヘルスの状態を診断・推測するためのツール」ではありません。
「情緒安定性が低いから、メンタルが弱いはずだ」というように、パーソナリティ項目のスコアから健康状態を推測し、選考基準に用いることは、間接的な健康差別につながるリスクがあります。適性検査の結果は、あくまで「行動特性の傾向」として、業務適性の参考にとどめる必要があります。
本当に確認すべきは「メンタルの強さ」ではない
ここで、大切な視点の転換があります。企業が本当に知りたいのは、「メンタルが強いか弱いか」という漠然とした特性ではなく、「実際の業務の中で、困難やプレッシャーにどう対処してきたか」という、具体的な行動特性のはずです。
これは、健康状態を推測することとはまったく別の、正当な採用基準です。「ストレス耐性」「困難への対処力」という行動特性であれば、過去の具体的な経験・行動を通して、公正に確認することができます。
見極めるべきは「ストレス耐性」——次の記事へ
「メンタルの弱さを見抜きたい」という思いの根っこにあるのは、「困難な状況でも、粘り強く業務に取り組める人材かどうかを確認したい」という、企業にとって正当なニーズです。しかし、その確認方法は、健康状態の推測ではなく、行動質問による「ストレス耐性・困難への対処力」の確認でなければなりません。
次の記事では、この「ストレス耐性・困難への対処力を見極める、具体的な行動質問」について、詳しく解説します。
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田中 和義
株式会社エス・シー・ラボ 代表。人材ビジネス業界35年以上、管理職経験25年以上。この6年間、面接官トレーニングのセミナー・企業研修を日本全国で展開し、年間170回以上の企業研修・講演を行う実践派講師。2,000人以上の面接官・経営者へのトレーニング実績を持つ。著書『採用を成功に導く面接官超入門 失敗しない見極め&動機づけの実践スキル』好評発売中。