「アクティブリスニング(積極的傾聴)」という言葉を知ってはいても、職場で具体的にどう実践すればいいのかわからないという方は多いのではないでしょうか。この記事では、アクティブリスニングの意味から、職場のあらゆる場面で今日から使える実践ステップまでを、具体的な会話例とともに解説します。

この記事でわかること

  1. アクティブリスニングとは何か
  2. 普通の「聞く」との違い
  3. アクティブリスニングの7つの実践ステップ
  4. 職場シーン別の使い方(1on1・営業・面接・クレーム対応)
  5. よくある失敗パターンと対処法
  6. 今日から始める練習方法

アクティブリスニングとは何か

アクティブリスニング(Active Listening)とは、相手の言葉・感情・意図に能動的に関わりながら聴くコミュニケーション技法です。日本語では「積極的傾聴」とも呼ばれます。

1950年代にアメリカの心理学者カール・ロジャーズが提唱した概念で、もともとはカウンセリングの場で発展しました。現在ではビジネスのあらゆる場面——マネジメント、営業、採用、チームビルディング——において不可欠なコミュニケーションスキルとして広く活用されています。

ひとことで言うと

アクティブリスニングとは、「相手が話したい内容」だけでなく「相手が感じていること・伝えたいこと」まで受け取ろうとする聴き方です。受動的に聞くのではなく、全神経を相手に向けて能動的に関わることが核心にあります。


「ただ聞く」とアクティブリスニングの違い

多くの人は「話を聞いている」つもりでも、実際には相手の言葉を受け流しているだけのことがほとんどです。アクティブリスニングとの違いを整理します。

ただ聞く(パッシブリスニング) アクティブリスニング
姿勢 受動的・自然に耳に入る 能動的・意図を持って聴く
注意の向け先 言葉の内容(表面) 言葉+感情+意図(深層)
返し方 相槌のみ・自分の意見を返す 要約・共感・問いかけで返す
相手の感覚 「聞き流された」「わかってもらえない」 「ちゃんと聴いてもらえた」「わかってもらえた」
結果 表面的な情報しか得られない 本音・深層ニーズを引き出せる

アクティブリスニング 7つの実践ステップ

アクティブリスニングは「心がけ」ではなく、具体的な行動の組み合わせです。以下の7つのステップを順番に意識することで、誰でも実践できます。

1 環境を整える——「聴ける状態」をつくる

アクティブリスニングは、環境を整えることから始まります。相手が「話せる状態」をつくることが最初の一歩です。

実践チェックリスト

✔ スマートフォン・パソコンの画面から目を離す(または閉じる)
✔ 体を相手の方向に向ける
✔ 周囲の雑音が少ない場所を選ぶ
✔ 時間に余裕を持って対話を始める
✔ 「今から話を聴く」という意識をスイッチオンにする

ポイント:話す前から「聴く姿勢」が伝わっている

2 非言語で「聴いている」を伝える

アクティブリスニングの効果の大部分は、言葉以外のサイン——表情・視線・姿勢・うなずき——によって作られます。「聴いていることを体で示す」ことが相手の安心感につながります。

具体的な非言語サイン

✔ 適度なアイコンタクト(見つめすぎず、逸らしすぎず)
✔ 話の内容に合わせてうなずく(速さ・深さを変える)
✔ 話の深刻さに合わせて表情を変える
✔ 前傾姿勢で「関心を持って聴いている」ことを示す
✔ 腕を組まない(オープンな姿勢)

ポイント:非言語が一致していないと「言葉だけ」になる

3 最後まで遮らずに聴く——「沈黙」を恐れない

アクティブリスニングで最も重要でありながら、最も難しいのが「最後まで聴く」ことです。相手が話し終わる前に口を挟むと、相手は「また聴いてもらえなかった」と感じます。

やりがちなNG行動

✗「要するに〇〇ってこと?」(まとめて遮る)
✗「それって△△の原因じゃない?」(分析して遮る)
✗「自分も昔同じことがあって…」(自分の話にすり替える)
✗ 沈黙に耐えられず「大丈夫?」と急かす

実践のポイント

沈黙が5〜15秒続いても焦らない。沈黙は「考えている時間」であり、そこから本音が出てくることが多い。うなずきながら待つだけでOK。

ポイント:「30秒ルール」——話し始めたら最低30秒は口を挟まない

4 オウム返し——キーワードを繰り返す

相手の言葉の中で核心となるキーワードをそのまま繰り返す技術です。「ちゃんと聴いてもらえている」という安心感が生まれ、相手は自然に話を続けます。

会話例

部下:「最近、仕事が思うように進まなくて…」
上司:「思うように進まない、か。どんなことが引っかかってる?」

部下:「チームのまとまりがなくなってきた気がして…」
上司:「まとまりがなくなってきた、というのはどういう状況?」

ポイント:言葉を変えずにそのまま繰り返すのが基本

5 感情を受け止める——共感の言葉を返す

アクティブリスニングが「ただ聴くこと」と最も違う点が、感情への反応です。相手が感じていることを言葉で受け止めることで、「わかってもらえた」という深い安心感が生まれます。

共感の言葉の例

「それは大変でしたね」
「そう感じるのも当然だと思います」
「それは悔しかったんじゃないですか?」
「不安な気持ちになりますよね」
「その状況でそこまで頑張ってたんですね」

注意:共感と同意は違う

「そうですね、それは正しいです」は同意。「そう感じるのは自然なことだと思います」が共感。意見に同意しなくても、感情は受け止められます。

ポイント:感情を受け止めてからアドバイスに移る

6 オープンクエスチョンで深掘りする

相手の話を引き出すには、答えが「はい/いいえ」で終わらないオープンクエスチョン(開かれた質問)を使います。

クローズドクエスチョン(NG) オープンクエスチョン(推奨)
「うまくいきましたか?」 「どんな感じで進みましたか?」
「問題はありましたか?」 「どんなところに難しさを感じましたか?」
「もうやる気ないの?」 「最近どんなことが気になっていますか?」
「なぜそうしたの?」 「どんなことを考えてそうしたの?」

ポイント:「なぜ」より「どんな」「どう」で問いかける

7 ペーシング——要約して確認する

相手が一通り話し終わったら、「つまり〇〇ということですね」と自分の言葉で要約して確認します。これにより相手は「ちゃんと理解してもらえた」と感じ、さらに話が深まります。また、理解のズレがあればこの段階で修正できます。

ペーシングの言い回し例

「つまり、〇〇という状況で、△△と感じているということですね」
「整理すると、〇〇が課題で、今は△△な気持ちでいる、ということでしょうか」
「〇〇と△△、この2つが今一番重なっているということですね」

ポイント:要約は「内容+感情」をセットで返す


職場シーン別:アクティブリスニングの使い方

7つのステップを踏まえたうえで、職場の具体的なシーンでどう使うかを整理します。

1on1・面談

1on1はアクティブリスニングの実践に最も適した場です。上司が話す割合を30%以下に抑え、部下が話す時間を最大化することを意識します。

1on1でのアクティブリスニングの流れ

①「最近どう?」でまず状態を聴く(業務の話より先に)
②話し終わるまで遮らずに聴く(ステップ3)
③「それはしんどかったね」と感情を受け止める(ステップ5)
④「どんなことが一番引っかかってる?」と深掘りする(ステップ6)
⑤「つまり〇〇で困っているということだね」と要約確認(ステップ7)
⑥アドバイスや提案はその後に行う

営業ヒアリング

顧客が「本当に困っていること」を話してくれるかどうかは、営業担当者の聴き方次第です。アクティブリスニングで顧客の潜在ニーズを引き出すことが、的確な提案につながります。

営業でのアクティブリスニングのポイント

・商品説明より先にヒアリングを行う
・「現在どんな課題を感じていますか?」のオープンクエスチョンから入る
・顧客の言葉をオウム返しして「話しやすい空気」をつくる
・「それはどういう状況でしたか?」と具体化を促す
・「つまり〇〇がお困りなんですね」と要約してから提案に移る

採用面接

面接でアクティブリスニングを使うことで、候補者が本音を話しやすくなり、表面的なアピールではなく本当の価値観や志向を把握できます。

面接でのアクティブリスニングのポイント

・候補者の言葉を遮らずに最後まで聴く
・「〇〇とおっしゃっていましたが、もう少し聞かせていただけますか?」と深掘りする
・「それはどんな気持ちでしたか?」と感情を確認する
・うなずきと前傾姿勢で「話してよかった」という雰囲気をつくる
・候補者が話しやすい空気が、入社意欲の向上にもつながる

クレーム・トラブル対応

クレーム対応においてアクティブリスニングは特に効果を発揮します。感情が高ぶっている相手には、まず事実・解決策より先に「気持ちを受け止める」ことが最優先です。

クレーム対応でのアクティブリスニングの流れ

①まず最後まで話を遮らずに聴く(どんなに長くても)
②「ご不便をおかけして、大変申し訳ございませんでした」と感情を受け止める
③「おっしゃる通りです」とオウム返しで共感を示す
④感情が落ち着いてから「確認させてください」と事実確認に移る
⑤解決策の提示は必ず感情受け止めの後に行う


アクティブリスニングのよくある失敗パターン

アクティブリスニングを実践しようとしても、次の失敗パターンに陥ってしまうことがよくあります。

  1. 「技術を使おう」と意識しすぎて不自然になる
    オウム返しや共感の言葉を「使わなければ」と意識しすぎると、会話がぎこちなくなります。まず「最後まで遮らずに聴く」だけに集中するところから始めましょう。
  2. 感情を受け止める前にアドバイスしてしまう
    「それはこうすればいい」とすぐ解決策を出すのは、管理職に最も多いパターンです。感情を受け止めてから提案に移る順番を意識するだけで、部下の反応は大きく変わります。
  3. 「共感のふり」をしてしまう
    「そうですね〜」と口では言いながら、別のことを考えている状態。相手は非言語から「聴いていない」と感じ取ります。技術より先に「全神経を相手に向ける」姿勢が大前提です。
  4. 沈黙が怖くて急かしてしまう
    沈黙に耐えられず「どうしたの?」「大丈夫?」と急かすと、相手の思考が止まります。沈黙は「考えている時間」と捉え、うなずきながら待つ練習を積みましょう。

今日から始めるアクティブリスニングの練習方法

アクティブリスニングは、日常のあらゆる会話で練習できます。難しく考えず、以下の3ステップから始めてください。

STEP 1
遮らない
まず「30秒ルール」だけを意識する
今日の会話から「相手が話し始めたら最低30秒は口を挟まない」だけを実践する。他の技術は後回しでOK。
STEP 2
繰り返す
相手のキーワードを一つ繰り返す練習をする
「しんどい、か」「まとまりがない、か」と、相手の言葉を一つそのまま繰り返す。これだけで相手の反応が変わりはじめる。
STEP 3
要約する
会話の後に「つまり〇〇ということ」と要約する
会話が終わった後に「今日の話の核心は何だったか」を自分の言葉で要約してみる。要約できない=まだ聴けていない証拠。

まとめ:アクティブリスニングは「技術」として習得できる

アクティブリスニングは、才能や性格ではなく、具体的な行動の積み重ねによって誰でも身につけられるスキルです。7つのステップを一度に完璧に実践しようとする必要はありません。

まずは今日から、「最後まで遮らずに聴く」ことだけを意識してみてください。それだけで、相手の反応は必ず変わります。そこからオウム返し、共感、要約と少しずつ積み重ねていくことで、職場での信頼・成果・人間関係のすべてが好転していきます。

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田中 和義

株式会社エス・シー・ラボ 代表。人材ビジネス業界35年以上、管理職経験25年以上。年間170回以上の企業研修・講演を行う実践派講師。傾聴力・コーチング・面接官トレーニング・ハラスメント防止を中心に、現場で使えるスキルの習得を支援している。