「チャットではあんなにたくさん話すのに、面と向かうと急に無口になる」——コミュニケーション研修を行うと、非常によく出てくる悩みです。日頃のチャットでは絵文字も使い、冗談も飛ばし、報告も丁寧にこなす部下が、対面の1on1になった途端に「特にありません」の一言で終わってしまう——この記事では、このギャップがなぜ生まれるのか、そして対面でも本音を引き出すための関わり方を解説します。
この記事でわかること
- 研修でよく出てくる「チャットと対面のギャップ」という悩み
- なぜチャットでは話せて、対面では話せないのか
- 「話せない」のではなく「対面という形式が苦手」という視点
- 対面でも本音を引き出すための、場の作り方
- チャットの強みを、対面のコミュニケーションに応用する
- 「形式に合わせる」という上司側の柔軟性
研修でよく出てくる「チャットと対面のギャップ」という悩み
コミュニケーション研修を行うと、管理職・リーダーの方々から、こうした戸惑いの声がよく聞かれます。
「テキストだと的確な意見を言えるのに、会議では一言も発言しません」
「1on1で対面すると『特にありません』ばかりで、チャットの様子とまるで別人です」
この落差に戸惑う上司は少なくありません。「対面の方が、より深く本音が話せるはずだ」という上の世代の前提が、若手部下の実態とズレていることが、この悩みの根底にあります。
なぜチャットでは話せて、対面では話せないのか
「話せない」のではなく「対面という形式が苦手」という視点
ここで重要な視点の転換があります。「本音を話してくれない」のではなく、「対面という形式が、その部下にとって話しやすい形式ではない」だけかもしれません。
上の世代にとって「対面での会話」は最も自然なコミュニケーション手段ですが、これは上の世代が対面での会話を通じて育ってきたからこそ、そう感じているだけです。若手部下にとっては、テキストの方が「素の自分を表現しやすい形式」であることが十分にあり得ます。
「対面で話せる=信頼している」「チャットでしか話せない=距離がある」という前提そのものを、一度手放してみることが大切です。
対面でも本音を引き出すための、場の作り方
①事前に「お題」を伝えておく
1on1の直前にいきなり質問するのではなく、「次回の1on1では〇〇について聞きたいので、考えておいてください」と事前に伝えます。チャットで得意な「考える時間」を、対面の場にも用意してあげることになります。
②正面から向き合わない配置にする
対面での「見つめ合う」配置は、想像以上にプレッシャーになります。斜めに座る、並んで歩きながら話すなど、視線が正面からぶつからない環境を作るだけで、話しやすさが変わります。
③「言い直していい」ことを伝える
「うまく言葉にならなくても大丈夫です。後で言い直してもいいですよ」と最初に伝えるだけで、「一度言ったら取り消せない」という対面特有の緊張感を和らげられます。
④沈黙を急かさない
対面で考える時間が必要な部下には、質問した後、焦らず数秒〜十数秒待つことを徹底します。急かされていると感じると、ますます言葉が出にくくなります。
チャットの強みを、対面のコミュニケーションに応用する
チャットで部下が饒舌になる理由には、対面のコミュニケーションにも応用できるヒントがあります。
チャットの強みを対面に取り入れる工夫
・1on1の前に、話したいことをメモやチャットで先に送ってもらう
・対面の会話の中でも「今の内容、後でテキストでも構いません」と補足の余地を残す
・1回の1on1で結論を出そうとせず、「続きは次回でも大丈夫」という余白を作る
・対面が苦手な部下には、あえて1on1の一部をチャットでのやり取りに置き換えることも検討する
「対面がすべて」という固定観念を外し、チャットと対面をハイブリッドで使うことで、部下にとって最も話しやすい形式を選べるようになります。
「形式に合わせる」という上司側の柔軟性
「対面で本音を話せるようになってほしい」という思いは自然なものですが、それを目標にしすぎると、部下にとってのプレッシャーが増えるだけになりかねません。
部下を対面に合わせるのではなく、
上司が部下の得意な形式に合わせる。
この発想の転換が、結果として部下の本音を引き出す近道になります。すべての人が同じコミュニケーション形式を得意としているわけではないという前提に立つことで、上司の関わり方の選択肢は大きく広がります。
まとめ:話す場所が変われば、話し方も変わる
「チャットでは饒舌なのに、対面では本音を話さない」——この現象は、部下の誠実さや信頼の問題ではなく、「考える時間」「修正できる余地」「非言語的なプレッシャーの有無」という、コミュニケーション形式そのものの違いから生まれています。
対面という形式にこだわらず、部下が話しやすい形式に上司側が歩み寄ること——これが、若手部下の本音を引き出すための、最も現実的で効果的なアプローチです。
📚 若手管理職・リーダーのコミュニケーション悩みシリーズ
第1回:年上部下の扱い方に困っていませんか——年下上司が使える指示・注意の技術
第2回:1on1で部下が話さない——問いかけても口を開かない部下の心理と対応法
第3回:Z世代・若手部下が何を考えているかわからない——戸惑う上司のための理解と対応法
第4回:チャットでは饒舌なのに、対面だと本音を話さない若手部下——このギャップの正体と向き合い方(本記事)
若手部下とのコミュニケーションを組織で高めたい方へ
Z世代マネジメント研修・コミュニケーション研修の導入、個人での動画学習、無料相談など、目的に合わせてご活用ください。
田中 和義
株式会社エス・シー・ラボ 代表。人材ビジネス業界35年以上、管理職経験25年以上。年間170回以上の企業研修・講演を行う実践派講師。Z世代マネジメント・傾聴力・コミュニケーション・面接官トレーニング・ハラスメント防止を中心に、現場で使えるスキルの習得を支援している。