「面接で候補者がうまく話してくれない」「答えが表面的すぎて人物像が見えない」「毎回同じ質問をしているのに採用後とのギャップが埋まらない」——そんな悩みを持つ面接官は少なくありません。その原因の多くは、質問の設計にあります。この記事では、候補者の本音を引き出すための質問の作り方を、具体例とともに解説します。
この記事でわかること
- なぜ候補者は「本音」を話さないのか
- 本音を引き出せない質問の典型パターン
- 本音を引き出す質問の3つの原則
- すぐ使える質問の具体例(シーン別)
- 面接官が陥りやすい3つの罠
- 質問の後に「聴く」ことの重要性
なぜ候補者は「本音」を話さないのか
面接の場で候補者が本音を話さない理由は、能力や誠実さの問題ではありません。面接という場の構造そのものが、本音を引き出しにくくしているのです。
候補者は面接の場で常にこう考えています。「この答えは評価されるか」「本当のことを言って落とされないか」「何を期待されているのかわからない」——つまり、「正解を探しながら話している」状態です。
重要な前提
優秀な候補者ほど、面接対策をしっかり行っています。つまり「準備された答え」を引き出しているだけでは、その人の本質は見えないのです。面接官の仕事は、準備された答えの「その先」を引き出すことです。
候補者が本音を話してくれるかどうかは、面接官の質問の設計と聴き方によって大きく変わります。「話してもらえる環境をつくるのは面接官の責任」という意識が、採用精度を高める第一歩です。
本音を引き出せない質問の典型パターン
まず、多くの面接官が無意識にやってしまっている「本音が出にくい質問」を確認しましょう。
1 「はい・いいえ」で終わるクローズド質問
NG例
「チームワークは得意ですか?」
「弊社に興味はありますか?」
「前職でリーダー経験はありましたか?」
これらは「はい」と答えれば終わってしまう質問です。候補者は当然「はい」と答え、その先の本音・背景・思考プロセスが見えません。
2 答えが透けて見える誘導質問
NG例
「弊社はチームワークを大切にしていますが、あなたもそういうタイプですよね?」
「困難なことがあっても諦めずに続けられる方ですよね?」
期待される答えが透けている質問には、候補者は必ず「はい」と答えます。面接官が聞きたい答えを自ら教えているようなものです。
3 抽象的すぎて答えにくい質問
NG例
「あなたの強みを教えてください」
「5年後はどうなっていたいですか?」
「仕事において大切にしていることは何ですか?」
これらは面接でよく使われる定番質問ですが、抽象度が高すぎるため候補者は事前に準備した「きれいな答え」を返してきます。その答えが実際の行動と一致しているかどうかは、この質問だけではわかりません。
本音を引き出す質問の3つの原則
1 「過去の具体的な経験」を聞く——行動事実質問(BEI)
最も信頼性の高い面接技法のひとつが行動事実質問(BEI:Behavioral Event Interview)です。「過去の行動は未来の行動を予測する」という考え方に基づき、実際に起きた具体的な出来事・行動・結果を聞くことで、候補者の本質的な思考パターン・行動特性を把握します。
抽象質問 → 行動事実質問への言い換え例
✗「チームワークは得意ですか?」
✓「これまでの仕事で、チームとして特に難しい状況に直面したのはどんな場面でしたか?そのときあなたはどう動きましたか?」
✗「困難なことがあっても諦めないタイプですか?」
✓「これまでの仕事で、最も壁にぶつかったのはどんな経験でしたか?そのときどう対処しましたか?」
「どんな状況でしたか?」「そのときあなたはどうしましたか?」「結果はどうなりましたか?」という状況・行動・結果の3点セットで深掘りすることで、準備された答えではなく実際の行動パターンが見えてきます。
ポイント:「どうですか?」より「どうでしたか?」——過去形で聞く
2 「なぜ」より「どのように」で深掘りする
候補者が答えた後の深掘りが、本音を引き出す最大のポイントです。しかし深掘りの言葉の選び方を間違えると、候補者は防衛的になってしまいます。
| 防衛的になる深掘り(NG) | 本音が出やすい深掘り(推奨) |
|---|---|
|
「なぜそう思ったんですか?」 「なぜその判断をしたんですか?」 「なぜうまくいかなかったんですか?」 |
「そのときどんなことを考えていましたか?」 「どのような判断でそうされたんですか?」 「どんな状況だったか、もう少し聞かせてもらえますか?」 |
「なぜ」は詰問・尋問のように聞こえやすく、候補者は自己弁護的な答えを返してきます。「どのように」「どんな」で問いかけることで、候補者は自然に思考・感情・行動を語り始めます。
ポイント:「なぜ」→「どのように・どんな」に言い換えるだけで話が変わる
3 「ネガティブな経験」を安全に聞く
候補者の本質・成長力・自己認識の深さは、失敗・挫折・葛藤の経験をどう語るかに最もよく表れます。しかし「失敗を教えてください」と直接聞くと、候補者は警戒して当たり障りのない答えを返します。
ネガティブ経験を安全に引き出す質問例
「これまでの仕事で、思い通りにいかなかった経験を教えてください。そのときどう対処しましたか?」
「仕事をする中で、自分が最も成長を感じた出来事はどんなことでしたか?」(失敗→成長に言い換え)
「これまで一番悔しかった経験は何ですか?今のあなたならどうしますか?」
「失敗」ではなく「思い通りにいかなかった」「成長した」という言葉に言い換えることで、候補者は安心して本音を話してくれます。そしてその経験の語り方——振り返り方、自己認識の深さ、改善への意欲——から多くのことが見えてきます。
ポイント:「失敗」→「思い通りにいかなかった」に言い換えると話しやすくなる
すぐ使える質問例——シーン別
以下は、実際の面接で使いやすい質問の具体例です。そのまま使うのではなく、候補者の答えに合わせて深掘りしていくことが大切です。
志望動機・入社意欲を確認したいとき
「弊社を知ったきっかけを教えてください。そこからどんなふうに関心が深まっていきましたか?」
「今回の転職で、会社を選ぶ際に最も重視していることは何ですか?その理由を聞かせてください」
「弊社でどんなことを実現したいと思っていますか?前職での経験とどうつながりますか?」
仕事への姿勢・価値観を確認したいとき
「これまでの仕事の中で、最もやりがいを感じた瞬間はどんなときでしたか?」
「仕事で自分の判断で動いたことで、うまくいった経験を教えてください。どんな状況で、どう考えて動きましたか?」
「上司や同僚と意見が合わなかったとき、どのように対処してきましたか?具体的に教えてください」
成長力・自己認識を確認したいとき
「これまでの仕事で、最も大きく成長できたと感じる経験を教えてください。なぜそれが成長につながったと思いますか?」
「自分の弱みや課題として認識していることは何ですか?それに対して今どのような取り組みをしていますか?」
「仕事で思い通りにいかなかった経験を一つ教えてください。今振り返って、何が原因だったと思いますか?」
対人関係・チームワークを確認したいとき
「これまでの職場で、特に一緒に働いてよかったと感じた人はどんな方でしたか?その理由を教えてください」
「チームで何かを成し遂げた経験を教えてください。そのときあなたはどんな役割を担い、どう貢献しましたか?」
「職場でコミュニケーションがうまくいかなかった経験はありますか?そのときどう対応しましたか?」
面接官が陥りやすい3つの罠
1 ハロー効果——第一印象に引きずられる
「第一印象が良かったから」「話し方が上手だから」という理由で評価が高くなるハロー効果は、面接官が最も陥りやすいバイアスです。印象の良さと仕事のパフォーマンスは必ずしも一致しません。印象ではなく、具体的な行動事実で評価することが重要です。
2 自分に似た人を高く評価する——類似性バイアス
自分と出身校・出身地・趣味・価値観が似ている候補者を無意識に高く評価してしまうバイアスです。「自分に似ている=優秀」ではありません。採用基準に照らして評価することを意識的に行う必要があります。
3 面接官が話しすぎる——会社説明・自社アピールに終始する
特に採用難の時代に多いのが、「候補者に選んでもらおう」と面接官が話しすぎてしまうパターンです。面接の目的は「見極め」と「動機づけ」の両方です。話す割合は候補者7:面接官3を目安にすることで、候補者の情報を十分に引き出せます。
質問の後に「聴く」ことが最も重要
どんなに優れた質問を用意しても、答えを「聴く」姿勢がなければ意味がありません。候補者は面接官の聴き方を敏感に感じ取っています。
-
話し終わるまで遮らない
途中で「つまりこういうことですね?」と先読みしない。候補者が言葉を整理しながら話している途中に割り込むと、その先の本音が出てこなくなります。 -
メモを取りながらも「聴いている」を伝える
メモに集中しすぎて視線が下を向いたままになると、候補者は「聴いてもらえていない」と感じ、話が浅くなります。適度なアイコンタクトとうなずきを意識しましょう。 -
沈黙を恐れない
質問した後、候補者が少し考える沈黙が生まれることがあります。この沈黙を急いで埋めようとしないことが重要です。深い質問ほど、答えに時間がかかるのは当然のことです。 -
答えを「要約して確認する」
「つまり〇〇という経験から△△を学んだ、ということですね」と要約して返すことで、候補者は「ちゃんと聴いてもらえた」と感じ、さらに話を深めてくれます。
まとめ:面接の質は「質問」と「傾聴」で決まる
候補者の本音を引き出せるかどうかは、面接官の質問設計と聴く力によって決まります。「過去の具体的な行動事実を聞く」「なぜではなくどのようにで深掘りする」「ネガティブな経験を安全に聞く」——この3つの原則を実践するだけで、面接から得られる情報の質は大きく変わります。
採用は、企業にとっても候補者にとっても重要な意思決定の場です。「見極める面接」から「互いを理解し合う面接」へ——面接官がその姿勢を持つことが、採用精度の向上と優秀な人材の入社意欲向上の両方につながります。
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田中 和義
株式会社エス・シー・ラボ 代表。人材ビジネス業界35年以上、管理職経験25年以上。年間170回以上の企業研修・講演を行う実践派講師。面接官トレーニング・傾聴力・コーチング・ハラスメント防止を中心に、現場で使えるスキルの習得を支援している。