私が人事担当者の方々によくお伝えしているのが、「採用×教育」で考えるという視点です。採用環境の厳しさに合わせて採用基準を下げるのであれば、採用後の教育に、もっとパワーと時間とコストをかける必要があります。そうしないのであれば、採用基準を下げてはいけません。この記事では、この「採用×教育」という考え方を軸に、採用後の定着と早期活躍を支援する仕組みづくりについて解説します。
この記事でわかること
- 「採用×教育」で考えるとは、どういうことか
- 採用基準を下げて、教育に投資しないとどうなるか
- 教育力が高い企業と、そうでない企業の分かれ道
- 早期活躍を支援する、具体的な仕組みづくり
- 定着を左右する、入社後3ヶ月の関わり方
- 人事担当者が今すぐ点検すべきチェックポイント
「採用×教育」で考えるとは、どういうことか
私が人事担当者の方々によくお伝えしているのが、この考え方です。
採用基準を下げるならば、
採用後の教育にもっとパワーと
時間とコストをかける必要がある。
そうしないのならば、
採用基準を下げてはいけない。
今の採用市場は、超売り手市場です。採用基準を維持したまま、思うような人材を採用できないという企業は少なくありません。だからといって、安易に採用基準を下げることは、それ単体では危険な選択です。採用と教育は、常にセットで考える必要があります。
採用基準を下げて、教育に投資しないとどうなるか
採用基準だけを下げて、教育体制を変えないまま採用を続けると、次のような問題が連鎖的に起こります。
採用基準の見直しは、単独の施策として行うべきではありません。教育体制とセットで検討しなければ、採用コストをかけた分だけ、離職という形で失うことになります。
教育力が高い企業と、そうでない企業の分かれ道
ここが重要なポイントです。教育力が高い企業は、採用基準を下げても、人材育成によってその差を埋めることができます。一方、教育の仕組みが整っていない企業は、採用基準を下げた分だけ、そのまま組織の混乱・定着率の低下として現れます。
つまり、「採用基準をどう設定するか」の前に、「自社の教育力はどのレベルにあるか」を正確に把握しておくことが、人事担当者にとって欠かせない視点です。
早期活躍を支援する、具体的な仕組みづくり
①育成のロードマップを可視化する
「入社1ヶ月でここまで、3ヶ月でここまで」という成長のマイルストーンを明文化します。本人にとっても、育成担当者にとっても、進捗の目安が明確になります。
②OJTを「現場任せ」にせず、型を用意する
教育担当者個人のスキルに依存させず、誰が担当しても一定の質を保てる、標準化されたOJTの手順書・チェックリストを整備します。
③定期的な1on1で、つまずきを早期に把握する
問題が大きくなってから気づくのではなく、入社直後から定期的な1on1を設定し、小さなつまずきの段階でフォローできる体制を作ります。
④成功体験を早期に作る
難易度の高い業務ばかりを任せるのではなく、本人が「できた」と実感できる小さな成功体験を、意図的に設計することで、早期のモチベーション向上につなげます。
定着を左右する、入社後3ヶ月の関わり方
定着率の多くは、入社後3ヶ月の間に方向性が決まると言われています。この期間の関わり方が、その後の長期的な定着に大きく影響します。
入社後3ヶ月で意識したいこと
入社1週間:業務の基本を丁寧に伝え、質問しやすい関係を作る
入社1ヶ月:小さな成功体験を積ませ、成長を言葉にして伝える
入社2ヶ月:任せる業務の幅を少しずつ広げ、本人の意見も取り入れる
入社3ヶ月:ここまでの振り返りを一緒に行い、今後の育成計画をすり合わせる
人事担当者が今すぐ点検すべきチェックポイント
□ 採用基準を見直した際、教育体制も同時に見直したか
□ 育成のロードマップは、明文化されているか
□ OJTは特定の担当者任せになっていないか
□ 入社後3ヶ月間の1on1は、仕組みとして定着しているか
□ 現場の管理職は、育成に十分な時間を確保できているか
□ 離職者が出た際、その原因を教育体制の観点からも振り返っているか
これらの項目に「できていない」が多いほど、採用基準を下げる前に、まず教育体制の見直しが必要だというサインです。
まとめ:採用と教育は、常にセットで考える
採用環境が厳しさを増す中で、採用基準の見直しを検討する企業は今後も増えていくでしょう。しかし、採用基準を下げるのであれば、教育にもっとパワーと時間とコストをかける必要があります。そうしないのであれば、採用基準を下げてはいけません。
教育力が高い企業は、採用基準を下げても人材育成でカバーできます。そうでない企業は、マネジメントの混乱と人材定着の悪化という形で、そのしわ寄せを受けることになります。「採用×教育」という視点を持ち、両輪で仕組みを整えること——これが、採用後の定着と早期活躍を実現する確実な道です。
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田中 和義
株式会社エス・シー・ラボ 代表。人材ビジネス業界35年以上、管理職経験25年以上。年間170回以上の企業研修・講演を行う実践派講師。面接官トレーニング・管理能力養成・コミュニケーションを中心に、現場で使えるスキルの習得を支援している。著書『採用を成功に導く面接官超入門 失敗しない見極め&動機づけの実践スキル』好評発売中。Amazonで購入する 楽天ブックスで購入する