「AIで対策してきた学生かどうか、どう見抜けばいいですか」——最近、面接官トレーニングの研修で非常によく寄せられる質問です。生成AIを使えば、誰でも整った自己PR・志望動機を短時間で作れる時代になりました。エントリーシートのクオリティが全体的に上がり、判断が難しくなったという声も多く聞きます。この記事では、AIで事前対策してきた学生の話の真偽を、面接の場で見極めるための具体的なテクニックを解説します。
この記事でわかること
- 研修で急増する「AI対策への見抜き方」という相談
- AI対策とESクオリティ向上、何が起きているのか
- そもそも「AI対策」自体は問題なのか
- 本音と模範解答のギャップを確認する質問技術
- AI的な受け答えに見られる、いくつかの特徴
- 「見抜く」より「深掘りする」という発想の転換
研修で急増する「AI対策への見抜き方」という相談
私が行う面接官トレーニングの研修では、最近こうした相談が非常に多く寄せられます。
「エントリーシートのクオリティが全体的に上がって、以前より判断が難しくなりました」
生成AIが普及したことで、就職活動を行う学生の多くが、自己PR・志望動機・想定質問への回答を、AIに相談しながら準備する時代になりました。その結果、文章の完成度・論理的な構成力は、以前より格段に上がっています。これは面接官にとって、新しい課題です。
AI対策とESクオリティ向上、何が起きているのか
AIの活用によって起きている変化を整理すると、次のようになります。
これらの変化により、「文章の巧拙だけでは、候補者の実際の能力を判断できなくなっている」というのが、多くの面接官が直面している現実です。
そもそも「AI対策」自体は問題なのか
ここで一度立ち止まって考えたいのが、「AIで対策すること自体は、本当に問題なのか」という点です。
AIを使って自分の考えを整理したり、伝え方をブラッシュアップしたりすること自体は、今の時代のビジネススキルの一つとも言えます。実際、社会人になってからもAIを活用して資料作成やコミュニケーションを効率化する場面は増えていくでしょう。問題なのは「AI対策」ではなく、「自分の実際の経験・考えと乖離した、実体のない回答」を丸暗記していることです。
つまり面接官が本当に見極めるべきは、「AIを使ったかどうか」ではなく、「語られている内容が、その人自身の実体験・思考に基づいているかどうか」です。この視点の転換が、対策の第一歩になります。
本音と模範解答のギャップを確認する質問技術
整った回答の奥にある「実体験の有無」を確認するには、次のような質問が有効です。
AI的な受け答えに見られる、いくつかの特徴
すべてに当てはまるわけではありませんが、AIで生成された内容をそのまま暗記していると思われる回答には、次のような傾向が見られることがあります。
・「主体性を持って」「課題解決に取り組み」など、抽象度の高い表現が多い
・話の構成が整いすぎていて、感情の起伏や迷いが感じられない
・深掘り質問への回答が、最初の説明の言い換えにとどまり、新しい情報が出てこない
・「なぜそう考えたのですか」という問いに対して、答えるまでに不自然な間が生まれる
ただし、これらの特徴だけで「AI対策だ」と断定するのは早計です。緊張している、単に話し方が整理されているタイプである、という可能性も十分にあることを念頭に置いてください。
「見抜く」より「深掘りする」という発想の転換
ここで大切な視点があります。面接官が本当にやるべきことは、「AI対策を見抜くこと」自体を目的にすることではありません。
AI対策を「見抜く」のではなく、
どんな回答であっても
「深掘りする」ことに徹する。
これまでも面接官トレーニングで一貫してお伝えしてきたように、行動質問・深掘り質問を徹底することは、AI対策の有無にかかわらず、面接の本質です。「具体的にあなた自身は何をしましたか」「なぜそう判断したのですか」——この深掘りを徹底していれば、AIで用意された表面的な回答は、自然と底が見えてきます。
AI時代だからといって、特別な「見抜くテクニック」を新たに覚える必要はありません。これまで大切にしてきた深掘りの技術を、より一層丁寧に実践することこそが、最も確実な対応策です。
まとめ:本質は変わらない——深掘りの徹底がすべての答え
AIによってエントリーシートのクオリティが全体的に上がり、判断が難しくなったという声は、今後さらに増えていくでしょう。しかし、面接で見極めるべき本質は、AI以前も以後も変わりません。
五感を使った質問、具体的な数字を尋ねる質問、失敗談への深掘り、その場での言い換えを求める質問、感情を尋ねる質問——これらを通して、その人自身の実体験に基づいているかどうかを確認する。この地道な深掘りの積み重ねこそが、AI時代の面接官にとって最も確実な武器です。
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田中 和義
株式会社エス・シー・ラボ 代表。人材ビジネス業界35年以上、管理職経験25年以上。この6年間、面接官トレーニングのセミナー・企業研修を日本全国で展開し、年間170回以上の企業研修・講演を行う実践派講師。2,000人以上の面接官・経営者へのトレーニング実績を持つ。著書『採用を成功に導く面接官超入門 失敗しない見極め&動機づけの実践スキル』好評発売中。Amazonで購入する 楽天ブックスで購入する