前回の記事では、職場のコミュニケーションを妨げる「世代」「年齢・経験」「ポジション」という3つの壁について解説しました。この壁を越えるために必要なのが、正しい「聴き方」と「伝え方」の技術です。この記事では、相互理解と信頼関係を築くための、具体的な聴き方・伝え方の型をご紹介します。

この記事でわかること

  1. 聴き方の基本——「聴」という字が教えてくれること
  2. 態度で示す5つのポイントと、アクティブリスニング実践テクニック8選
  3. 伝え方の基本①——結論から話す「PREP法」「SDS法」
  4. 伝え方の基本②——叱る・注意するときの「アイメッセージ」
  5. なぜ「聴く」ことが人間関係を好転させるのか
  6. まとめ:聴く7割、話す3割が信頼関係の第一歩

聴き方の基本——「聴」という字が教えてくれること

「聴く」という漢字をよく見てみてください。この字は、耳・目・心という3つの要素からできています。

言葉だけでなく、表情や声のトーンも含めて、相手の気持ちを受け止めること——これが「聴く」という字が本来教えてくれていることです。単に音として耳に入れるだけの「聞く」とは、まったく違う姿勢が求められます。


態度で示す5つのポイントと、アクティブリスニング実践テクニック8選

「ちゃんと聴いている」ということは、態度で相手に伝えなければ、相手には届きません。まずは基本の5つのポイントです。

相槌

「はい」「なるほど」

うなずき

動作で反応を示す

視線

相手の方を見て聴く

共感

気持ちに寄り添う

要約

話の内容を確認する

これらをさらに実践レベルに落とし込んだものが、アクティブリスニング実践テクニック8選です。

①アイコンタクトを保つ ②うなずきながら聴く ③相槌を打つ
④相手の言葉を繰り返す ⑤要約して確認する ⑥オープンクエスチョンで聞く
⑦沈黙を恐れず間を待つ ⑧評価せずにまず受け止める

特に⑦「沈黙を恐れず間を待つ」は見落とされがちですが、非常に重要です。相手が言葉を探している間に、こちらが焦って話し始めてしまうと、相手の本音を引き出す機会を失ってしまいます。


伝え方の基本①——結論から話す「PREP法」「SDS法」

世代・立場が違う相手ほど、結論ファーストで伝えることが重要です。ここでは、実務ですぐ使える2つの型をご紹介します。

PREP法——Point→Reason→Example→Point

P
結論——まず結論から話す
R
理由——なぜなら、と理由を添える
E
具体例——実際の事例を挙げる
P
結論——だからこそ、と結論を繰り返す
例:上司への提案トーク
P「A社ブースへの出展をおすすめします」
R「来場者層が、当社のターゲットと重なるためです」
E「昨年出展した企業は、商談数が150%に伸びています」
P「ですので、今回もA社ブースをおすすめします」

SDS法——もっと簡単な型(Summary→Details→Summary)

S
要点——まず話の要点を伝える
D
詳細——要点について詳しく説明する
S
要点——最後に要点を繰り返す
例:進捗の報告トーク
S「A社案件の進捗について、ご報告します」
D「先週担当者と打ち合わせを行い、契約書の最終確認を進めています。価格面の懸念点もクリアになりました」
S「以上、A社案件は来月の導入に向けて順調です」

PREP法は「提案・説得」の場面に、SDS法は「報告・共有」の場面に、それぞれ向いています。場面によって使い分けてみてください。


伝え方の基本②——叱る・注意するときの「アイメッセージ」

「あなたは~」ではなく、「私は~」で伝える——これがアイメッセージです。特に叱る・注意するときほど、この違いが相手の受け止め方を大きく変えます。

あなたメッセージ アイメッセージ
「あなたは、いつも遅刻ばかりだ」
→相手は責められていると感じやすい
「私は、遅刻が続くと心配になる」
→相手は素直に受け止めやすい

「あなたは」で始まる言葉は、相手を主語にした評価・断定になりがちです。一方、「私は」で始まる言葉は、自分がどう感じたかという事実を伝えるだけなので、相手を追い詰めません。


なぜ「聴く」ことが人間関係を好転させるのか

ここまでの技術を支える、心理学的な裏づけも見ておきましょう。

承認欲求
マズローの欲求5段階説における第4段階「承認欲求」は、話を聞いてもらえたときに最も満たされるとされています。だからこそ、話を聴いてくれる相手への好感度が上がります。
ドーパミン
ハーバード大学が400人を対象に行った実験では、話を聞いてもらえると脳が快楽を感じることが確認されています。だからこそ、聴いてもらう経験は「信頼」という心理につながります。

聴く7 : 話す3

職場の人間関係も、まずお互いに相手の話を聴くことに努めると好転する


まとめ:聴く7割、話す3割が信頼関係の第一歩

聴き方のポイント

「聴く」は、耳・目・心で相手を受け止めること
相槌・うなずき・視線・共感・要約で、態度を示す
オープンクエスチョンで話を引き出し、沈黙を恐れず相手の言葉を待つ
評価せず、まず受け止める

伝え方のポイント

結論から話す(PREP法・SDS法)——世代・立場が違う相手ほど、結論ファーストが伝わる
叱る・注意するときほど、アイメッセージで伝える

聴く7割、話す3割——これが信頼関係の第一歩です。次の記事では、今日から職場で実践できる、さらに小さな具体的なアクションをご紹介します。

📚 このテーマは全3回シリーズでお届けします

第1回:部下に伝わらない本当の理由——世代・年齢・ポジションで変わるコミュニケーションの壁
第2回:【保存版】PREP法・SDS法・アイメッセージ——今日から使える聴き方・伝え方の全技術(本記事)
第3回:挨拶、感謝、声かけ——今日からできる職場を円滑にする3つの小さな実践


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田中 和義

田中 和義

株式会社エス・シー・ラボ 代表。人材ビジネス業界34年以上、営業・営業マネージャー経験25年以上。年間170回以上の企業研修・講演を行う実践派講師。世代間・役職間のコミュニケーション研修、面接官トレーニング、ハラスメント防止、提案営業力強化を中心に、現場で使えるスキルの習得を支援している。著書『採用を成功に導く面接官超入門 失敗しない見極め&動機づけの実践スキル』好評発売中。Amazonで購入する 楽天ブックスで購入する