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これからも現場で本当に役立つ内容をお届けしてまいります。
「人格ではなく、行動にフォーカスして叱りましょう」——ハラスメント防止の研修では、よくこう説明されます。しかし、こう感じたことはないでしょうか。「自分自身が、新人時代に『だからお前はダメなんだ』と人格を否定される叱られ方しかされてこなかった。そんな自分に、果たして行動にフォーカスした正しい叱り方ができるのだろうか」と。この記事では、この率直な疑問に、正面から向き合います。
この記事でわかること
- なぜ「受けた叱られ方」がそのまま出てしまうのか
- 知識だけでは変われない、本当の理由
- それでも変われる——習慣は上書きできる
- 正しい叱り方を身につける5つのステップ
- 「変わろうとしている」こと自体に価値がある
なぜ「受けた叱られ方」がそのまま出てしまうのか
「人格ではなく行動にフォーカスして叱りましょう」——この考え方は、ハラスメント防止の基本として広く知られています。しかし、実際の現場でこの通りに叱れる人は、決して多くありません。
特に、自分自身が新人時代に「だからお前はダメだ」「お前がしっかりしないとダメじゃないか」という、人格に踏み込む叱られ方をしてきた人にとって、これは簡単なことではありません。
人は、叱り方を「理論」としてではなく、「体で覚えた型」として身につけます。特に感情が高ぶる瞬間——部下のミスに直面したとき——には、冷静に考える余裕がなくなり、最も慣れ親しんだパターン、つまり自分が受けてきたパターンが、無意識のうちに出てしまうのです。
これは「ロールモデリング」と呼ばれる現象です。本人が意図してそうしているわけではなく、体に染みついた反射に近いもの——だからこそ、「行動にフォーカスしましょう」という知識だけを研修で伝えても、いざ実際の場面になると、育ってきた叱られ方がそのまま出てしまう人は少なくありません。
知識だけでは変われない、本当の理由
研修を受けて、「行動にフォーカスする」という考え方に頭では納得する。それでも、実際の場面になると、つい「なんでできないんだ」「前も同じことを言ったよな」という、人格に触れる言葉が口をついて出てしまう——こうした経験を持つ管理職は、少なくありません。
知識と実践の間には、大きな溝があります。これは決して、その人の意志が弱いからでも、努力が足りないからでもありません。長年かけて体に染み込んだ「型」は、一度知識を得ただけでは書き換わらないのです。
それでも変われる——習慣は上書きできる
ここで、大切なことをお伝えします。人格否定型の叱られ方しか経験していないことは、「性格」ではなく「習慣化されたパターン」です。そして習慣は、正しい方法で繰り返せば、必ず上書きできます。
「自分はそういう叱られ方しか知らないから、正しく叱れないのは仕方ない」——これは、決して結論ではありません。むしろ、自分のパターンに気づいた時点で、変わるための最初の一歩はもう踏み出せています。
正しい叱り方を身につける5つのステップ
①まず自分のパターンを自覚する
「自分は新人時代、人格を否定される叱られ方をしてきた」という事実を、まず本人が言葉にして認識することが出発点です。無自覚のままでは、変えようがありません。「自分の中に、そういうパターンがあるかもしれない」と気づくこと自体が、大きな一歩です。
②感情的になった瞬間に頼れる「型」を用意しておく
とっさに正しい言葉を選ぶのは、誰にとっても難しいことです。だからこそ、「事実を伝える→影響を伝える→改善策を一緒に考える」という固定の順番を、あらかじめ決めておきます。感情が高ぶっているときほど、自分のその場の判断力ではなく、決めておいた「型」に頼る方が確実です。
③一呼吸置く習慣をつける
叱りたくなった瞬間、その場ですぐに言葉にせず、「少し時間をください」と一度立ち止まる練習をします。この数秒の間が、反射的に出てしまう人格否定の言葉を止める、最後の砦になります。
④ロールプレイで、新しい叱り方を体に覚えさせる
知識としてではなく、実際に声に出して練習することで、初めて「型」が体になじみます。研修でロールプレイを重視するのは、まさにこの理由からです。頭でわかっていることと、口から自然に出てくることの間には、練習という橋が必要です。
⑤叱った後、自分の言葉を振り返る
「今回、人格に触れる言葉を使わなかったか」を、叱った後に毎回振り返る習慣を持ちます。この振り返りを積み重ねることで、少しずつ、しかし確実にパターンが上書きされていきます。
「変わろうとしている」こと自体に価値がある
人格否定型の叱られ方しか知らずに育ってきた人が、その連鎖を断ち切り、行動にフォーカスした正しい叱り方を身につけようとすること——これ自体が、非常に価値のある取り組みです。
受けてきた叱られ方を、
そのまま次の世代に渡さない。
この意識を持って、意図的に学び直そうとしていること自体が、すでに大きな一歩です。完璧である必要はありません。時に古いパターンが顔を出してしまうこともあるでしょう。それでも、気づいて、振り返って、また少しずつ修正していく——このプロセスを続けることが、確実な変化につながります。
まとめ:叱り方は、面接と同じく「センスではなくスキル」
私はいつも「面接はセンスではなく、知識とスキルであり、トレーニングによってうまくなるものだ」とお伝えしていますが、これは叱り方についても、まったく同じだと思っています。
自分が人格否定型の叱られ方しか経験していなくても、正しい叱り方は後天的に習得可能です。ただし、「知っている」と「できる」の間には距離があり、その距離を埋めるのは、意識的な自覚・型への依存・反復練習です。
これまで100本のブログを通してお伝えしてきた内容も、根っこにあるのは同じ考え方です。「できないのは、あなたの問題ではなく、まだ正しい型を学び、練習していないだけ」——この視点を持って、これからも一つずつ、実践を積み重ねていってください。
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田中 和義
株式会社エス・シー・ラボ 代表。人材ビジネス業界35年以上、管理職経験25年以上。日本能率協会にて「効果的な叱り方セミナー」を継続的に担当し、年間170回以上の企業研修・講演を行う実践派講師。ハラスメント防止・コミュニケーション・面接官トレーニングを中心に、現場で使えるスキルの習得を支援している。著書『採用を成功に導く面接官超入門 失敗しない見極め&動機づけの実践スキル』好評発売中。Amazonで購入する 楽天ブックスで購入する