「自分のサポートを進んでしてくれるメンバーや、業績面で大きな貢献をしてくれるメンバーとは、ありがたさもあって、自然とコミュニケーションを取る頻度が高くなる。しかし、目立たなくても頑張っている他のメンバーを放っておくわけにもいかない」——これは、私自身が管理職として実際に感じてきた悩みでもあります。メンバー全員を「平等」に扱うことは、現実的にとても難しいのです。この記事では、部下への関わり方の差に悩む管理職に向けて、「贔屓」と思われないマネジメントの考え方を解説します。

この記事でわかること

  1. 「全員を平等に」が、なぜ現実的に難しいのか
  2. 「平等」と「公平」の違い——マネジメントで目指すべきはどちらか
  3. 関わりの「頻度」が偏っても、贔屓と思われないためのポイント
  4. 目立たないメンバーへの、具体的な関わり方
  5. 貢献してくれるメンバーへの感謝を、適切に伝える
  6. 「差」を「贔屓」にしないための、日頃の仕組み

「全員を平等に」が、なぜ現実的に難しいのか

管理職になると、多くの人が「部下全員に平等に接しなければ」というプレッシャーを感じます。しかし、実際にマネジメントをしていると、こんな現実に直面します。

困ったときにすぐ相談してくれるメンバー、頼んだ仕事を確実にこなしてくれるメンバーとは、日々のやり取りの中で自然と会話が増えていく。

一方で、黙々と自分の仕事をこなし、こちらから声をかけない限りほとんど会話が発生しないメンバーもいる。

意識してその差を埋めようとしても、実際の業務の中では、どうしても関わりの多いメンバーに時間が偏ってしまう。

これは私自身が管理職として感じてきた、正直な実感でもあります。「関わる頻度」も「かける言葉の量」も、完全に均等にすることは、現実的にほぼ不可能です。むしろ、この現実を認めないまま「平等に接しなければ」と自分を追い込むことの方が、マネジメントを苦しくしています。


「平等」と「公平」の違い——マネジメントで目指すべきはどちらか

この悩みを整理する鍵となるのが、「平等(イコール)」と「公平(フェア)」の違いです。

平等(イコール) 公平(フェア)
全員に「同じ量・同じ頻度」で接すること それぞれの状況・貢献・必要性に応じて、適切に対応すること
現実的に達成が難しい 一貫した基準があれば実現できる

マネジメントで本当に目指すべきは、「平等」ではなく「公平」です。関わる頻度や内容に差があっても、「なぜその差があるのか」を一貫した基準で説明できる状態であれば、それは贔屓ではなく、適切なマネジメントとして成立します。


関わりの「頻度」が偏っても、贔屓と思われないためのポイント

1on1などの「意図的な機会」だけは、全員に均等に確保する
日常のやり取りに差が出るのは自然なことですが、定期的な1on1のような「意図的に作る機会」だけは、全メンバーに平等に確保します。
評価は「関わりの頻度」ではなく「行動・成果の事実」で行う
よく話す部下の評価が高くなる、という状態を避けるため、評価の根拠は必ず客観的な行動・成果の事実に基づかせます。
チーム全体が見ている場での対応に注意する
個別の1on1での違いは目立ちませんが、会議など全員が見ている場での態度に差が出ると、贔屓として強く印象づけられます。

目立たないメンバーへの、具体的な関わり方

「頑張っているのに、あまり声をかけられていない」メンバーには、意識的な工夫が必要です。

目立たないメンバーへの工夫

・1on1では、業務進捗だけでなく、本人の考え・悩みを聴く時間を意識的に確保する
・小さな成果・工夫にも気づいたら、その場ですぐ言葉にして伝える
・「あなたの仕事ぶりを見ています」というメッセージを、機会があるごとに伝える
・チームの前で、目立たない貢献を意図的に紹介する場を作る

目立たないメンバーほど、「自分は見てもらえていない」という感覚を抱きやすいものです。声をかける頻度そのものより、「気にかけている」という事実が伝わっているかどうかが重要です。


貢献してくれるメンバーへの感謝を、適切に伝える

サポートしてくれるメンバー、業績で貢献してくれるメンバーへの感謝を伝えること自体は、まったく問題ありません。むしろ、感謝を伝えないことの方が問題です。大切なのは、その感謝の伝え方です。

「いつも助かっています」という感謝は、個別に、他のメンバーの前ではなく1対1の場で伝えることをおすすめします。全員の前で特定のメンバーばかりを称賛し続けると、他のメンバーが疎外感を持ちやすくなります。


「差」を「贔屓」にしないための、日頃の仕組み

関わり方に自然な差が生まれること自体は避けられません。大切なのは、その差が「贔屓」ではなく「公平な結果」として見えるようにする仕組みを持つことです。

  • 評価基準を全員に明示しておく
    「何を評価するか」が明確であれば、関わりの頻度が違っても、評価結果への納得感は保たれます。
  • 定期的に、全メンバーとの接点を振り返る
    月に一度など、「最近あまり話せていないメンバーはいないか」を意識的に振り返る時間を持ちます。
  • 自分の中の「無意識の偏り」を自覚する
    話しやすい相手・気が合う相手と自然に多く関わってしまうのは、誰にでもある傾向です。まず自覚することが、偏りを調整する第一歩になります。

まとめ:目指すのは「平等」ではなく「公平」

サポートしてくれるメンバー、業績に貢献してくれるメンバーとの関わりが自然と増えることは、決して悪いことではありません。それを完全になくそうとするより、「なぜその差があるのか」を自分自身が説明できる状態を保つことが、贔屓と公平なマネジメントの分かれ目です。

全員に同じ関わりを提供する「平等」ではなく、それぞれに応じた適切な関わりを提供する「公平」を目指すこと——これが、複数の部下を持つ管理職にとって、現実的で持続可能なマネジメントの形です。

📚 若手管理職・リーダーのコミュニケーション悩みシリーズ

第1回:年上部下の扱い方に困っていませんか——年下上司が使える指示・注意の技術
第2回:1on1で部下が話さない——問いかけても口を開かない部下の心理と対応法
第3回:Z世代・若手部下が何を考えているかわからない——戸惑う上司のための理解と対応法
第4回:チャットでは饒舌なのに、対面だと本音を話さない若手部下——このギャップの正体と向き合い方
第5回:叱れない上司の悩み——「パワハラと言われないか」と不安な方への正しい叱り方
第6回:フィードバックすると部下が落ち込む——伝え方を変えると何が変わるか
第7回:部下への関わり方の差に悩んでいませんか——「贔屓」と思われないマネジメントの技術(本記事)


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田中 和義

田中 和義

株式会社エス・シー・ラボ 代表。人材ビジネス業界35年以上、管理職経験25年以上。年間170回以上の企業研修・講演を行う実践派講師。管理能力養成・コミュニケーション・傾聴力・ハラスメント防止・面接官トレーニングを中心に、現場で使えるスキルの習得を支援している。